エピローグ(3/3):未来同盟


「それにしても退院したらようやく……か。色々とそれどころじゃなかったが使命とやらに気を回せるわけだが学校生活どうするかな」


「一年しかないんですもんね」


「あるいはもっと短い可能性だってある。そうなると自由な時間は確保しておきたい。単純に確保するだけなら手っ取り早くやめた方がいいんだろうが……俺はそんな気はさらさらない。世界の未来も大事だが個人の未来も大事だ。今の世の中で学歴無いのはキツイ」


「ま、まあ……そうですね。あんまり考えたことなかったですけど」


「自分の将来犠牲にしてでも世界を救うつもりはない」


『回答。学歴データの電子情報などいくらでも改竄可能』


「……そういう話じゃないから。精神的に日常生活を続ける意義だってある。ともかく、俺は学生をやめるつもりはない。ちゃんと正式に卒業したいし、必要になったら抜けるぐらいでいいだろ」


『了解。主張に理解を示す。日常を保持しつつ陰で戦うのは変身ヒーローものの基本。流石、ユーザーはツボを押さえている』


「ひゅー! 先輩カッコイイー! ……先輩ってヒーローものの創作好きなんですか?」


『回答。傾向として孤高のダークヒーロー系を好む』


「ああっ、だから黒かったんですね。男の人って好きですよね黒とか闇とか暗黒とか……」


「いや、アルケオスのデザインは俺じゃねーよ!? 俺が何か悦に浸ってスーツのデザイン考えて着て戦ったやつみたいな言い方は不本意です?! それはそれとして、アルケオスのデザインはカッコいいだろ!」


『同意。黒の何が悪い』


「あっ、気に入ってたんですね」


 尊とシリウスの抗議に巫城は呟いた。


『軌道修正。ユーザー話が逸れている』


「いや、誰のせいだと……まあ、いいや。話を戻すとして、だ。一先ずは学生生活はこのままでとなると問題になるのが……コレだ」


 尊はそう言うと歩が持ってきた物の中から一枚のプリントを取り出した。

 題名にはこう書かれている。


 ――部活動、サークル活動の推奨について


「あっ、コレ。同じのを一年でも配られましたね。読まずに捨ててしまいましたが」


「いや、読めよ」


「どうせ死ぬと思ってたんで……」


「なんとも答え辛いブラックジョークやめろ。これはアレだ。うちって進学校だろ? しかもわりと新しい新設校。だから色々と精力的でな。これはその一環で……端的に言えば生徒は何かしらの部活あるいはサークルに所属しなさいってやつだな」


「あー、つまりは帰宅部はダメってことですか?」


「そういうことだ。タイミングが悪い。学内活動の活性だか何だか知らんが……。活動実績が成績にも関わるとなると適当な部活に幽霊部員というのも難しいか? とはいえ、流石に課外活動にも拘束が入るのは避けたいところだが――どうするべきか」


「ふむふむ……なるほど。――あっ、私にいい考えがあります!」


「なに?」


「いっその事作っちゃいましょう私たちでサークル。そうすれば解決です!」


「あー……」


『分析。提案の有効性を確認。シリウスは巫城悠那の意見に同意。校内の規定により少数でのサークル活動、ならびに部の発足は認められている。下手にどこかのコミュニティに入るより作った方が自由』


「確かに」


 一理あるなと尊は頷いた。


「活動内容は……」


「未来をより良くするために活動することを第一とします!」


「なんか変な宗教色の出てるサークルっぽいな」


 嘘ではないし正直ではあるのだが。

 無難にボランティア活動を主体とするサークルという建前にすればいいだろう。

 活動実績もボランティアならそこまで煩く言われないはず。成績への大きなプラスもその分無いだろうがそこら辺はこの際切り捨てる。どのみち、程ほどにしかやらなかっただろうし。


「だが、いい案だ。それでいこう。申請書の活動内容欄は適当に埋めるとして……後は名前だな。サークル名」


「サークル名……」


「よし、巫城任せた」


「えっ、私が決めるんですか!? 先輩が決めた方が……」


「お前が言い出したことだろう? それに俺はこういうのは苦手でな」


 面倒くさいし。

 そんな考えが尊の顔に出ていたのか巫城はえーっと言っているものの無視。

 すると諦めたのかうんうんと唸り始めて少しの間を開けて口を開いた。



「それではこういうのはどうでしょう? 私たち三人、これから未来を救うことを目的とした仲間、同志となるわけです」


『疑問。シリウスはユーザーの管理サポートAI。人に非ず』


「仮にシリウスを一人と認定するとしても俺とシリウスは一心同体だから、三人というより二人と一人……仲間外れが居るな!」


「ええい、黙らっしゃい! 私と先輩とシリウスの三人の……そう! です!」


「同盟って」





「滅びの未来を変えて救うための同盟――即ち、サークル名を「未来同盟」……なんてのは如何でしょうか、はい」





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