第6話 ループが終わって、今ハーレム


 翌日の9月2日。


 俺たち8人は再度例の喫茶店に集まっていた。


 この短い間に3回もここにきている。

 もう常連だな。


 だが、店側としては歓迎しづらい客だろう。


「来てしまったんですね……」


 ここに来た時、店主にため息をつかれながらそう言われた。


 客とはいえあんな修羅場を起こして迷惑をかけられたら、そういわれてもしょうがない。


 暴れたわけじゃないから出禁にはされてないことは、店にとっては幸か不幸か。


「すみません」


 俺はただ、謝るしかなかった。


 許してください。

 たぶん今回で最後ですから……!




 そして喫茶店には俺と俺の彼女の全員が集まった。


 ちなみに今日は9月2日でバリバリの平日。

 もちろん学校があったがさぼった。


 学校なんて行っている場合じゃない。


 というか今の状態で「学校に行きたいから集まるのは放課後でね!」などと言うほど図太い神経は俺にはない。


 学校をさぼって朝の9時。

 俺たちは集まり、みんなの結論を聞くことになった。


 全員と付き合い、ハーレム結成されるかどうか。

 その結論は――。

 



「じゃあ、全員がハーレムを許可すると言うことでいいわね」




 全員がハーレムを了承していた。


 マジか。

 え? マジか。


 あれ?

 ここって現代の日本だよね。

 ハイファンタジーの異世界じゃないよね。

 江戸時代の武士でもないよね。


 ハーレムオッケーとかなんで?



「確かに私以外の女性と交際することは納得しがたいですが、それでも京介くんのそばにいられないことに比べればずっとマシです」


 お嬢様の上村さんが言う。


「私も考えを改めたの。今はまだ佐々木君は私を愛しているわけじゃない以上、この場で恋人を決めるようせまるのはただのギャンブル。なら、形の上だけでも恋人になれる道を選べばいい」


 結野さんも上村さんに続いて同意する。


「他の皆も、同じ気持ちなのか」



「「「「「もちろん」」」」」



 その言葉でもって、俺が7人と付き合うことが決定した。




 話はこれで終わりではない。


 付き合うにあたってルールが必要だとことになった。


 普通の恋人ではない。

 7人と1人で付き合うのだ。


 特殊な関係であるため、なんらかのルールを作って互いに律していこう。


 そう決定した。


 そして話し合いの末、以下の五つのことが決められた。



・佐々木京介は全員を彼女とし、全員を愛する

・佐々木京介が別れを切り出すことはできない

・全員と週に一回はデートをする

・この関係性を誰にも言わない

・避妊する



 この五つを守らなきゃいけないらしい。


 少なくとも俺が高校生の内は絶対に守ること。


 うんまあ。

 他の四つはわかる。


 全員を彼女とするならば全員を愛するというのは理解できるし、俺が別れを切り出せないという文言も彼女たちの立場からすれば理解できる。


 俺たちの関係性は他人に受け入れられるものではないだろうから、4番目のこともわかる。


 でもじゃあ五番目はなに?


 これだけちょっと毛色違くない?


「えっと。この五番目は?」


「避妊をしなければ子供ができてしまうじゃないの。社会人になった後ならばともかく、学生の内からそんな無責任なことはできないわ」


 結野さんが、そんなこともわからないのとでもいいたげにはあとため息をつく。


「えっと、するの? そういうこと……」


「愛する、というからにはもちろん含まれているわね」


「高校生のうちは清い関係を目指した方がいいと思うな! うん!」


 俺はそう主張する。


 たしかに俺も男子高校生だ。

 そういうことに、興味がないと言ったら嘘になる。


 でもそれは普通の付き合いをしていることが前提だ。



 万が一、1人に手を出してもみろ。

 絶対に他の6人も自分と相手をしろと迫ってくる。


 7人から求められるとか、絶対に体がもたない。


 仮に1人と週に1回やるとしても、それが7人だ。

 彼女たちにとっては週1の出来事になるが、俺にとっては毎日のことになる。


 腹上死するよそんな生活。


 命の危険もあることだし、まだ少し清い関係を続けていきたいところだ。


「……まあ今はその認識でもいいわ。状況を整えれば、嫌でも私を求めることでしょうし」


 結野さんの不穏な発言は、今は訊かなかったことにしておこう。



 話が終わり、いよいよ帰ることになった。


 まったりここで仲良くおしゃべり、はできそうにもない。


 店主からの出ていけという無言の圧力もあることだし。



 そして帰り際、喫茶店の代金を払って外に出たら。


 篠原さんに、右手を握られた。


「え?」


 そのまま俺の右腕に両腕を絡ませる篠原さん。


「一緒に帰りましょう、京介」


 篠原さんが腕をぐいと引っ張る。


「せっかく恋人になったんだから、これぐらいはいいわよね」


「え、ああ。それはもちろん――」


 篠原さんに促されるがまま、ついて行こうとする。


 が、そうは問屋が卸さない。


「ちょっと待ってください。一緒に帰るのは私ですよ?」


 しかし、上村さんに肩に手を置かれて強制的に止められた。


「何を抜け駆けしようとしているのですか? 本当に油断も隙もないですね」


 上村さんは笑顔のまま、プレッシャーを与えてくる。


「いいですか。京介くんと一緒に帰るのは私です」



 どうやら彼女たちは俺と一緒に帰りたいと思っているようだ。


 そして、その気持ちは他の全員も同じだったようで、全員無言でプレッシャーを与えてくる。



 あれ、もしかして。

 ハーレムになっても修羅場はなくならないの……?



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