第2.5話 共同作業
職員室で鍵を貰い、第二コンピュータ室に行く。すでに秋晴さんが来ていた。
「鍵ありがとう、帰りは――」
パソコンが置いてある方の長机の真ん中に座り、右隣に秋晴さんが座る。秋晴さんからUSBメモリを貰い、描いてもらった絵を複製してパソコンに移す。
羽の生えた蛇は飛行機と同じくらいの大きさで、一回り大きいであろうメドゥーサと並べば、弱い敵だとすぐにわかりそうだ。メドゥーサは紙に描いたラフしかなく、ゲームに組み込むことは出来ない。よって俺は、羽の生えた蛇のプログラムを考えることになる。
敵がいるのなら攻撃手段が必要だと、メドゥーサよりも先に、弾を描いてもらうことにした。
横で弾の参考にと、昔ながらのシューティングゲームの画像を調べてもらっている間に、俺の方も作業を開始する。
位置やHPなど、持っている情報は飛行機とほとんど同じである。よって昨日作ったキャラクタークラスを基底として、羽の生えた蛇のクラスを作る。
描画の部分はおそらく同じなので、とりあえずはコピーして使いまわす。
初期化も状態異常の部分が無いだけで、他は同じだ。
問題はアップデート関数の部分である。飛行機はプレイヤーの操作によって動く。敵はプレイヤーの思い通りに動くわけではない。つまり、あらかじめどういう風に動くのか決める必要がある。どういう風に動くのか、授業中に考えたのは二通りである。
一つは単純に、画面の右側から左側に進むというものだ。飛行機は右向きに進んでいるので、前から後ろに通り過ぎていく動きになる。
二つ目は、飛行機に向かって進むという動きだ。飛行機からすれば、かわしてもついてくるため、かならず攻撃して倒さなければならない。こちらの方が難易度が高くなる。
まずは一つ目の単純な動きを作ってみる。飛行機のUpdate関数の中から、キーボード操作のところを省いてコピーする。後は、横の位置の値に、初期化で設定したスピードを足していくだけである。敵は左に進むため、負の値を足していく。
一つ目の単純な動きはこれだけだ。すごく楽である。
さっそく羽の生えた蛇を表示させ、左のほうに進むか確認する。飛行機と同じようにメインループの前で画像の読み込みと、初期化を行う。弱い敵はたくさんいるので、動的配列を用いる。メインループの中で、アップデート関数と描画関数を呼び出すのだが、複数いるため、これをループで行う。ループの中にループがあるという状態だ。
実行してみる。動いた。羽の生えた蛇の画像は2枚あり、羽を上に向けているものと、下に向けているものがある。交互に表示すると、羽ばたいているように見える。少し、画像の切り替わりが遅いが、動くかのテストなので構わない。スピードはすぐに変更できる。
大変満足していると、羽の生えた蛇が左端まで進んだ時に止まってしまった。アニメーションだけが続いている。敵は画面からはみ出てもいいようにしないといけない。早速、画面からはみ出ないようにするプログラムを消して、再度実行する。今度は左端に行っても止まらず、そのまま見えなくなった。成功だ。バンザイ。
これを見ると、二つ目の飛行機に向かって進むというものは、いらないような気がする。他にも弱い敵を作るのであれば、両方作ればいいのだが、それはある程度作ってから考えればいい。シューティングゲームは後からでも、要素を追加しやすいのだ。
ということで、自分の作業は終わった。秋晴さんの方を確認する。どうやら、パソコンに入っているペイントソフトを調べていたようだ。
「使えそうか」
俺が作業を終えていたことには気づいていなかったらしく、声を掛けると、少しびくついたように見える。
「えっと、有料のソフトと無料のソフトが一つずつ入ってて、無料のほうは私も普段使ってる。有料のほうは初めて触ったけど、使えそう」
そういいながら、有料のほうで何かしらの動物を描いていた。マウスを使っているせいか、お世辞にも綺麗とは言えず、何の動物の絵なのかはわからなかった。無料の方は、俺も使っているソフトだった。
「マウスじゃ描きにくいだろう、今日は早めに切り上げるか?」
ゲーム制作部があったのなら、ペンタブレットか液晶タブレットがあると思うのだが、見渡す限りでは、それらしいものは無い。物が仕舞えるようなロッカーも無い。職員室か第一コンピュータ室にあるのだろうか。さすがに先輩達が自前で持ってきてたということもあるまい。
「岡林先生にあるか聞いてみる」
秋晴さんが立ち上がる。となると、俺は暇になる。
「俺が聞きに行こうか。秋晴さんはペイントソフトの有料の方を調べといてくれ」
俺が暇を持て余すよりはいい。
秋晴さんは、でも、と遠慮しようとしていたが、すぐにありがとうと言いながらパソコンに向かった。
よろしい、なら行ってこよう。
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