6.連動する心と身体

「……君は、どれだけ私を喜ばせる気だ。これではもっと欲しくなってしまう」

 お返しと言わんばかりに、チェルシーの胸の膨らみ始めた部分にチクリと吸い付かれ、湿った温かいものでそこを宥められた。それを左右繰り返しながら唇はどんどん下がっていく。


「ひゃんっ!」

 シーツを捲られると、現れた膨らみの先端を吸われて、思わずフレッドの頭にしがみついた。先ほどまで散々愛されていた場所だ。口内に含まれたまま舌に転がされると、すぐに快感を思い出し、先端は容易く立ち上がった。


「チェルシーは自身で育てたいか?」

「え?な、んの……ああっ」

 突然質問をされるも、息が上がって上手く答えられない。しかしその間にも攻めは止まずに、嬌声が漏れてしまう。

「それとも……乳母を雇う?」

 その言葉でフレッドの質問に対して、漸く合点がいった。

「赤ちゃんのこと、ですか?」

「そうだ、二人の子供だ」

 正解だったらしく、頂への刺激が止んだ。

 うーん、と考えているチェルシーは、柔らかさを楽しむように全体を揉まれながら、間近で濡れた先端をうっとりと眺められていることは知らない。


「……そう、ですね。できるならば私がお乳をあげたいですわ。こんなふうにフレッド様に似た子は可愛いでしょうね」

 彼の手の動きがピタリと止まったことで、思わず頭を撫でてしまっていたと気付いて両手を離した。

「あっ!申し訳ありません!私ったら……」

「いや、構わないというか、寧ろもっとしてもいい」

 宙を彷徨っていたチェルシーの手を取り、フレッドは自身の髪へと導く。チェルシーよりも少し硬くて、真っ直ぐなその髪の質感をいつの間にか覚えてしまっていた。

「だが、チェルシーにこうして抱かれて母乳を貰えるなんてずるいな……」

「え?え?……ひあっ!」

 そもそも存在すらしていないのに。

 さらには何だか衝撃的な発言を聞いた気がするが、突然先端を指で摘ままれてそれどころじゃなくなってしまった。先ほど熱くて硬い杭を打ち付けられていた場所が、再び物欲しくなり太腿をもぞもぞと擦り合わせる。


「その時は仕方ない。期間限定で譲るとしよう」

 さらに息が上がっていく。チェルシーの足の動きに気付いたのか、フレッドの手が肌の質感を楽しむよう、撫でながら下へと移動した。ささやかな茂みをそっと掻き分けて、すぐ奥にある期待に膨らむ粒で指先が止まる。先ほどの名残の滑りが指の動きを妨げなかった。

 爪先で優しく引っ掻かれると、チェルシーはもう何も考えられなくなる。すると周囲を戯れながら指は蜜壺へと抵抗なく潜り込んだ。中を探る動きにチェルシーの腰が動いてしまう。

 痺れるような快感に指先に少しだけ力が籠り、フレッドの髪の毛を優しくかき混ぜた。

「あっ、やぁ!」

 胸と同時に刺激されて、一際大きく嬌声をあげた。そんな自分を恥じたチェルシーだったが、フレッドの長い指の探るような動きに抑え切れなかった。


「はぁ、なんて可愛いんだ……」

 いつの間にかシーツを掴んでいたチェルシーは、うっとりとした声に瞼を上げた。どうやら瞳を閉じてしまっていたらしい。間近でチェルシーを見つめるその表情は珍しく、声に相応しい蕩けるようだ。


 愛しているとは言ってくれたし、フレッドが実はとても優しいことが分かったけれど、その度合いはよく分からない。なんせ恋とは何かを知らぬまま、ランサム家に嫁いできたのだ。己の想いの最大値も知らないのに、表情が豊かとはお世辞にも言えない相手の想いを知るのはなかなか難しいものであった。

 もしかしたら、チェルシー自身が思っているよりも愛されているのかもしれないし、その逆なのかもしれない。


(……どうしよう、すごく嬉しい)


 それでも夕食をおざなりに縺れ込むようベッドで絡み合ったことや、終わったはずなのに、またしても官能が高められているなんて。関係の変化には未だに戸惑うばかりだが、ただ求められているという事実に胸が熱くなる。


 優しくかき混ぜられている隘路からは、どちらのものか分からない液体が押し出されてる度に、こぷこぷと音を立てているが恥ずかしいけれど、それだけではなかった。押し寄せる快感の小さな波が、嬉しいと実感してから加速度的に寄せては返しながら大きくなっているのを感じていた。徐々に足全体に力が入り、シーツの上を泳ぐように掻く。


「あああっ!」

 その瞬間、指とは比べ物にならない質量のものが、ゆっくりと気遣うように侵入してきた。もっと激しく突き上げて欲しいと思ってしまって、チェルシーは唇を噛んだ。潔癖そうなフレッドに対し、そんなの口に出せる訳もない。せっかく心を開いてくれるようになったのに幻滅されてしまっては、やるせなくなるだろう。それに自身の身体の変化に恐れを抱いてしまったのも大きい。


 最奥をトントンと、優しくノックされるように突かれて、背中に快感が走った。大きな何かが襲ってきそうな、身体で蓄積されたものが爆発してしまいそうなそんな感覚。目を瞑ると生理的な涙がほろりとチェルシーの目尻から零れ落ちた。


「……!チェルシー!?大丈夫か?どこか痛むのか?」

 慌てて引き抜こうとするフレッドを離さないといわんばかりに、彼の腰に足で絡みついた。

「……め」

「チェルシー?」

「ダメです!抜いちゃダメです!」

「え?」

「フレッド様ぁ、気持ちいいんです!もっとして。もっと思いっきりいっぱいして下さい」


「……っ!」

 破壊力抜群の台詞もさることながら、乱れた髪と上気した頬、それに涙に濡れた目元。艶やかな唇と真っ白な胸元に散らばる赤い華。上体を起こしたフレッドは、その姿を目の当たりにして息を飲んだ。

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