4.娘は辱められ罪を背負い、男二匹大いに怒りこれを救わんとする事
苦しい、日々だった。毎日毎日畑に出て、雑草が生えていないかと土を睨み続ける。ヴァーミリアンは自由農民ではあったが、お世辞にも裕福とは言えなかった。二年前、父親が急に倒れて死んだ。母は彼を産んだ際に産褥で死んだのだと聞いていた。今は彼と、幼い頃から一緒にいた農奴のティーガーの二人で、畑を守っている。
「兄貴、一応終わったぜ。休みにしようや」
「ああ。今年は、何とか豊作になってくれれば良いが……税の取り立てが、厳し過ぎる。今年の収穫次第では、冬を越せんぞ」
そう聞いて、ケッとティーガーが唾を吐いた。
「期待するだけ無駄さ。豊作になったらなったで、またアレコレと理屈をつけてふんだくるんだ。どんな凶作になろうが、安くする事は無いし。領主様は吸血鬼か何かだぜ」
「言うなよ。空しくなるだけだ」
この辺り一帯を治める領主、ジョージは苛烈な男だった。毎年厳しく税金を取りたてて、一切税の減額など行った事もない。その為に飢え死にする農民も出たし、借金のカタに娘を連れていかれた者もいた。それでも、農民達は耐えるしかなかった。逆らいようが無かったのだ。
「なあ、兄貴よ。俺達、ここでこうやって生きて、死んでくのかなァ」
「どうしたんだ、ティーガー。急に」
「ふと、思っただけさ。同じ人間なのによ、俺達と領主様で、何が違うんだ、兄貴よ」
ティーガーは、ヴァーミリアンの事を兄貴と呼んでいた。子供の頃、まだ二人のそれぞれの両親が健在だった頃からの付き合いで、幼い頃には自由農民だ、農奴だといった意識もなかった。ティーガーはヴァーミリアンの頭の回転が速く、思慮深い所を尊敬していたし、ヴァーミリアンはティーガーの腕力や胆力を頼もしく思っていた。実の兄弟の様に、二人の結びつきは固かった。
「身分、だけだな。しかし、その一つが全てを決めるのが、この世だ」
「……ケ、くさくさしてくらァ。おい兄貴、飲みに行こうぜ」
そう言って、ティーガーは立ち上がる。ヴァーミリアンも頷くと、二人は連れ立って酒場に向かった。村の中にある、唯一の娯楽施設と言っていい場所だ。そこで酒を飲みながら、なおもティーガーの愚痴は続く。ヴァーミリアンはそれを宥めながら、しかしその言葉に頷いていた。その二人に、酒場で働いている一人の娘が近づいてくる。
「兄さん方、あんまり物騒な事言わないの」
「ラミアか」
ヴァーミリアンが、女の方を見ながら言う。ラミアという、酒場の主人の娘だった。ヴァーミリアンやティーガーは、彼女がまだ立ち上がる事も出来なかった頃から知っている。最も、大して広くもない村の中の事、当然の事ではあった。
「お前、幾つになったっけ」
「今年で二十歳よ」
「じゃあ、そろそろ嫁入りだ。誰か、良い相手でもいるのか」
ヴァーミリアンは、特に深い意図もなくそう聞いた。質問自体はありふれたもので、この社会においては何ら問題のあるものでもない。しかし、ラミアの顔色が変わり、笑顔が少し引き攣った。
「え、ええと……特に、無いわ」
「そうか。じゃ、すまないが酒をもう一杯くれ」
「はーい」
そう言って、彼女は空になったゴブレットを受け取るとその場を去っていく。二人は顔を見合わせた。
「今の態度、妙じゃねえか?」
「まぁ、デリケートな話ではあるさ。言いたくねえんだろう」
「ふーん……俺は、兄貴に気があるんじゃねえかと思うんだがね」
ティーガーはそう言ったが、ヴァーミリアンにはそうは思えなかった。そういう事なら、顔を赤くするだろう。しかし、あの時彼女の顔は少し青くなった。そして、あの引き攣り方。嫌な、予感がした。
