あの子の面影
時が止まっている、と思った。高校を卒業して以来そのままだった部屋は、ひとりだけ時間の波に乗れていないみたいだ。
クローゼットの奥から箱を取り出して、そっと蓋を開ける。箱いっぱいに入れられた写真がバラバラと溢れた。それらを広げて一枚ずつ確かめていく。頭の中でははっきりと描けているのに、写真だけが見つからない。
私が作り出した景色だった? そう頭によぎって無理矢理かき消す。違う、妄想じゃない。
「あった……」
ようやく見つけた写真は、私しか写っていなかった。潮風で髪を乱しながら、こちらを見て笑っている。それなのに、目の前にいたはずの彼女を思い出せない。私は頭を抱えた。泣きそうな顔が写真に浮かんで消えた。
(298文字)
2021/12/04
第82回お題:箱
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