第4話 悪魔(天使)

 時が経ち、俺達は宿屋へとやって来た。俺もビルデもまだ旅の準備が整っていない。あと数日はここにいる必要がある。


 「ふう。なんかさっきまで元気だったのに急に疲れてきたな」


 「そりゃあ今までは私の力で無理矢理元気にしてただけですからね。力が切れたら元通りです」


 ビルデは力が抜けていく人の真似をする。俺はその余りの可愛さに思わず気持ち悪い笑顔になってしまった。


 「そういうわけで、早めに寝ちゃうことをお勧めします。身体の疲れを取るのは睡眠が一番ですから!」


 「そうだな、それじゃお休み」


 俺はビルデの言うことを素直に聞いて寝ることにした。


 めちゃくちゃ優しいなビルデ、悪魔どころか天使じゃん。前のパーティーは深夜戦闘は当たり前だったぞ。


 俺が目を覚ますと、既にビルデが朝食を用意してくれていた。


 「おはようございますマグリスさん! これ食べてください!」


 「お、おはよう。その……凄い嬉しいんだが、少しは休んだ方がいいと思うぞ?」


 正直とても助かるのは事実だが、それ以上にビルデが心配だ。彼女も餓死寸前だったのだ、疲れはまだ取れきっていないはず。


 「ふふ、心配ご無用です。私は見かけ以上にタフですから」


 「そうか、それならいいんだが。とりあえず飯は交代で作ろう、不平等だしな」


 ただでさえ魂を踏み倒しているのだ、これ以上彼女に負担をかけるのは俺の良心が許さない。


 「えー、別に大丈夫ですよ。でもマグリスさんの手料理も食べてみたいですしお願いします!」


 ビルデはそう言ってにっこりと微笑む。よかった、了承してくれた。


 俺は安心すると、ビルデの用意してくれたパンを食べる。口の中にふわっとした感触が広がり、美味しかった。


 「うん、美味い! 近くで買ってきてくれたのか?」


 「いえ、昨日の料理屋さんの奴を真似してみました。ちょっと不安でしたが成功して良かったです」


 「待て。料理屋さんの真似をしたってどういうことだ?」


 俺は目を丸くしてビルデの方を見る。まさか作業行程を全部見ていたのか!?


 「えっと、私にはいくつか固有スキルがあるんですよ。その一つの超解析を使用して原材料とかを調べたんです」


 「いや、それにしても凄すぎるなお前……」


 この子、悪魔の中でも結構強い方なんじゃないか? その割には餓死しかけてたが。


 「えへへ、それほどでも。それで、今日は何をする気ですか?」


 「今日はビルデの装備品とかを買うつもりだ。少ししたら出るぞ」

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