「俺、ちょっと聞いてくらァ」
「お、おい、よせよ」
ヴァーミリアンは止めたが、ティーガーはさっと立ち上がるとラミアの方に向かう。ラミアはゴブレットにシードルを注いで、こちらに向かってきていた。
「何よ?」
「お前よ、ひょっとして……なんだが。兄貴の」
ティーガーがそこまで言った時だった。ラミアが呻いて、ゴブレットを落とす。そのまま口を押えて、蹲った。
「お、おい!? どうしたんだよ!」
慌てて、ティーガーも屈みこむ。ラミアは真っ青な顔をしていたが、やがてげぇと嘔吐してしまった。周りの人間達が大騒ぎしながら、彼女の周りに近づいた。誰かが背中をさすってやり、ティーガーは他の者から水を受け取って飲ませてやった。ヴァーミリアンも飛んできて、大丈夫かと訊いた。
「どうしたんだ、いきなり」
「ごめん……なさい。ちょっと、吐き気がして」
「な、何だって急に。お前そんなに飲んでたのか?」
ティーガーが訊くが、ラミアは首を横に振る。
「違う、違うの……多分……私……」
そこまで言って、彼女は泣き崩れてしまった。周りの男達がおろおろする中で、酒場の夫人が出てきて、彼女の肩を支えて出ていった。そして酒場の主人が出てきて、申し訳ないが今日は皆帰ってくれ、と言った。こうなっては仕方ないと、二人も帰る事にする。翌日、ヴァーミリアンは仕事の前に酒場に向かった。あの三人の様子が、気になった。
「親父さん。ちょっと、いいかい」
「ヴァーミリアンか。娘の事か?」
「ええ。昨日あんな様子を見ちまったらね」
「……あんまり、ベラベラ喋ってくれるなよ」
そう言って、酒場の主人がぽつぽつと語りだした。その内容を聞いて、ヴァーミリアンは雷に打たれた様な衝撃に襲われた。茫然としたまま、彼は自分の家まで戻ってくる。ティーガーは既に仕事を始めていた。
「おう、兄貴。どこ行ってたんだい?」
「……酒場、にな。ラミアの様子が、気になって」
「ああ、まあ、な。……兄貴、どうしたんだよ。顔色悪いぜ、真っ青だ」
「理由を聞いてきた。酒場の親父からな。他言無用とは言われたから」
「そんな顔色で、内緒ってのは無いぜ」
「ダメだ!」
ヴァーミリアンが叫んだので、ティーガーはひどく驚いた様だった。普段冷静沈着な彼が、これ程の大声を出すことなどほとんど無いのだ。
「そんな風に言われたらよ、余計黙っちゃいられねえ。俺も酒場に行ってくるぜ」
そう言って、ティーガーは飛び出して行った。ヴァーミリアンは止めようとしたが、間に合わない。しまった、と思った。自分では、まだ平静を保っているつもりだった。しかし顔色にはっきりと出てしまっていた様だったし、あんな風に怒鳴れば、付き合いの長い彼なら何かおかしいと察せるだろう。もし、彼がこの事を知ったら、大変な事になるだろうと思った。まっすぐで、義侠心に溢れた男なのだ。だから隠しておくつもりだった。
「……せめて、宥めるしかないか」
ヴァーミリアンは、そう呟く事しかできなかった。
その頃、ティーガーは酒場に到着し、酒場の親父を問い詰めていた。親父はしばらく黙っていたが、観念して話し出した。
「実は、娘のあれは……多分、つわりだ」
「つわり……って、どういう事だよ! まだ嫁入り前だろう」
「頼む、デカい声を出さんでくれ。娘は……犯された」
そう聞いて、ティーガーは口をあんぐりと開けた。
「だ、誰に」
「ご領主様の、ご子息だ」
「な、何だって!」
ティーガーは愕然としてそう叫んだ。主人は涙を流しながら、言葉を続ける。
