第50話 またまたお茶会です その1

昨夜はあの後、早めに解散した。ローズに「また寝不足はダメよ?」と、言われて。


別れ際のラインハルト様のせいで、また頭の中がわちゃわちゃしないか心配だったけど、ローズと話せたお陰で落ち着けて、きちんと寝ることもできた。



そして、朝。



「うーん、やっぱりちゃんと寝ればスッキリ!」


私はベッドで上半身を起こして、伸びをする。


「さて、と。顔洗って、着替えて、朝食朝食!そういえば、リーゼ様たちとのお茶会はいつかな~。セレナ様に予定は伝えたけど~」


ベッドを降りて、鼻歌混じりに支度を始める。自分で気持ちを認めて、ローズに聞いてもらったら、思った以上に気持ちが落ち着いた感じ。


挙動不審になるのは減る……と思いたい。




「おはよう、エマ嬢」


「おはようございます、ラインハルト殿下」


支度を終えてエントランスに行くと、既にラインハルト様はいてくれた。あ、でもそういえば。


「あの、そういえば昨日もですけれど……結構お待たせしてますか?この時間…」


「ん?いや、大丈夫だよ。エマ嬢のスケジュールは大体認識を……ゴホン、いや、大丈夫だ」


「……そうですか?」


後半、何だか不穏な感じだったような……。


「そ、それより、昨日はきちんと眠れた?」


「はい!バッチリです!」


私は自信満々に答える。


「そっか。良かった。……けど、ちょっと残念な気も……」


「え?残念?」


「いや、言ってないよ?」


若干胡散臭い笑顔で、殿下が言う。まあ、いっか。


「……何か…スタート地点に戻ってしまった雰囲気のような……?」


「はい?スターがどうしましたか?」


「何でもないよ?」


ちょっと殿下が変な気がするけど。


「今日は殿下がおかしくないですか?ちゃんと寝ました?」


「いや、大丈夫、大丈夫、うん」


「本当ですか?」


「本当だよ」


殿下は、その後はいつものように、私のクラスまでエスコートしてくれた。そして自分の教室に戻る。何となく首を傾げているけれど。考え事かしら。




「おはよう、レイチェル。カリン」 


「「おはよう、エマ」」


先に教室にいた、二人に声をかける。


「エマ、昨日はあの後大丈夫だったの?」


「ありがと、カリン。普通にお務めしてきたわ」


「そう。なら良かった」


「レイチェルも、ありがと」


「…あれ?そういえば、ローズ…様はまだかしら?」


私の隣が空席のままだ。いつも早いのに。


「確かに。珍しいわね」


「どうされたのかしら」


三人で話していると、ローズがやって来た。


「あら、皆さん、おはようございます」


「おはようございます。ローズ様がこの時間でいらっしゃるのは珍しいですね?」


「そうね、少し所用があったものだから。もう済んだし、大丈夫よ」


「そうでしたか」


生徒会絡みのこととかかな。ローズも忙しいもんね。



「おはようございます、皆様」


「セレナ様!おはようございます」


「「「おはようございます」」」


セレナ様は笑顔で私達に会釈を返す。


「エマ様、その。急で申し訳ないのだけれど、お茶会の件、本日でもよろしいかしら?皆さん待ちきれないらしくて」


「わ、嬉しいです!私は問題ございません」


「良かったわ!では、そのように」


セレナ様がほっとした笑顔で言う。やはり美しい。ほんとに彼奴らおかしいと思う。


「あの、セレナ様」


「はい?」


「二人の都合も良ければなのですが、レイチェルとカリンもご一緒させてもらってもよろしいでしょうか?」


「ええ、私達は勿論大歓迎ですわ!」


セレナ様が答える。


「勝手にごめんね。二人はどうかしら?」


「都合は大丈夫よ。でも、よろしいの?」


レイチェル。


「私も」


カリン。


「良かった。では、是非お願いしたいの」


私はもう一度言う。


「「では、ありがたく」」


「嬉しいわ、よろしくお願いしますわね。お部屋の手配は私が致しますので」


「セレナ様。お言葉に甘えます。よろしくお願いいたします」


「任せてちょうだい」


颯爽と去っていく。やはり素敵だ。



「いいなあ、女子会……私も参加したい…」


ローズが私にだけ聞こえるように言う。


「ごめんね。お披露目が終わったら、皆で集まろう?」


私もコソッと答える。


「絶対ね!」「もちろん!」


今日もかわいいは正義だ。



◇◇◇



そして放課後。


今回も食堂奥のサロンを、セレナ様が予約してくれた。


前回より人数が多いので、更に奥に進んだ所だ。10人くらいは入れて、温かみのある、落ち着いた部屋。



部屋の中心に、全員で囲めるテーブルセットが鎮座している。ザ・貴族のお茶会!という感じ。


今回は人数も多いので、そのままカナとベル(殿下を見習って覚えた)に給仕をお願いした。


色とりどりのスイーツと、いい香りのお茶が並べられている。私の両サイドにレイチェル、カリンが座り、向かいにシャロン様、リーゼ様、セレナ様、ソフィア様で座られている。



「僭越ながら、私の主宰と言うことで始めさせていただきますね。皆様、楽しんでくださると嬉しいわ」


セレナ様の挨拶でお茶会が始まる。


「エマ様、レイチェル様、カリン様。実は私、ずっと皆さんとゆっくりお話してみたかったのです!」


とは、リーゼ=レコット伯爵令嬢。水色の髪に琥珀色の瞳の、かわいらしい方。エトルの婚約者。


「ずるいですわ、リーゼ様。私もですのよ!」


とは、ソフィア=ゴートン辺境伯令嬢。深い緑色の髪にグレーの瞳の、少し気の強そうな美人。アレンの婚約者。


「そ、それを仰るなら、私もです」


とは、シャロン=ルイーダ男爵令嬢。栗色の髪に薄紫の瞳の、おっとり美少女。ビルの婚約者。



「まあ、光栄ですわ」


レイチェル。


「本当に。私達こそ、お話できて嬉しいです」


カリン。


ね、エマ?と、水を向けられる。全くもって、その通りでございます!


「本当に、レイチェルとカリンに同意ですわ。恐縮ですけれど、よろしくお願いいたします」



三人とも嬉しそうに笑顔を向けてくれる。ちょっと、かなり眩しいのですが!可愛いに囲まれて、天国なんですけど!!奴ら、ホントに何なの?心の底からアホだ。



……と思うけど、今日はキレないように頑張ろう。

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