第13話 聞き込み調査
「……まじかよ。となるともう既に別の場所に連れてかれちまったかな」
俺は頭を抱える。会ったこともない人物だが、このまま行方知れずというのは気持ちの良いものではない。
「そのようですね。まあ今日はこの人達を助けられたことを誇りに思いましょう」
「そうだな」
*
俺達は悪党を倒したことでギルドから特別に賞金をもらった。もちろん嬉しかったのだが、俺はフェイという女性の行方のことが気にかかっていた。
「今マグリスさんの考えていることを当ててみましょうか?」
俺がうわの空なのに気づいたのだろう。ビルデがひょこっと俺の背後から現れ構ってきた。
「ズバリ! フェイさんのことが気になっていますね!」
「ああ、どうしてもな。それと悪党共の方も気になってる。今日は俺達が壊滅させたのは末端にすぎなかったのかもしれない」
もしそうだとしたら、俺達は間違いなく恨みを買っているだろう。一冒険者が組織に逆らったらどうなるか。想像もしたくない。
「どうでしょうかね。私としては早めにこの街から出ることも視野に入れた方がいい気もしますが」
「いやー、それは最終手段だな。とりあえず受けたクエストはこなす。逃亡はそれからにするよ」
俺は気分を落ち着かせるため紅茶を飲む。正直めちゃくちゃ怖いが、ここで見捨てたら俺は一生後悔する気がする。
「まあマグリスさんならそう言いますよね。それなら私も腹をくくります!」
「ありがとう。それじゃ、二人で頑張るか」
それから俺達は街の人々に聞き込み調査を行った。内容はもちろんフェイのことで、悪党の話ではない。
「あんまり情報集まりませんね……そもそも私達も顔を見たことがないのが原因でしょうが」
「そうだな。それに彼女はソロで活動しているのもあるだろうな」
聞き込みの結果分かったのは、フェイという人物が掃除屋として普段街の外で放置されているモンスターの死骸を片付けていることぐらいだった。
捕まえた悪党達は何も知らないの一点張りで、アジトを教えようとはしない。
「困りましたね。これじゃどうしようもありません」
「うーん、どうしたもんかな。やっぱり悪党自体の話を聞くしかないのか?」
俺は深くため息をつく。こういう人の多い場所は苦手だ、目が回る。
「……とりあえずその辺で休みながら考えましょう。マグリスさんもお疲れでしょうし」
「ああ、そうするか。よいしょっと」
俺は近くにあった椅子に倒れ込むように座る。少し体力を使いすぎた。
「大丈夫ですか? ちょっと顔こっちに近づけてください」
するとビルデが横に座り、俺の顔を両手で掴んできた。俺がなすがままに顔を近づけると、ビルデは彼女の膝に俺の頭を乗せた。
「ちょ、ちょっと待て! さすがにそれはここだと俺の尊厳が終わる!」
俺は悲鳴を上げて膝枕から逃れようとするが、ビルデは両手で俺の顔を押さえつける。
周りからの視線が痛い。特に女性陣の目はとんでもなく冷たく、俺はいたたまれなかった。
「ビ、ビルデ! 頼むからやめてくれー!」
「嫌です、しっかり休んでください」
「ビルデぇーー!?」
なんとビルデは俺の必死の懇願を聞き入れず、膝枕を続行した。俺はしばらくの間抵抗していたが、既に尊厳がなくなっていることに気づき絶望しながら膝枕を受け入れた。
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