第8話 街にて
長時間の移動も終わり、俺達は次の街ことアスタルテにやってきた。アスタルテは巨大な街で、かなり栄えていた。
「凄いですねここ! ほら見てください、巨大な建物がいくつもありますよ!」
ビルデは大はしゃぎをして街を駆け回る。俺はビルデを追いかけるのが大変でクタクタになっていた。
「そうだな。それはそうと、そろそろ休まないか? 長旅で疲れたろ」
「あー、そうですね! それじゃ宿屋に行きましょうか!」
そう言ってビルデは全速力で宿屋へと走っていく。俺は危ないぞと注意しながら後を追った。
「痛っ! ご、ごめんなさい!」
するとどうやらビルデと誰かがぶつかったらしく、ビルデは転倒してしまった。
「あっ! この子がすみません! お怪我はなかったですか?」
俺も追いついた瞬間相手に謝る。相手は金髪の少女のようで、こちらに振り返ってきた。
「大丈夫よ。そこのあんたも次から気をつけなさいね」
金髪の少女は優しく、ビルデのことを許してくれた。
「はい……」
ビルデは反省しているようで、金髪の少女に頭を下げた。
その後俺達は宿屋の個室に入り、夕食をとった。今回は俺が料理を作ったのだが、ビルデが楽しみにしてくれていたのでつい張り切ってしまった。
「はー、美味しかったです! 片付け手伝いますね!」
「喜んでくれたなら何よりだ。手伝いありがとな」
俺達は一緒に皿を片付けた後、交互に風呂に入った。そして風呂から出ると、俺達はベッドの上で話をした。
「マグリスさんってなんであそこで死にかけてたんですか?」
「あー、仲間に見捨てられちまってな。それでモンスターと戦ってたんだが一人じゃ敵わなかったんだよ」
「酷い人達ですね! 皆で逃げればいいじゃないですか!」
ビルデは頬を膨らませ、テーブルに手を叩きつけて怒る。その姿は可愛すぎて、俺は思わず笑ってしまった。
「ふふ、まあ今となってはどうでもいいことだ。あいつら今頃どうしてんだろうな」
俺は返答を求めない質問をする。あの様子だと大出世するか壊滅かのどっちかだろうな。
「マグリスさんの中で解決しているならいいです。それで、明日はどうするつもりですか?」
「明日はギルドに行ってモンスター討伐報酬を貰いに行く。後はクエストでもやって金稼ぎだな」
俺は地図を取り出しギルドの場所を指差す。この街のギルドはクエストが多い。ここなら生活費も楽に稼げるだろう。
「なるほど、分かりました! それじゃ一緒に寝ましょう!」
ビルデは明かりを消すと、俺のベッドに勢いよく潜り込んでくる。そして俺に抱きついて抱きまくら代わりにしてきた。
「うぎゃっ! 一緒に寝るのはいいけど力強い強い!」
ビルデが全力で抱きついてくるので、俺は悲鳴を上げる。明らかにこの年齢でも成人女性ぐらいの力がある。
「あ、ごめんなさい! もう少し緩めますね」
俺はビルデの締め付けから解放され、ため息をつく。まさか力もここまで強いとは。
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