「娘がボロボロになって、泣きながらそう言っていた。せめて、こうならないようにと祈っていたが」
「そ、そんな。それで、ラミアはどうすんだい」
「……こっそり、堕ろす事にする。今日、人を呼んだ。それで、もうこの事は忘れる。そうするしかないんだ。誰がご領主様のご子息を訴え出られる?」
ティーガーはそれを聞いて、歯が砕ける程歯軋りした。こんなバカな話があるか、と怒った。怒るしかできない己の無力さにも、腹が立った。そして同時に、ヴァーミリアンがこの事を話そうとしなかったのかを悟った。自分の気性を誰よりも知っている人だ。これを聞いて、自分がどれだけ怒るか分かっていたのだ。
「ゆ、許せねえ……ふざけるなよ、こんな」
「俺だって、本心じゃ許せねえよ。ぶち殺してやりたいさ。でもよ、それは叶いやしない」
ティーガーはそれ以上、何も言えなかった。腹の中にグラグラと煮え立つものを感じながら、ヴァーミリアンの家に戻る。彼はティーガーの顔を見て、静かに訊いた。
「聞いて、来たか」
「ああ」
「兄貴よ。兄貴は、平気……」
そう言いかけて、止めた。平気でなかったから、あんならしくない姿を見せたのだ。二人は黙って、座り込んでいた。働く気が、起きなかった。
それから五日後に、事件が起きた。村に、何人かの兵士が乗り込んできた。隊長格の男が、紙を突き出して叫んだ。
「酒場の主人の娘、ラミアはどこにいる」
酒場の主人が進み出て、応えた。
「娘は今、病にて臥せっています。何の御用でしょう」
「かの娘、嬰児殺しの疑いがある。よって、引っ立てさせて貰う」
そう聞いて、主人は泣きながら叫んだ。
「何をご無体な。一体なぜ娘が」
「黙れ! 堕胎は罪であると、聖典にも記されていよう。これは神に対する重大な反抗である!」
そう言い捨てると、彼は兵士達を酒場に踏み込ませた。夫人は抵抗しようとしたが、屈強な兵士達が何人も踏み込んで来るのに抵抗できる筈も無かった。ラミアは引っ張り出され、縄で縛られ連行されていく。農民達はそれを、遠巻きに眺める事しかできなかった。
その時、ヴァーミリアンとティーガーの二人はいつもの様に畑を手入れしていた。その彼らの横を、兵士達の一団が通り過ぎていく。腰を縛られて連行していくラミアの姿は、嫌でも目に入った。
「な、何!?」
ヴァーミリアンは慌てて、兵士達の集団に問いかける。
「お待ち下さい。一体何があったのです」
「この女、密かに堕胎を図ったと通報があった。堕胎は大罪だと知っておろう」
「それは、無論です。しかし、彼女がその様な」
「この女を堕胎したという医者が訴え出てきたのだ。金を積まれ、それに目が眩んでしまったとな。しかしその罪深さに恐れを抱き、訴え出たのだ」
そう言い捨てると、兵士達の一団は村を出ていった。ティーガーは目を怒らせて、今にも打ちかかっていきそうな程だった。
「医者が、訴え出ただと。ふざけやがって」
「落ち着け。今、そんな事をしても何にもならん。あいつらを全員打ち殺せたとしても、後から領主が更に兵を送り込んでくるわ」
「……分かってるよ。でもよォ、兄貴! こんな滅茶苦茶、俺ァ納得できねえ!」
「俺だって、腸煮えくり返る思いだよ。だが、俺達に何ができる」
それは、本心だった。感情だけで言えば、今すぐにあの兵士達を全員打ちのめして、ラミアを助け出したい思いだった。しかし、理性がそれを押しとどめていた。やりきれない思いを胸に秘めて、黙っている事しかできない。そう思った。
