第37話 黒幕の正体

 「あ! 見つけたわよ二人とも! マグリスが読んでた本にダービスの名前がある!」


 「ああ、やっぱり読んだ本の著者だったのか。本のタイトルは?」


 俺は脱力しながらフェイに聞く。もう俺の体力ライフはゼロだった。


 もうなーんにもしたくねえ。フェイの野郎、散々俺の黒歴史を言いふらしやがって。この恨みはいつか晴らさせてもらうぞ。


 「最強のモンスター図鑑。子供の時読んだ本みたいね」

  

 「あー、またなんか黒歴史っぽい本が出てきたなぁ。でももういいや」


 子供の時の話だ。男子なんて皆最強とかいう言葉に弱いのだから俺は正常だ。いや、正常でなければならない。


 「この本の記憶を見るに、ダービスは学者のようね。この中でそんな奴に狙われそうなのは……あたしとビルデね」


 「そうだな。特にフェイはまさに最強と言えるが、お前ってモンスターではないよな?」


 俺の記憶が正しければ、ドラゴンは卵を産む。自然発生するモンスターとは違うはずだ。


 「そうだけど、それはあんまり関係ないと思うわ。大体ビルデもモンスターじゃないし」

 

 「うーん、でもなんで私達を殺そうとするのかが分からないですね。最強に興味があるなら捕獲で済ましそうな気がしますが」


 ビルデは首をかしげる。フェイも唸り顎に手を当てる。二人とも思いつかないらしい。


 「ま、動機を考えるのは後にしようぜ。それより今後どうするかだ。ドラゴンに会いにいくのはどうする?」

 

 俺は話を変える。よく分からないまま考察を進める意味はない。


 「延期にしましょう。あれは元は私が自分の正体を知りたいから言い始めたものですから」   


 ビルデははっきりと言い切る。


 「うん、まあそうするよな。フェイはどうしたい?」


 「あたしはアスタルテに避難するかここで過ごすかの二択だと思ってるわ。アスタルテはあたしの瞬間移動で戻れるわよ」


 「お、アスタルテに戻るのはいいかもな。どうしようか」


 どちらも捨てがたいな。ここなら暗殺に対処しやすいとは思うが、アスタルテは食料を安全に入手できる。


 「私はアスタルテに戻りたいです。なんとなく、アスタルテの方が安全だと思うので」


 「ええ、あたしもそうだと思う。今までの通りモンスターで襲ってくるならアスタルテの方が安全だと思う」 


 それはその通りだ。ただ、一般人を巻き込まないか少し不安だな。


 「決まりだな。実は俺ちょっと迷ってたんだが、二人がそっちなら俺も従おう」


 「分かったわ。それじゃあたし達の体調が戻ったら行きましょう!」


 こうして俺達はフェイと出会った街、アスタルテへと向かうことを決めた。

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