第6話
数日後、結局俺達は二人で旅に出ていた。今の所順調だが、油断はできない。そういった油断が死に繋がる。
「モンスターは多いですが、いい景色ですね!」
「そうだな。普段なら街の人達がこの辺も狩ってくれてるんだが、今は多すぎて対処しきれてないみたいだ」
俺は周りのモンスターをハンマーで一掃する。この程度のモンスターならビルデの力を借りなくてもなんとかなる。
「おぉー。マグリスさん強いですね!
この調子でどんどん倒しましょう!」
「……目的が変わってるぞ」
俺ははしゃぐビルデを見て苦笑いをする。初めての旅で興奮しているのだろうか、声が大きくなっている。
俺達はできるだけモンスターとの接触を避けるために隠れながら移動していた。だがこのままではモンスターが集まって来てしまう。
「ビルデ、少し声を小さくしてくれないか? モンスターに見つかっちまう」
「あ、ごめんなさい……静かにしておきます」
ビルデはしょぼんとすると、黙ってしまった。俺は罪悪感に
「な、なあ。ビルデの持つスキルで潜伏系統のスキルってあるか? 俺持ってないんだよ」
「あります! しかも固有スキむぐっ!」
ビルデがまた大声を出したので、俺は慌ててビルデの口を手で塞ぐ。
だが、それはもう遅かった。ビルデの声を聞きつけたモンスターの群れがこっちに来ていた。
「あれは……レッドウルフか。ちょっとまずいな」
「ご、ごめんなさい! えっと、えっと……サンダー!」
ビルデがパニックになり呪文を唱えた瞬間、レッドウルフ達に強烈な雷が落ち、奴らは倒れた。
「サンダー! サンダー!」
ビルデは目を瞑りながら呪文を唱え続ける。レッドウルフ達は追い打ちをかけられキャインキャインと鳴いて逃げていった。
「サンダー! サ――」
「ビルデ、もう呪文を唱えるな! これ以上やると森が燃えちまう!」
俺はビルデを大急ぎで止める。まさか初級魔法でこんな威力の魔法を放つとは。悪魔の力は凄まじいな。
「あ、あれ? オオカミさん達は?」
「もうお前が全部倒したよ。助けてくれてありがとう」
ビルデは我に返ると、辺りを見回していた。力は凄まじいが、やっぱり彼女自身はまだまだ子供だ。
「いえ、元々私のせいですから……それで、私の固有スキルで潜伏系統ありますよ」
「おお、それは助かるな。早速使ってみてくれないか?」
「分かりました」
ビルデはそう言った瞬間、地面へと吸い込まれていった。俺はびっくりしてビルデのいた地面を漁るが、彼女はどこにもいなかった。
「これが私の固有スキル、影泳です。これを使えばこんなふうに物質に入り込むことができるんです」
ビルデは地面の中から出てくると、俺にスキルの説明をしてくれた。なるほど、そういうタイプのスキルだったのか。
「このスキルは本来私にしか使えませんが、契約しているマグリスさんなら使用可能です。足に力を込めれば使えますよ」
「分かった。うぉっ! 凄いなこれ。なんか不思議な気分だ」
俺はビルデに言われた通りに動くと、俺の視界が一気に下がった。感覚的には水に潜っているのと大差ないが、呼吸は問題なくできるし話もできる。
「よし、それじゃさっさと行きましょう! このスキルあんまり時間持たないんです」
ビルデに連れられ、俺は次の街へと向かっていく。どうやら影泳は速度も速いようで、次の街への道のりがだいぶ狭まった。
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