第15話 勘違い救出作戦

 俺はいつの間にか眠ってしまったらしい。ふと気づくと既に太陽が降りて暗くなっていた。


 「うーん、よく寝ちまったな。ってアレ!? お、おいビルデ! どこいった!?」


 俺はビルデの姿がないことに気づき、慌てて周囲を見回す。


 まずい、もしかして俺が寝ている間に何かあったのか?


 「ん? これは……ビルデの位置なのか?」

 

 俺は視界に赤い人型の影があるのに気づき、それをじっと見つめる。影はビルデの体格をしていて、この街の地下にあるようだ。


 「……間違いない。あいつは連れ去られちまったんだな。クソっ、何やってたんだ俺は!」


 俺はハンマーを手に持つと、走って影のある場所まで向かう。


 全力だ、全力で助けるんだ! 彼女に何かがある前に!


 俺はスキル「影泳」を使用し地面に潜り、ビルデが連れ去られたと考えられる建物に侵入する。


 ところが、建物の中には人が数人いるだけで、何も怪しいところはなかった。一見すると、ただの本屋にしか見えない。


 おかしいな。たしかにここだと思ったんだが。


 俺は怪しく思い、本棚を一つ一つ確認する。こういうものに隠し扉があるのは小説とかでよく見るものだ。


 すると、ある一つの本棚の奥に階段を発見し、俺は奥に進んでいく。


 やはりあったな。この先はきっとアジトだな。


 先には長い廊下が続いていた。その後十字に道が分かれていたが、俺は赤い影のいる方に進んだ。


 待ってろよビルデ。今助けに行くからな!


 俺は十字路から階段を見つけ、更に下へと降りていく。すると何故か赤い影がいきなり激しく動き始めた。


 な、なにやってんだあいつは。まさか抵抗してるのか? 怪我しないといいんだが。


 俺がそんな心配をしていた瞬間、地下全体にとんでもない爆発音が鳴り響いた。


 「あー、もう我慢できねぇ!」


 俺は我慢の限界に達し、スキル「影泳」を解除し外に出る。そしてビルデの力を借り、身体能力を強化する。


 「ああっ!? 誰――」


 俺のハンマーは踊るように動き、悪党共をなぎ倒していく。さすが悪魔の力というべきか、俺の自己強化魔法よりも強い。


 赤い影はどんどんこちらに迫ってきている。俺も赤い影へと走っていく。


 「マグリスさん!」


 「ビルデ!」


 俺は前から来た赤髪の幼女をぎゅっと抱きしめる。よかった、無事だった。


 ビルデの後ろには何人もの人間がいて、皆ひどく疲れているようだった。


 「はは、この子中々勇気あるわね。まさか自分から拐われてくるとはね」


 後ろから金髪の少女が話しかけてくる。たしかビルデがぶつかった人だったと思う。

 「ん? 待て、どういうことだビルデ」


 自分から……拐われた? もしそれが本当なら俺は怒った方が良い気がする。


 「え、えっとすみません、フェイさんは今混乱していまして――」


 「あ、まさかあんたこの人に何も言わずに実行したの!? それはさすがに擁護ようごできないわよ!?」


 「……ふぅ。今はいい、ただ無事に宿に戻れた暁にはたっぷり話し合う必要があるな」  


 俺はなんとか文句を言いたい気持ちを抑えると、ビルデの肩をポンと叩く。するとみるみるうちにビルデの顔が真っ青になっていった。


 「ご、ごめんなさい! その、どうしても早くフェイさんを助けたくて……」


 「言い訳も後でだ。結局こうして助けられてるのも事実だからな。ただ一つだけ言っておく。本当に、本当に心配したんだからな!」


 俺は最後に思わず涙声になってしまった。ビルデはその声のせいか、もらい泣きをしてしまった。

 

 「ほ、本当に申し訳ございませんでした!」


 「その……なんかごめんなさい」


 どういうわけかフェイさんまで謝らせてしまった。俺は慌てて気にしないでくださいとだけコメントする。


 「とにかく、敵がこっちに来てる音がしてる。全力で返り討ちにするぞ!」


 「はい!」

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