7.情熱の方向性
女神を地上に堕としてしまったかのような罪悪感と、そんなふうにしたのが自分だという愉悦。
しかしフレッドはどこまでもフレッドで。チェルシーのために、これまでの人生を捧げてきた男の想いは生半可なものではない。食らい尽くしたくなるような雄としての本能よりも、彼女を大切に思う気持ちのほうが大事だ。
少し前に書斎のソファーで組敷いてしまったときは、初めてチェルシーに歩み寄られたことがあまりにも嬉しすぎて、理性が崩壊してしまった。あの時のことはもっと優しくすべきだったと猛省したものの、そのおかげで行為に対して多少は余裕を持てるようになった。
それでもチェルシーの魅力は相当なもので、うっかりするとタガが外れそうになるので、まだまだ未熟だと実感しているが。
(やはり訓練や当主の務め同様、日々の積み重ねが大事なのだな)
それもこれも、ここ最近は頻繁にチェルシーと肌を合わせているおかげで知ることができたこと。
何事も毎日の小さな努力が実を結ぶ。元々フレッドはコツコツと地道な努力を重ねるのは得意で、騎士団時代もそれで総監まで昇りつめたのだと思っている。その件に関しては、彼が元々が優秀であったところへ努力を厭わなかったからだけれど。
「こんなに悦んでくれて……」
今までは初夜の時はもちろん、それから何度も痛がっていたのがフレッドをさらに消極的にさせていた。なんせ本と同僚の体験談で得ただけの知識だ。一切の性技に自信はなく、唯一誇れるものは愛情くらいで。それなのに今、気持ちよさそうに震えるチェルシーはとても演技しているようには見えない。
観察したところ、挿入前にじっくりと全身を余すところなく愛し、蕩けさせることが大切なのだと導き出した。
チェルシーもまたフレッドしか絶対知らないはずだから、どこの誰かと比べられているわけでもないだろう。ブラウン男爵家に送った使用人たちからは、そんな報告は受けていない。万が一そうだとしたら相手を抹殺して、チェルシーの記憶を消す方法を探さねばならないので、あとでもう一度、件の使用人らに確認しておこう。
それはさて置き、フレッドははっきりとチェルシーに求められている。離れないでと足がフレッドの腰に巻き付いている事実に、喜びが沸き起こる。
「お望みならば、どれだけでもしよう」
愛おしい妻の頼みを聞かない理由はない。決意を込めて、力強く返事をした。フレッドがチェルシーに望むことは数多くあれど(口に出せないのがほとんどだが)、彼女から望まれることがあるなんて。
嬉しくて、愛しくて、応えたい。
手の平で簡単に掴めてしまう華奢な膝裏を押し開く。上体を起こしていると結合部がよく見えた。チェルシーの大切な愛らしいところが、己の欲望の塊を美味しそうに咥え込んで、どちらのものか分からない涎を垂らしている。二人の体液が混じり合って一つになっている事実が堪らない。
チェルシーも望んでいるものの、それはフレッドにとってもご褒美でしかないとは。
恍惚とその光景を眺めていたフレッドは、触って欲しそうに顔を出している秘裂の先端に気付き、先ほどまでの反応を思い出して親指でそっと撫でた。つるりとした実は滑りを帯びて、優しく撫でるも指から逃げてしまう。
「やっ!それ!だめぇっ!……ああっ!うそ、やめないでぇ」
突然上がった声に驚き、思わず動きを一瞬止めてしまった。だが続く言葉に慌てて再び指を動かす。
「す、すまない。分からなくて……。これが好きなのか?」
コクコクと頷くのが精一杯なのか、チェルシーは子猫のような鳴き声を上げてるだけだ。
くどいようだがフレッドは優秀な男である。興味のないことでも必要であればしっかりと学ぶ。しかしチェルシーのことに至っては興味しかないわけで。
多くは母や使用人から知らされて、チェルシーの好みや行動を知っていたのだが、これは数少ない彼女本人からの希望である。叶えないわけにはいかないし、確実にインプットした。
「なるほど、チェルシーは挿入されながら、ここを弄られるのが好きか」
言葉に出されて、顔から火が出るほど恥ずかしいが、それを指摘する余裕がチェルシーにはなかった。口を開くと嬌声しか出てこない。
ふむ、とフレッドはチェルシーを観察する。指先で撫でる度に搾り取るような快感が与えられ、すぐにでも放ってしまいそうだったが、意識が違う方向へと向かい猶予ができた。
指だけではなく舌で味わったときも大層気持ちよさそうにしていたから、話で聞いていた以上にこの突起はチェルシーに快感をもたらしてくれる重要な場所なのだろう。
それでなくともフレッド自身もとても気に入っている。まさにチェルシーの好物の一つである果実の弾力を彷彿とさせる。しかしそんなものよりもチェルシーの果実のほうが美味しくて夢中になってしまうし、それによる反応のなんと愛らしいことか。
甘い嬌声をもっと聞きたくて夢中になって弄っていると、息をつめたチェルシーによってぎゅうっと一際強く絞られた。
「……あああっん!」
一際大きな甘い声を上げたチェルシーは、身体をガクガクと激しく震わせた。余裕があったはずなのに、持っていかれそうな強烈な快感が脳天を突き抜け、我慢できずにフレッドも腰を突き出して最奥に白濁を放つ。
繋がったところのすぐ上から小さくプシュッと吹きあがった温かい飛沫が、快感に浸っているフレッドの指と下腹に掛かると、そのあまりにも淫靡な光景に再び彼女の中で硬度が俄かに回復してしまった。
しかし、ぐったりとシーツに沈んでいる愛おしい妻の姿が視界に入り、名残惜しさが吹っ飛んだフレッドは慌てて自身を引き抜いた。
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