第3話 「愛し愛され」(奈由編)

「おはよう。糸」

「おはよう。」

「あ、今日8月8日か。準備しなきゃ。」

「どうしたの?奈由?」

「今日は陽夜の誕生日だから。」

「そうなんだ。おめでとう。」

そう。今日は陽夜の26歳の誕生日。

「とりあえず起きて。朝ご飯食べたら帰ってね。」

「えー、糸もうちょっと一緒に居たかった」

「はいはい。わがまま言わないの。」

糸はご飯を食べた。

「ご馳走様でした。ありがとう奈由。奈由は食べないの?」

「うん。じゃあ出る準備してね。」

「わかった」

糸は着替えや歯磨きをして出る準備をした。

「じゃあまたね。奈由。行ってきますのキスさせて」

「いいよ。」

糸は私の口に唇を重ね10秒間のキスを交わした。

「行ってきます。」

「行ってらっしゃい。…ん?糸の靴…男物なの?」

「うん。このサイズがちょうど良くて。デザインも糸の好みだし。」

「おー!いいじゃん!かっこいいっ!似合ってる!じゃあ行ってらっしゃい!」

糸が出たあと糸の香水の匂いを消すためにまた、消臭剤をベッドや床にかけ、掃除もした。

「これで大丈夫でしょ。あとはケーキ取りに行って、料理か。」

私は服に着替えたあとケーキ屋さんに行って、ケーキを買った。

そして、スーパーで買い物をして帰った。

「陽夜が帰ってくるのが3時間後くらいだから、いけるか。」

私は5分間だけ休んだ後キッチンに向かい急いで料理を作り始めた。

1時間半後。

「ふう。こんな感じかな。ちょっと作りすぎちゃた...」

「「早く帰ってきてー!」と。」

料理を終えたと同時に陽夜にメールを送った。

愛していなくても誕生日くらいは祝ってあげたい。この気持ちは愛ではなく友情的なものなのか。

ピロンッ♪

陽夜からメールが届いた

「今終わった。思ったより早く終わったから帰るよ。あと30分くらいかな。待っててね!」

と陽夜から来た。

「「待ってるよ!」と。料理が冷めないうちに帰ってくるかな...」

私は陽夜に返信した。

40分後

「ただいまー」

陽夜が帰ってきた。

「おかえり」

陽夜の匂いは私達が使っている柔軟剤とは違く、お花の匂いだった。そのお花の匂いがキツくて、消臭剤をかけた匂いのない部屋をお花の匂いで埋め尽くしていった。


愛していないはずの陽夜。

陽夜の匂いが私達の匂いではない事に苛立っていた。私は同じ事をしてしまっているんだと自分に腹が立った。

突っ立っていた私を見て陽夜はこう言った。

「どうした?大丈夫?」

陽夜のせいだよ。そう思いながら

「うん。大丈夫。ご飯こんなに作ったから

早く食べよ!」と偽りの笑顔を作りながら言った。

「美味しい!俺のために作ってくれてありがとう!」

ご飯を食べたあと、私達は20秒間のキスをした。陽夜の唇は冷たくて、陽夜とのキスに愛を感じなかった。


愛したい。けど愛せない。

何よりも苦しい。この偽り。

私はこの結婚生活からすぐに逃げ出したかった。

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