第11話 生徒会室へ

「トーマス、エトル、アレン、ビル。最近生徒会で見ないと思ったら、何をしているのかしら?」


ローズマリー様は笑顔だけれど、目の奥が笑っていない。


「「「「あ、いや、その……」」」」


何だよ、いやその、って!


「エマ様」


しどろもどろな四人は放置で、ローズマリー様が私に声をかける。


「はっ、はい!」


「今日のお昼休みは、久しぶりに私に時間をいただけるかしら?レイチェル様、カリン様、よろしい?」


「「はい!」」


「ありがとう、ではエマ様、こちらへ」


颯爽と現れたローズマリー様に圧倒され、みんな少し茫然自失気味だ。


私は、ローズマリー様に促されて歩き出す。




「ごめんなさい、大変だったでしょう?」


教室から少し離れてきた所で、ローズマリー様が声をかけてきた。


「正直に言いましたら、少し……でも、ローズマリー様のせいではありませんし。今日も助かりました、ありがとうございます」


「いえ……私にも責任があるのよ。一時期、監視…いえ、見守ることにしたものですから」


ん?今、監視って言った?ちょっと不穏な言葉が聞こえましたけど?さらっと言い直してるけどー!


「先生も気にされていたけれど、立場的に中に入れなかったのよね…」


何が?



「あの……ローズマリー様?」


そしてここは何処だろう、あまり来ない廊下だ。


「ああ、ごめんなさい。後で詳しく説明するわ。殿下も部屋でお待ちになってるから……」


は?!殿下も?どゆこと?



「着きましたわ」


おお、これは生徒会室!お初だわー、って、現実逃避をしてる場合じゃない。


ローズマリー様がノックする。


「殿下、エマ様をお連れしましたわ」


「ああ、ご苦労様。お入り」


重厚なドアを開け、ローズマリー様が入って行く。


私も後をついて行く。


「失礼します…」


「エマ嬢久しぶりだね。ここしばらく苦労をかけたようだ、すまない」


「いえっ、あの、殿下が謝罪されるとか!そんな畏れ多い!そもそも、先程ローズマリー様にもお言葉を頂きましたが…お二人のせいでは…」


「いや……」


三人掛けのソファーの両端に、殿下とローズマリー様が座っている。その向かいのソファーに座るように私を案内しつつ、殿下は話を続ける。


「もう少し早くに決断しても良かったのだ」


何をでしょう。


私はちょっと首をかしげた。


「ジーク、ますます分からないわよ」


あら、ジーク呼び!きゃっ。


「そうだな、どこから話そうか……ああ、昼食まだだろう?軽食で申し訳ないが、食べてくれ」


軽食と言っても、素敵なアフタヌーンティーセットがテーブルの上に置かれている。


「遠慮なくいただきます」


うん、落ち着いてきたら空腹感が一気に襲って来たので、ありがたく。


「うん、食べながらでいいので、聞いてくれ」


ハイ、ありがとうございます。美味しいです。先程までの面倒事を忘れるくらいです。



「エマ嬢…君は、乙女ゲームというものを聞いたことがあるか?」



「!!?」



びっくりし過ぎて、次のサンドイッチに手を伸ばしたまま、私はお二人の顔を見た。

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