第3話
「探偵手帳って何?」
『メニューから見れるだろうが』
『ポケットに入ってるよ』
『ないよそんなものん』
『どうでもいいからストーリー進めろ』
あの後メグに案内されたのはこじんまりとした個室で、私にはぴったりだった。
しかし、そこである問題が発覚した。メグが去った後に、何をしていいのかわからなくなったのだ。とりあえず適当に雑談をしていたが、三十分くらい喋っていたらリスナーにガチギレされたしマネージャーからのメッセージも来た。なので何やればいいかリスナーに聞いてみたところ、探偵手帳なる話が出てきたというわけだ。
「あ、手帳と言えばこの前マネージャーにさあ、『手帳でも買って目視できるようにすれば、スケジュール管理もできるようになるんじゃないですか』って言われて買おうとしてみたんだよね」
『4』
『もういい』
『もっと雑談して』
『4』
「でもさ、普段買わないものってどう買えばいいのかわからなくない?ネットで済ませるか実際に出歩いて探すかとかさ」
『お前出歩かないじゃん』
『わかる』
『探偵手帳探偵手帳探偵手帳探偵手帳』
『マネージャーも本気じゃないよ。お前が買い物できるわけないから』
『買い物する気になれたの?偉いね~』
『事務所宛てに手帳送りました』
『右手で二本指立てて下にスライドでメニュー→アイテム→探偵手帳』
お、有能発見。
「えーっと……お、探偵手帳あった」
『やっとか』
『長い』
『ようやくチュートリアルが始まります』
リスナーの期待に満を持して、探偵手帳とやらを開く。すると私の手の中に小さな手帳が現れ、なにやら色々と書いてあるそれを確認することができるようになった。
「あー、しゃーない。真面目に読みますかー」
『今閉じかけただろ』
『ここ読めば楽になる』
『早くしないとマジでバッドエンド直行だぞ』
はいはい。読みますよーっと。
【チュートリアル1 チャプター
一日ごとに、約三十分時間行動できるチャプターが、朝・昼・夕方・夜の四回用意されています。各チャプターではプレイヤーが自由に行動でき、各キャラクターもAIに基づいて自由に動き回ります。また、物語の唯一性を高めるために、AIの行動には一定の乱数が導入されています。同じ行動を繰り返しても、同じ物語になることは二度とないでしょう】
【チュートリアル2 約束
特定のチャプターでは、各キャラクターから約束をされることがあります。約束とは、相手に日時と場所を指定され、会いたいとお願いされることです。それを受諾すると、通常チャプターとは別に特殊なチャプターが発生します。】
【チュートリアル3 襲撃
各チャプターの行動次第で、襲撃チャプターが発生することがあります。襲撃チャプターが発生すると、主人公は死亡し物語は幕を閉じます。しかし、襲撃チャプターでは各キャラクターの裏の顔を見ることができるチャンスでもあるため、襲撃チャプターが発生してしまった場合は次のプレイに繋がるようなヒントを探し出しましょう。
また、襲撃チャプターは各キャラクターに発生します。死んでほしくないキャラクターが居る場合は、あなたの行動でそのキャラクターに襲撃チャプターが発生してしまわないように誘導しましょう。】
「ミステリーってそういうこと!?」
『俺らも襲撃されるのか』
『事件が用意されてるとかじゃないんだな』
『一回三十分なら配信の区切りつけやすそう』
たしかに配信的にはありがたいかもしれない。約っていうところが気になるけど。
それより、問題は襲撃の方だ。普通に何かの事件を解決しながら恋愛をするって感じを予想していたが、全然そんなのではなかった。
というか、下手をするとこれは死にゲーというやつかもしれない。襲撃チャプターで犯人を特定して、動機を推測して、チャプターでそのフラグを回避するように行動すると。そして恋愛もすると。なお、乱数でAIの行動は変わりますと。ふぁ〇くですね。
「このゲーム、長―いお付き合いになりそう」
『やったああああ』
『面白そうじゃん。自分ではやりたくないけど』
『ティモには無理だな』
『ちなみにこのゲームのコンセプトの一つはバトロワですよ。人殺すの一人じゃない』
『絶対最後までやれよ』
『長いお付き合い ジャガイモ食いたい』
『案件だから投げられないよー^^』
やだやだやだー。面白そうだけどめんどくさそうー。
ていうか、コメント見てる感じ意外と知ってた人もいるのね。今日発売なのに。バトロワとかもう世紀末じゃん。
なんて思いながら、更にページを捲っていく。すると、次は各キャラクターのプロフィールが記されていた。
【メグ
二十代前半の動画配信者。明るい茶髪をボブカットにした姿は、どこかポップさと清潔感を両立させている。】
【???】
【霧崎莉子
館の主・道明晃の従者。純白の髪色は、とても染めたものとは思えない。】
【???】
【???】
【???】
【???】
【???】
【???】
【???】
【道明晃
館の主。大金持ちで、この孤島の所有者でもある。噂では、何やら怪しい研究を行っているという話だが。】
「少な」
『出会って解禁していくパターンね』
『関係深めないと情報増えないよ』
『もっとメグから話聞き出すべきだった』
『やっぱティモには無理だわ』
『やり直せ』
情報やけに少ないなーと思ったけど、自業自得ってやつですか、そうですか。でも、悔しくなんかありませんよ。これって伸びしろですからね。
…………などと茶番を繰り広げながら、私は次のチャプターへと進んだのだった。
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