桜の樹の下には

 授業中、本を読んでいるそいつは先生に『本を読むな』と注意されていた。しかし、そいつは先生の声が聞こえていないかのように無視をして「桜の樹の下には」という本を読み続けていた。

「桜の樹の下には」ってどんな本だっけ?誰が書いてるんだ?と考えているうちに授業は終わっていた。授業が終わったあと、俺は友達に話しかけられていることに気づかず、ぼーっと考え事をしていた。

「おい!おい、桜!おまえプリント足元に落としてるぞ!」と友達のアキラに言われ、プリントを落としていることに気づいた。

「あ、わりぃ。」と言った後にそいつの読んでる本のタイトルが頭に過ぎった。



「桜の樹の下には」



その題名通り、「俺の下には」プリントがあった。もしかしたら、あいつは俺の足元にプリントがあることを教えたかったのかもしれない。いや、気のせいだろう。だが、俺は「ありがとう」とそいつに聞こえるように態と声を大きくして言った。そいつの口角が少しだけ上がっているように見えた。そしてアキラは自分に感謝を述べたかと思い込んでいたのですごく誇らしげだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

貴方に伝えるメッセージ 紅香 @kousui_kou_ka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