第33話 魔改造テントと海水浴

 俺が目覚めた時、周りは凄いことになっていた。テントはもはや家と呼んでも良いぐらい大きくなり、ベッドは昨日俺達が寝たベッド以外消滅した。


 代わりに今俺が寝ていたベッドは巨大になっていて、丁度三人分寝れるようになっていた。


 更にソファやクローゼットまで設置されていて、テント全体がとんでもなく豪華になっていた。


 俺は視界の隅で犯人を捉えると、そいつに近づく。


 「ビルデ、張り切るのはいいが、どうせ最終的には解体しちゃうんだぞ?」


 「分かってます。でもこれぐらいまた作れますから」


 犯人――ビルデは朝食の準備をしてニッコリと微笑んだ。

 サラッと言っているが、これは普通なら何十時間もかかるはずの作業だ。最初は楽しそうなスキルとしか思っていなかったが、今思えば完全にぶっ壊れスキルである。


 「そういやフェイはどうした? 今いないみたいだが」


 「フェイさんならそこにいますよ。ついさっきまで食料を集めてくれてたんですよ」


 フェイはテントの奥の方にいたようで、俺を見つけるとこちらに駆けつけてきた。


 「おはようマグリス。解析は明日までには終わるから、今日は海で泳がない? もうビルデとは話したんだけど」


 「おお、それはナイスアイデアだな! 実を言うと俺も海に来たからには泳ぎたいよなって思ってたんだ」


 俺はフェイの提案を全力で肯定する。今機会を逃せばもう中々チャンスはやってこないだろう。


 「よし、決まりですね! それじゃ朝ごはんを早く食べて泳ぎましょう!」


 そうして俺達はビルデの作ってくれたご飯を食べると、各自水着に着替えることにした。


 「いやー、泳ぐのは何年ぶりだろうな。最後に泳いだのはどっかの川だったような気がするが、覚えてないなぁ」


 俺はテントの外で一人、ひっそりと着替えていた。テントの中からは女子二人の笑い声が聞こえてくる。


 「あいつら楽しそうだな。一体どんな姿で来るんだか」


 俺は水着に着替え終わると、テントの入口で二人を待つ。もうそろそろ出てきてもいい頃だが、話が長引いているのか中々出てこない。


 「ばーん! どうですかこれ?」


 待つこと数分。突然、ビルデがテントの入口から飛び出してきた。

 ビルデはスキル「花創作」で水着を作ったようで、大量の花びらが使われた黒い水着を着ていた。彼女は洋服タイプの水着を着ていて、水着の隙間から健康的なお腹が姿を見せていた。


 「おお、かわいいじゃないか。花びらがいい味を出してるな」


 「えへへ。これ作るのに花を五本使っちゃいました」     


 ビルデはくるくると回って俺に姿を見せつけてくる。俺は笑顔でそれを見つめ、ビルデの容姿を褒め続けた。


 「さて、フェイさん出番ですよー!」


 ビルデがテントの前で呼びかけると、フェイがゆっくりと俺達の前に出てきた。


 フェイは下着のような白色の水着を着ていて、俺は目のやり場に困っていた。


 「マグリス、どうかしら」


 なぜそこで俺に話を振る! いや、ビルデはもう見てるんだから当たり前か。


 「あ、ああ。とてもよく似合ってるぞ」

 

 「ちゃんと直視して答えてよ。もしかしてダサかった?」


 「そんなことない! 個人的にはベストな組み合わせだと思ってるぞ」


 俺は慌てて首を横に振る。単純に姿がセンシティブなのだ、フェイ自体はとてもかわいいと思っている。


 「ならいいんだけど。あんたもそれ似合ってるわよ。それに随分筋肉あるのね」


 「ありがとう。まあこれでもハンマー使いだからな、自然と筋肉はつくさ」


 「ふふ、二人とも早く来てください! とっても気持ちいいですよー!」


 俺達が話している間に、ビルデはちゃっかり海に入っていた。俺は慌ててビルデのそばへと行くと、彼女の体に触れた。


 「一人で入っちゃ危ないぞ。次からは俺らが見ている時にしてくれ」


 「あ、ごめんなさい。心配かけちゃいましたね」


 ビルデは俺にペコリと頭を下げる。意図をちゃんと理解してくれたようだ。


 「うん、気持ちいいわね。波も今は強くないし遊ぶには持ってこいね」

  

 「そうですね。ということで――えいっ!」


 突然、ビルデは掛け声と共に俺達に水をかけてきた。


 「やりやがったなぁ〜食らえ!」

 

 俺は両手で水をすくうと、ビルデ目掛けて水をぶっかけた。ビルデはキャッと悲鳴を上げてよろめくも、しっかりと俺に反撃してきた。

 

 俺は再びビルデに攻撃しようとしたが、次の瞬間フェイが俺に矢のような速度で俺にぶっかけてきた。


 「おい待てフェイ、俺はまだお前に攻撃してないぞ!?」


 「分かってるわよ。だからなにかしら?」


 フェイは悪役っぽい笑みを浮かべ、俺に水を連射してくる。完全に俺を集中狙いする気だ。


 「だぁーー畜生! こうなったらやってやるよ、かかってこい!」


 俺は両手で水を投げまくって攻撃する。対するビルデ達は俺を挟み撃ちにして俺の攻撃を拡散させてきた。


 「ほらほら、こっちですよー」

  

 ビルデはちょこまかと海に潜ったり動いたりして俺の攻撃を避けてくる。おまけにこうやって挑発までしてくるのでかわいいったらありゃしない。


 「くそー、全然攻撃が当たらねえ。こうなったらフェイを先に狙うか」


 俺は標的をフェイに絞ると、フェイに猛攻をしかける。フェイは応戦してきて、俺とフェイの水が辺りで飛び交った。


 俺は水をすくう隙をつかれてフェイに猛攻撃され、俺は仕方なく降参する。


 「わー、俺が悪かった! だからもうやめてくれ!」


 俺は全力で二人から逃亡し、砂浜まで逃げ出した。

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