しかし、翌日の朝。ヴァーミリアンは真っ青になる。ティーガーが、いない。まさか、と思った。慌てて家を飛び出し、一路領主の館がある街を目指す。この様な事になったら、彼が何をしでかすかは想像がついた。必死に急いで、翌日には町に着いた。町の人々の会話に耳をそばだてると、堕胎の罪を犯した女が縛り首に処せられるという会話が聞こえてきた。あまりにも、早すぎる。どう考えてもおかしかったが、そんな事を考えても仕方ない。大急ぎで処刑場に向かうと、既に人だかりができていた。もう少しすれば、罪人が――つまり、ラミアがやってくるのだろう。そう思った時、ぐいと腕を引っ張られた。見ると、ティーガーがニヤリと笑って立っていた。
「流石、兄貴だ。やっぱり来てくれたか」
「放っておいたら、てめぇ一人でしでかすだろうが」
「おうよ。もう我慢ならねえ、俺はやってやるぜ」
そう猛る彼を、ヴァーミリアンは叱りつける。
「バカを言うな。お前、何も考えずに殴り込むつもりか」
「おうよ、あんなヘロヘロ兵共なんぞ、一発だ」
「武器も無しでか。もう少し考えろ」
そう言って、ヴァーミリアンは少し考えこむ。ティーガーは黙ってそれを待っていた。知恵を働かせる事に関しては、自分はヴァーミリアンに遠く及ばない事を彼は知っている。
「よし。こうなりゃ、俺も腹を決めた。良いか、耳を貸せ」
そう言って、ヴァーミリアンは二言三言、耳打ちした。ティーガーは分かったと言って、群衆の中に消えていった。
やがて、ラミアが処刑場に入ってきた。周りを十人程の兵士が固め、彼らに引かれている彼女は涙を流しながら、恐怖に顔を引きつらせていた。周りの人々は、ヤジを飛ばしながらそれを見物している。処刑は彼らにとって格好の見世物だ。
殺されるのがただの村娘とあって、警戒は緩かった。これが貴族や騎士ならば、郎党が助けに来るかもしれないと警戒も厳になるが、彼女はそんな大身でもない。
いよいよラミアが絞首台に近づいた、その時だった。辺りに大きな泣き声が響き渡り、一人の男が処刑台の方へと近づく。
「おお、ラミア! ラミア、どうして、どうしてお前が」
「止まれ! それ以上近づく事は許さん!」
兵士の一人が叫んだ。ラミアはその男の顔を見て、驚きに目を見開く。
「ヴァ、ヴァーミリアン!?」
「どうして、どうしてお前が!」
狂乱する様に泣き叫ぶヴァーミリアンの様子を見て、兵士の一人が呆れ顔で訊く。
「おい、何だあの男は」
「あの女の村の農民の一人ですな。惚れてでもいたのかな」
ヴァーミリアンの顔を知っている別の兵士が、そう答えた。その瞬間、誰もがヴァーミリアンに視線を注いでいた。これが、彼の作り出そうとした好機だった。一人の男が、一気に処刑場に飛び込んで兵士の背を突き飛ばす。完全に虚を突かれた兵士は、石畳に強かに打ち付けられた。兵士の手から槍が離れ、男、ティーガーはそれを掴むと力任せに振り回す。それで、三人の兵士が首を折られて動かなくなった。一瞬の事に誰もが愕然とし、今度は全ての視線がそちらに集中すると、ヴァーミリアンも動いた。叩きのめされた兵士が持っていた槍を手に、別の兵士の喉を突く。二人は槍など持った事も無かった。しかし、槍というのは単純な武器だ。腕力があれば、ある程度は戦える。まして兵士達は毎日力仕事に精を出す二人と違い鈍りきっていた。またその装備も簡単なもので、槍とショートソード、革鎧程度だった。それで問題ない程彼らにとっては“平和”であったし、こんな命がけの行為を行う人間が二人いるなど想像もしていなかった。瞬く間に兵達は叩きのめされ、ティーガーは死んだ兵士から取り上げたショートソードを使い、ラミアの縄を切る。そして担ぐと、二人は揃って走り出した。群衆は呆気に取られていたが、何人かはその行く手を遮ろうとする。しかし、両手に剣を握ったヴァーミリアンが吼えた。
