第12話 二人の秘密

「えーと、聞き間違いでしょうか…?殿下が今、『乙女ゲーム』とおっしゃったように聞こえたのですが……」


「聞き間違いではない、乙女ゲームと確かに言った。……その様子だと、知っているな?」


フム…と顎に手を当てる殿下。


私は大混乱中で、心臓がバクバクと早鐘を打つ。


悪いことはしてないはず!だけど、分からなすぎて恐い!


「単刀直入に聞こう。君も・転生者か?」


えー!えー!えーっと、えーっと、バレても困らないはず!大丈夫、大丈夫よ、エマ!!


……って、あれ?


「……君、『も?』」


「も」


「ということは、殿下も…?」


頷く殿下。更に「ローズマリーもだ」と、さらりと宣った。


え。え。えー?!


「えー!早く言ってよぉ!!!」


思わず素で叫んでしまった。


殿下によると。この現世せかいは、『エマとレインボー騎士ナイト』と言う乙女ゲームがベースになっているであろう世界らしい。


私はタイトルだけでHP削られたけど。


乙ゲー世界かもと何となく覚悟をしていたつもりだったけど、どうやら覚悟が足りなかったようだ。


「エマは乙ゲー経験はないの?」「あっ、もう普通でいいよね?エマも日本出身だよね!」


ちょっとテンションの高いローズマリー様に、出身て(笑)と思いつつ、頷く。


「私はローズでいいし、ジークもジークでいいから!」


殿下も笑顔で頷く。


そして。


「ありがとう、ローズ、ジーク。私は……」


前世をかいつまんで話す。


そして乙ゲー確信は持てないなりに、いわゆる攻略対象っぽい人達はやんわり避けていたこと、どちらかというと仕事がしたいと思っていることも話した。



「あらやだ、パパママ世代!私たちが敬語にするべき…?」


「ちょっと止めて!!せっかく今生いまが同い年なんだから!」エマとして、青春はないと!


でも。


「二人は……早くに亡くなったの、ね……?」


「事故でね」


「デート中だったのよ!信号無視のトラックが突っ込んで来たの」


「そう……」


二人は大学生だったらしい。ジークがひとつ年上で、同じ大学にローズが入学できたお祝いデート中だったそうだ。まだ若かったけど高校からのお付き合いで、お互いに将来を考えていたらしい。


「それは…辛いわね……」


「目の前にトラックを見たときは、流石にな。でも、この世界でまた会えた。しかもお互いに記憶を持って。感謝しかない」


「そうね」頷くローズ。


「確かに、凄い奇跡よね!でも、王太子と公爵令嬢って、なかなか大変だよね?」


「確かにプレッシャーはある……が、二人で生まれ変われて、他に我が儘などは言えないだろ?あの事故の瞬間ほんとに走馬灯が流れて、ああ、俺死ぬんだな、彼女と結婚できないのかあ……って思っていたのに、今生でもローズと会えて婚約者にもなれて。その奇跡を考えたら、この立場である努力は惜しまない。この奇跡を考えたら、このくらいのことは当然のこととも思うよ」


「私もよ。一度は諦めた夢が叶いそうなんだもの」


二人ともカッコいい!!我が国は安泰だね!!


「しかし、エマは乙ゲーを全く知らなかったんだな?だからか……」


「うん、だから私たちにもある意味無反応だったのね」


「まあ、確かにある意味無反応になってたかも…乙ゲー確信はなかったし、自意識過剰かなあとも思ったりしたけど、念のためフラグっぽいことは避けようって考えてた」


「なるほどね…うん、一応ゲームのストーリーくらいはざっくり話しておこうか」



はい、覚悟して聞きます。

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