見ないふり
水面でオレンジと群青が混ざり合う。宝石みたいだ、と目を細めながら思った。
遊覧船から眺める夕日は、何にも邪魔されることなく海に浮かんでいる。何度も角度を変えて反射する光が、俺の目をギラギラと刺激した。
俺とナオは風に乱されながら、じっとそれを見ていた。船が揺れるたびに肩がぶつかる。
「ごめん、またぶつかった」
「いいよ別に」
ナオは目尻を下げながら言った。
ああ、幸せだ。
ナオの顔を見てそう思った。今がずっと終わらなければいいのに。
二人きりで日帰り旅行をしようと言い出したのはナオだった。それがどういう意味なのか、考えなかったわけではないが、俺は答えを出す前に蓋をした。
明確な答えなんて、欲しくなかった。
(297文字)
2021/10/02
第80回お題:宝
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