大人と子ども

 大通りに入ってから、あ、と思いハンドルを切った。あの子の家へ行く前に、コンビニに寄って行きたい。

 ……コーヒーでも買ってくか。

 普段はあまり飲まないが、今日は必要な気がした。

 こんなもんで、一線引いたつもりかよ。

 下手くそな自分にため息が出た。何か意識させるもの。そう考えて、これくらいしか思い浮かばなかった。

 多分そうだと気づいてしまった。あの子は生意気なくせに、反応が分かりやすくて困る。

 俺から言う必要はない。だが、分かってもらう必要はある。

 俺は大人で、あんたは子どもなんだと。


 カップをドリンクホルダーに置くと、車内にコーヒーの香りが広がった。

 これでいい。

 あの子の家に向かうために、車のエンジンをかけた。



(299文字)


2022/05/07

第86回お題:買う



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