第51話 またまたお茶会です その2
「皆さんのお気持ちも分かりますけれど。まずは本日のメインの、エマ様のお話を先に伺いませんか?」
セレナ様がたおやかに仕切ってくれる。
「そうでしたわ、先日セレナ様に少し伺って、とても気になっておりましたの」
リーゼ様の言葉に、他の方々も頷く。
「エマ、お話って、例の事業の?」
レイチェルが聞いてくる。レイチェルとカリンには授業のグループ活動の都度に話していたのだ。
「ええ。皆様改めて、よろしくお願いいたします。勝手ながら、私の展望をお話させて下さい」
皆の視線が私に集まる。この、企画のプレゼンのような緊張感が好きだったりする。
「セレナ様からもお聞き及びでしょうが……」
◇◇◇
「と、いうことで、皆様にも参加していただけるとありがたく思っております。いかがでしょうか?」
全て話し終わり、私はぐるっと全員を見渡す。それぞれ悩んでくれていそうだが、表情を見ると前向きなのが分かる。もう一押しかな。
「私は先日に話を伺って、是非ご一緒にと思っております。父にも話を致しまして、賛成と協力の約束ももらいましたわ」
「あ、ありがとうございます!セレナ様!」
「お礼を言うのはこちらの方よ。本当に、未来が開けたと思うもの」
決意を込めた笑顔で言ってくれる。
「エマ。それで、私達は何を?正直、こちらの皆様方と私達では、魔力に差がありすぎるわ」
レイチェルの言葉に、カリンも頷く。
「二人の魔力の質も、私は好きだけどね」
私が言うと、二人ともはにかんでくれる。
「二人のご実家は手広くご商売をされていて、二人とも外国にも詳しいでしょう?外国語も堪能だし。お米の稲とか他の珍しい穀物を探しての仕入れとか、販路を拓くのに協力して欲しいの」
「なるほど、面白そうね」
「ええ」
二人が商売人の顔になる。頼りになるわあ。
「ごめんなさい、横から口を挟むけれど、その、魔力の質というものをお聞きしてもよろしくて?セレナ様からも私達をたいそう誉めていただいたと伺っておりますが」
リーゼ様が、少しもじもじしながら聞いてくれる。
「そうですね……魔力の性格と言うのが一番しっくりする感じがします」
「性格」
ソフィア様がぼそっと言う。
「ええ。本日こちらにいらっしゃる皆様の魔力は、とても真っ直ぐで綺麗なんです!先日セレナ様にもお話しましたけれど、なかなかいらっしゃらないのですよ?
この学園に来て、しかもクラスメートに沢山いらして、もう感動しましたもの」
「まあ……それほどに?…少し恐縮ですわ」
「シャロン様の火魔法、とても柔らかい火ですよね。周りを暖めてくれるような。例えで出して申し訳ないのですが、シャロン様はきっと昨日のリック様のような事になっても、ああならないと思います。そもそも、錯乱されることもないとも思いますが……水魔法もお優しいですし」
「あ、ありがとうございます。やっぱり恐縮してしまいますわ」
恥ずかしそうに赤面するシャロン様。誤魔化すようにお茶を飲む姿が愛らしい。
「対してソフィア様の火魔法は、とても情熱的!でも激しいと言うのではなく、何と言うのでしょう…周りに活力を与えるような。風魔法は、踊るような軽やかさ!楽しくなります」
「まあ……ありがとうございます」
「リーゼ様の水魔法には美しい生命力を感じます。きっと、光魔法にも通じておられるからかと。とても優しい光魔法も大好きです」
「本当に畏れ多いですわ、エマ様に光魔法をそんな風に言っていただけて」
「先日も申し上げましたけれど、セレナ様の水魔法は清廉!清流が如くですよ……!土魔法には、意思の強さも感じます」
「……何度言われても恥ずかしくなってしまうわ。でも、ありがとうございます」
皆お互いを誉めながら、そわそわ、うきうきした雰囲気でお菓子を摘まんだり、お茶を飲んだりしている。もう、可愛いが大渋滞だ。……ほんとにホントに。
「皆さん本当に可愛らしい…!こんな素敵な……!あんなことがなければ……もっと早く皆様にお声がけをしたかったのに……!」
ぼそっと出てしまった本音は、思いの外部屋に響いた。
「あ」
そしてまたやってしまった。学習能力というものを、私はどこかに置いてきてしまったらしい。
「ふ、ふふっ、セレナ様が仰る通り、そこも本当に本音なのですね!」
「そうなんです、リーゼ様。私達にには魔力の質は見えませんが、エマの魔力はきっと呆れるくらい真っ直ぐですわ」
え、それフォローなの?レイチェル……。
「何だか分かる気が致します」
「もう少し腹芸が得意でないと、商売としては心配ですわよね、シャロン様」
確かに!と、盛り上がる皆様。うう…痛いところを……。
「ふ、二人ともありがとう?二人の切れ味鋭い風魔法もカッコいいと思っています……」
「あら、嬉しい」
「ありがとう、エマ」
いたずらっぽく笑う二人。そして皆にひとしきりほんわかとした空気が流れた後、リーゼ様が表情を引き締める。
「…そうね、でもそこも避けてはいけないわね。エマ様、改めて私達の婚約者がご迷惑をおかけしました」
リーゼ様はそう言って、私に頭を下げる。ソフィア様とシャロン様もそれに続いて頭を下げた。
「や、止めてください皆様!私こそ、本当にもう少し上手く、」
「充分、頑張っていただいたと思いますわ」
ごめんなさいと、リーゼ様が私の言葉を制して言う。
「セレナ様からもお聞きになったでしょう?もう、ずっとあの様子で困っておりましたの。レイチェル様とカリン様は昔からずっと見ていらしたでしょうから、何となくお分かりでしょうけれど」
二人は無言で苦笑する。……沈黙は肯定よね。
「結局私達、エマ様に甘えてしまったのよ。……今までの方と違って、エマ様ならいいかしらって。エマ様が困惑されているのも分かってはいたのだけれど。……情けないことに、あの、レイチェル様とカリン様が動かれて、ローズマリー様がいらした時。あの時にようやく、エマ様がどれだけ嫌な思いをしていたかに気付いたの」
「リーゼ様……」
「私も」
「私もです」
ごめんなさいと頭を下げられる。
「ソフィア様、シャロン様……」
「それに、悔しいのは私達も一緒ですわ!」
「え、ソフィア様?」
ちょ、ちょっと鼻息荒い感じですけれど…。
「全くです!」
シャロン様まで。
「え、えっと?」
「ふふ、二人とも、エマ様が驚いているわよ。気持ちは解りますけれど」
リーゼ様が窘めて、続ける。
「お茶会を始めてすぐに申し上げましたけれど、私達は本当にエマ様たちとお話したかったのですよ。授業でご一緒しても皆様聡明で、楽しくて。どの方にも同じに接していらして。ご意志が強くて。憧れのように思っておりましたの。それが、彼らのお陰で機会を失い……!」
うんうん、と頷く、ソフィア様とシャロン様。
セレナ様も頷きながら苦笑している。
「やだ、どうしましょう。エマではないけれど、皆さんをお嫁さんにしたいわ」と、レイチェル。
「私もですわ。エマの感じた彼らへの腹立たしさが、ものすごく理解できます」と、カリン。
「でしょ?」と、どや顔の私。
「「でも聖女様、落ち着かないとね?」」
「……はい」
学習能力を探して参ります……。
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