第一話(2/3):未来同盟部


「だからこその未来同盟第一回作戦会議ですよ! 先輩!」


 キリッとした表情でその両目にやる気を漲らせて悠那がそう言い出した。

 単にこうして菓子を片手に駄弁る目的で今日は集まったわけではなく、部室も得たので正式に活動を始めようという話だったのだ。


「まっ、そうだな。ようやく学校にも復帰して落ち着いたことだし」


「はい! ……とはいえ具体的に何をすればいいんでしょうかね?」


「大厄災を止めないと世界がそのままろくでもないことになる。だから大厄災を止める。目的、というか目標はハッキリしてるんだがなぁ」


「私も力のせいもあって大厄災……とやらがこのままだと起きることについて異論はないですけど」


「肝心のその大厄災ってのは何なのかってのが……」


「ですよねぇ。話のスケールが大きくてピンと来ないっていうか」


「だが、必ず起こる事らしい。シリウスの存在がその未来についての証明になるわけで……あー、めんどくさ。なんで俺がこんなことを……なあ、お前の異能で何かわからないのか?」


「漠然と起こることはわかってもそれ以上は私もよくわかんないです」


「使えねぇ」


「おい、こら先輩」


「ふむ……そこから始めないといけないのが難儀なところだ」


 尊はパキリとまた一枚チップスをつまみながらぼやいた。

 世界を救うというのが未来同盟の最終目的ではあるが、わかっているのは将来的な起こるであろう危機の存在だけだ。


 は起きる。

 だが、起きるのか。

 起きるか。


 わかっているのは……その後の荒廃した世界という結果のみ。

 情報も何もかもが足りない。

 大厄災という災害について、どうすれば防げるのかという方法論の議論をする以前の段階だ。


「とはいえ、だ。まるっきり手がかりが無いというわけじゃない」


 大厄災の正体の仮説において重要視されているのがCケィオスの存在。

 全てのきっかけとなったのはある実験中に大厄災時の過去と繋がり、そしてその過去に途方もないCケィオスの反応が観測されたことから始まったという。


「であるなら、やはりCケィオスが関与していると仮定する。具体的にどういう形かはわからないけど……」


Cケィオス……それに干渉し超常の能力を使えるのが異能者、でしたよね? 私もその一人だと」


『肯定。巫城悠那の認識で間違いはない』


「確か大厄災の後はその異能者が大量発生して大変になるんでしたっけ? それも世界荒廃の要因の一つだったって話ですけど……あれ? でも、まだ今の時代って大厄災より前ですよね? 私が異能を使えるのっておかしい?」


『回答不能。情報不足』


「そこら辺は何とも言えんな。単純にそれ以前の過去では異能者を見分ける方法が無かったからわけで……居てもいいんじゃないか?」


「それもそっか」


「ただまあ、やはり大厄災以前のこの時代に異能を使える存在……ってのは何かの取っ掛かりにはなりそうなんだよな。シリウス曰く、次元が違うというのもあってCケィオスがこの次元において何かしらの現象を起こすには出力するための人間……異能者の存在が必要になる、らしい」


「ふむ……。つまりは大厄災というのは人が起こしたもの?」


「さてな、規模を考えればどれだけ強力な異能者でも個人や集団で出来る規模じゃないらしい。だがら、そう単純な話じゃないとは思うが……」


『意見。それでもこの時代における異能者の存在を調べることは有益な情報に繋がる可能性も高く、優先度を高く見積もる価値があると演算』


「なるほど、なるほどつまり手がかりというのはこの時代の異能者で……わ、私は犯人じゃありませんよ?!」


 ふと何かに気付いたかのように抗議の声を上げる悠那。

 それを尊は煩そうに手をひらひらさせて黙らせる。


「あー、はいはい。というか調べるならもっと怪しいのがいるわけだし、そっちが先にするに決まってるだろ。お前は手元に置いてじっくりと観察するから」


「なーんだ。よかっ……あれ!? 結局疑われてる?」


「いや、貴重なこの時代の野生産異能者だし」


「野生産?!」


『同意。非常に得難いサンプル』


「サンプルって……扱い酷くありません?」


「しょうがないだろ。少しでも情報が欲しいんだ。繋がりそうなものは片っ端から調べないと……それを考慮すれば現状二人も確認されているこの時代の異能者を調べないなんてのは無い」


「そーれはーそーなんですけどー!」


 ぶーたれながらジュースのペットボトルを一気飲みする悠那。

 さっきほどまでコップに注いでいたというのに抗議を表すような飲みっぷりだ。


「不貞腐れるなっての。話を続けるぞ? やはり、一番に調べるべきはもう一人のこの時代の異能者……」


 この天去市で一連の事件を起こした犯人であり尊と悠那の命を脅かした危険な敵。


「――火島那蛇」


「そうだ。シリウス、資料を頼む」


『了解』


 シリウスが返答と同時に机の中心に置かれた立体投影装置が起動。

 室内の照明が調整され立体映像画面が空中に浮かび上がった。



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