「邪魔立てすれば、叩き斬る! 手出しをせねば傷つけはしない!」
その気迫に押されたのか、誰もあえて邪魔しようとはしてこなかった。ヴァーミリアンとティーガーは一気に城門付近に迫る。門には二人の兵士がいた。ただならぬ様子の彼らを見て、二人は拘束しようと向かって来た。ヴァーミリアンは右手の剣を投げつけて一人を殺し、残る一人も斬り殺す。一行は城門を出てもなお走った。そしてしばらく走った所で、崩れかけの小さな教会があったのを見つけひとまずそこに隠れた。ゼイゼイと息を吐きながら、ヴァーミリアンが言った。
「ここは、多分二年前に廃村になった、クリュ村だな。覚えてるか、あの凶作の年よ」
「おお。酷かったよな、ほとんど何にも取れなかったってのに、あのろくでなしの領主め、何もかもふんだくって行きやがった」
二年前。局地的な凶作がこの周辺を襲い、多くの村が苦しみにあえいだ。このクリュ村は結局税として備蓄していた作物まで持っていかれ、村人は死ぬか、村を捨てるかを選ぶしか無かった。
「ま、おかげで助かったんだがな、俺達は。人のいる教会じゃ、一時匿って貰っても詮議が厳しくなったら突き出される」
「しかし、どうするんだ、兄貴よ」
「そうだなぁ。こうなったら、もう村には戻れねえし」
「私のせいで、ごめんなさい」
ラミアが、絞り出すように言った。二人は慌てて言う。
「何言ってる。俺達が勝手にやった事だぞ。お前が悪い事なんかあるか」
「おうよ。俺はむしろせいせいしてんだぜ」
「うん……私、怖かった。二人が来てくれて、私、本当に」
そこまで言って、ふと思い出した様に彼女が言った。
「ね。ヴァーミリアン、あの時大泣きしてくれてたけど、あれって」
「まぁ、八割演技だな。腹が立ってたのは事実だが、ああやって俺に注目を集めるのが策だった。その隙に、ティーガーに突っ込んで貰おうってな」
「上手く行ったよなぁ、流石兄貴だぜ」
ティーガーはそう言ったが、ラミアは少し不満げな顔をした。
「なんだ。本当に私の為に泣いてくれたと思ったのに」
「いや、ある意味お前の為に泣いたようなもんだろ」
「冗談よ。……本当に、ありがとう、二人とも」
そう言って、彼女は笑った。二人も笑い、一瞬だが弛緩した空気が流れる。しかし、いつまでもここにはいられない。いずれ調査の手が及ぶ可能性はある。
「なあ、兄貴、どうするんだよ」
ティーガーにもラミアにも、考えはなかった。ヴァーミリアンは少し考えこんで、そうだ、と言った。
「お前ら、知ってるか? 東のファム村の連中が、一ヵ月位前に山に出たレッドキャップを叩き殺したと」
「ヴァンター山のゴブリンだろ? あの村のカーロン……だったっけ? 若いのが大暴れしたとか何とか」
「あの山にいかないか。山の物を採ればある程度は暮らせるし、そうそう見つからねえだろう」
元々、何も案の無い二人に、否がある訳も無かった。三人は立ち上がると、ヴァンター山を目指して歩き出す。そして、三人の姿は表舞台から消えた。その代わり、一つの山賊の噂が流れだす。凄腕の頭領達が率いる山賊団がヴァンター山に籠り、地主や騎士、貴族を襲っていると。その噂を聞いた者達が更に山に入り、やがてヴァンター山の山賊団の名は、この地方で知らぬ者がない程高まっていった。
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