第7話 ハーレムになったら修羅場が無くなると思った?
Q:ハーレムになったら修羅場は無くなりますか?
A:無くなりません
今ここに、新たなトリビアが生まれた。
これで一生使わない無駄知識が増えたな。
とは言っても、他の人にとっては無駄だが俺にとってはそうじゃない。
よし、逃避するのはこれくらいにしてそろそろ現実と向き合うか。
「先に誘ったのは私じゃない! 遅れたのなら遠慮しなさい!」
「だからなんなんですか? 京介くんはまだ了承していませんでしたよね?」
「了承してたわよ! もちろんって言ってたじゃない!」
「まだ『もちろん』としか言ってなかったじゃないですか。『もちろんダメ』と続けるかもしれないですよ?」
「そんなわけないでしょ!」
「可能性はあります!」
言い争う篠原さんと上村さん。
互いに俺の腕をぎゅっと抱きしめながら、俺を挟んで言い争いを続けている。
両手に花だ。
と言えるほど、おめでたい頭はしていない。
仲良くしてくれよ!
これからみんなで、同時に付き合っていくんだぞ!
初日から言い争いをしないでくれ!
そしてもちろん、この現状で黙っていないのは二人だけではなくて……。
「おいお前ら、二人して抜け駆けなんていい度胸だよなぁ?」
低い声を出し、怒気をあらわにする元不良の加藤さん。
「てゆーかなんで二人だけで話進めてんの? それってちがくない? ウチらもささっちの彼女なんですケド?」
眉を顰めるギャルの青山さん。
「当然の如く佐々木君の腕を取っていることも問題ね。彼の腕を抱く権利があるのは、貴方たちだけではないのよ?」
冷静な顔をしているが、声色が冷たいクールな結野さん。
「というより二人とも、とりあえず腕を離したらどうかしら。佐々木君は貴方たちだけのものではないのよ?」
「「それはやだ」」
結野さんの言葉に、篠原さんと上村さんははっきりと否定を返す。
ダメだ。
このままだと、また昨日と同じ修羅場になる。
集まるたびに修羅場になっていては、俺の身が持たない。
いい加減どうにかしないといけない。
俺はもう、みんなの彼氏なんだから。
……みんなの彼氏って言葉、すごく複雑な気持ちになるが今は切り替えていこう。
「待ってくれ。とりあえず争いはやめよう。何もうまない」
何やらガンダムの主人公みたいなことを言い、俺の腕を抱く二人に離れてもらう。
「毎度毎度誰がデートをするかで揉めるわけにもいかないだろ。誰がデートをするのかあらかじめ決めておこう」
こういった抜け駆けや争いを避けるためにも、ルールを作る必要がある。
「じゃあ、曜日で分けるというのはどうかしら?」
結野さんの提案で、誰がデートをするのか曜日で決定するというアイデアが出された。
悪くない案だと思う。
週に一回はデートをする以上、曜日で分けた方が効率的だ。
ちょうど7人いるからね。
曜日で分ければ余りもなく平等にできる。
反対意見はなく、全員が一応は曜日で分けることを了承した。
くじ引き(スマホのアプリのくじ引き)の結果、以下ように決定した。
月曜日:上村さん
火曜日:結野さん
水曜日:青山さん
木曜日:加藤さん
金曜日:篠原さん
土曜日:星川さん
日曜日:吉井さん
基本的には曜日の通りにして、ある程度時間が経って不都合があればデートの曜日を変更させる。
また仕事や用事でデートができないときは、相談して曜日を変更させること。
デートをしている二人の邪魔をしないこと。
全員でそのようにルールを設定した。
ちなみに、今日は水曜日だ。
そのため俺は青山さんとデートをすることに決まった。
「くじの結果には従うわ」
「ここで揉めても、自分のときに横やり入れられる可能性がありますからね」
篠原さんと上村さんも同意し、大人しく青山さんに譲ってくれることになった。
俺と青山さんはこれからデートだ。
他の皆は学校に行くか、家に戻るか。
……俺も学校に行かなきゃいけないとは思うのだが、
「それじゃー、ささっち! デート行こっか!」
しかしデートできると心底嬉しそうにしている青山さんを放って学校には行けない。
満面の笑顔だ。
この笑顔は裏切らない。
ていうかやっぱり青山さんってめっちゃ可愛いな。
もう学校とかいいか。
数日程度さぼっても、そこまで影響はないだろ。
よし。
ここはさぼって、デートにしようか。
「ささっちの手、いただき」
俺が手を差し出すと、青山さんは先ほど篠原さんがしたようにぎゅっと俺の右手を握る。
7人の女子と同時に付き合って以降、最初のデートが始まった。
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