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 ある日突然、彼女は私に見せたいものがあると言って、彼女の実家の地下室へと私を連れて行った。

 そこで私が目にしたのは、あのシャンの女王であった。

「今まで黙っていてごめんなさい。私の家は代々魔術師の家系なの」

 彼女は私にそう伝えると、指先に止めた一匹の小さなシャンを介して、彼女の記憶の一部を私に共有してくれた。

 シアは、本名をシア・R・キャンベルと言い、ゴーツウッド村を影から統治するキャンベル一族の末裔であった。

 かつてのