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男の名は、ロナルドと言った。
ロナルドは、ある日突然、全身傷だらけの状態でゴーツウッド村に迷い込んできた。
村の外れにある森の入口で彼が倒れているのを村人が発見し、村唯一の医師である私たちのもとに担ぎ込まれてきたのが、彼との出会いだった。
私とシアによる懸命な治療のおかげで、彼は何とか一命を取り留めることができた。
しかし、彼の負っていた傷は想像以上に深く、傷が完治した後も、彼はその後遺症に苦しむこととなった。
痛みに悶える彼を哀れに思ったシアは、シャンの力を行使して、彼に癒しの記憶を与えようとした。
それがいけなかった。
訪問診療から帰宅した私が目にしたのは、首を切られて血を流しながら倒れている子供たちと、ナイフを片手に血まみれで倒れているシアの姿だった。
ロナルドの正体は、イギリス政府から指名手配されている連続殺人鬼だった。
彼が生まれながらに持っていた生粋の殺意は、シャンを通して、シアたちが代々受け継いできた平和を愛する心を、一瞬のうちに黒く染め上げた。
一度、黒の絵具が混ざった白の絵具の色は、最早、白とは言えないように。
彼女の心は、どす黒い殺意の感情に支配されていた。
目覚めた彼女は、私を見るや否や、持っていたナイフで私の首を掻っ切ろうとしてきた。
そこに、私の知るシアはいなかった。
私は彼女の振るったナイフを躱すと、すぐに玄関へ向かって走り出した。
そして、外へ飛び出した私は、惨憺たる光景を目撃する。
互いに嬲り、殺し合い、そして、その快楽に身をよじらせる村人たち。
そこには大人も子供も関係なく、皆、凶器を手に殺し合いをしている。
それは、この世の地獄だった。
殺人鬼の悪意は、すでにシャンを通じて村人全員に伝染していたのだ。
私は奇声を上げる人々を横目に、一目散に村の外へと逃げ走った。
そこから先のことは、あまり覚えてない。
次に目が覚めたとき、私はブリチェスター大学病院のベッドの上で横たわっていた。
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