第14話 勝手な潜入調査
「ようやく寝てくれましたね」
私、ビルデは今無理矢理マグリスさんを膝枕をして眠らせた。理由としてはこれからすることの邪魔になるからだ。
「手荒な真似をしてごめんなさい。でもこうしないときっとマグリスさんは私のことを止めるから」
私は寝ているマグリスさんに囁く。マグリスさんは一瞬動いたが、まだ目覚めてはいない。
私はもう既にアジトを発見できる方法を思いついている。だがそれはとても危険で、マグリスさんが許可してくれるようなものではない。
それはわざと私が拐われることだ。私には影泳がある。あれはスキルとしても特別だ、発動を防ぐ術はない。あれを使えば簡単に逃亡できる。
もちろんそれだけではない。私とマグリスさんは位置情報を共有している。それを利用すればアジトの位置は分かる。
後はマグリスさんがギルドへ通報するだけだ。そうなれば混乱に生じて捕まってる人達を私が解放できる。
「さて、それじゃ行ってきます」
私はマグリスさんをそっと膝から下ろすと、椅子から立ち上がる。
人々が行方不明になった場所は既に聞き込んでいる。場所は当然、人目につかない場所がほとんどだ。
私はその一つを選んで、無防備を装って歩いてみる。しかし、どういうわけか私が襲われることはなかった。
「……あれ?」
おかしいな。もしかしてバレちゃいました? いや、それはないですよね。
私は不思議に思いつつも別の場所に行く。恨んでいる人間の子供だ、狙わない手はないと思うのだが。
「うーん、どうしまむぐぅ!?」
私は突然口を塞がれ、壁に押し付けられる。私は必死に抵抗するも、全く歯が立たない。
他の人もこうやって拐われちゃったんですね……
そして私は手を後ろに回され、手錠をかけられる。足も同じように足錠をかけられ、私は逃げられなくされてしまった。
最後に私は口に布を噛ませられると、袋に詰められてどこかへ連れ去られた。
よし、後はフェイさんとやらに会えたら良いのですが……やっぱり怖いですね、この状況。
私は段々とマグリスさんから離れていくのを感じ、少し怖くなってきていた。何も見えず、動けないというのも私の不安を増幅させた。
*
何分か経ったあと、私は地面に降ろされ、袋から出された。私は辺りを見回すと、そこは前に見た牢屋のようだった。
しかし、前の牢屋とは違い牢屋の数が明らかに増えていた。ここはおそらく悪党の本拠地なのだろう。
牢屋の中はとても汚く、物も一つも置いていなかった。辺りには嫌な臭いが充満していて、鼻がおかしくなりそうだ。
「ん、んんん!」
突如、私の後ろからうめき声が聞こえてきた。私は後ろを振り返ると、そこには金髪の少女がいた。
この人、もしかしてフェイさん? いや、それ以前に……この人私がぶつかっちゃった人じゃないですか?
私は金髪の少女をまじまじと見つめる。ちょっと怖めの顔に、細く見えるが確実に鍛え上げられている手足。そして……私よりも圧倒的に大きい胸。間違いない、彼女だ。
私は見張りがこちらを見ていないのを確認すると、影泳を使用し拘束を解く。すると少女は目を丸くして私のことを見る。
「今、口の布を外しますが大きな声は出さないでください」
私は少女の耳元で囁く。少女は小さく頷いた。
私がそっと少女の布を外してあげると、少女はなにか言いたそうに口をパクパクさせた。
「あんた……前にあたしにぶつかってきた子だよね?」
「はい。えっと、フェイさんですか?」
私は少女の足の怪我を見ながら尋ねる。やはり偶然にも私がぶつかってしまった人がフェイさんだったらしい。
「そうよ。あんたなんであたしの名前を知ってるの?」
「私、あなたの救助クエストを受けたんです。それで今助けに来ました」
「助けに来たって……わざと捕まったっていうの? あんた中々肝が据わってるわね」
フェイさんは驚いたような呆れたような顔をする。
「さ、それでは脱出作戦開始です」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます