第2話

「寄り道しないで帰れよ~」


担任の先生が連絡事項を話し、HRが終わる。


特に部活には入っていないので、そのまま帰ることも可能だが、借りていた本を図書室に返さなければいけない。


といっても、放課後は自由解放で、図書委員もおらず、紙に借りた本と日付を書けば借りられるため、本を返した後でも借りることが出来る。


そんなことを考えながら机から教科書などを取り出し終えると、そそくさと教室を出る。


その際に一人の生徒を横目に見る。


「今日も来るのか?いや、あの様子だと来れないか」


数人の友人と談笑している彼女を見る。まあ、彼女が図書室に来るか来ないかは、俺に関係ない。


一人でそんなことを考えながら、今度こそ、俺は図書室に向かうことにした。




☆☆☆☆☆



図書室。至って他の高校と変わらない普通の図書室。まあ、ひとつだけ違うところと言えば……


「あっ、今日も来てたんですね」

「それは俺のセリフでもあるけどな」


先ほどまでクラスの人たちと楽しそうに談笑していた美少女、宮内 桜が図書室の扉を律儀にノックしてから入ってきた。


「……今日も居残って勉強か?」

「この場所じゃないと勉強できないので…」


宮内 桜は決して本を読みに図書室に来ているわけではなく(まあ、たまに読んではいるが)、放課後、今日習った範囲の復習や明日の予習などを図書室で勉強している。


ただ、宮内がどうして放課後図書室に勉強しに来ているかというと……


「大変だな、『完璧な美少女』は」

「そ、その呼び方はやめてください」


そう呼ぶと居心地が悪そうに否定する。

どの生徒も憧れ、称賛するかのように付けられた『完璧』という呼び名。それ自体が彼女を縛りつけているとも知らずに、どの生徒もそう呼ぶ。


どの生徒も彼女自身の才能と持て囃す。生まれ持った才能、天才、そんな簡単な一言で彼女の努力を見ようとしない。都合の良い『完璧』という一言で片付け、本当の宮内を見ようとしない。


何度でも言おう、彼女は天才なんかじゃない。友人との時間や習い事の合間を縫って、ここに勉強しに来ているほどの努力家だ。


別に、俺だけが理解しているとなんて思っていない。俺だって図書室に通う日課なんてなければ、努力で手に入れたものなんて思わなかったかもしれない。


「お前は凄いよ、宮内」

「きゅ、急に何ですか?雪見君?」

「いや?何でもないよ」


けど、誰も見ようとしないのならば、誰にも気づかれないまま過ごしていくくらいなら、俺だけでも気づいていたいと思っただけ。




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これは俺が『完璧な美少女』をぶっ壊す物語。短い物語になると思うけど、付き合っていただけるとありがたい。










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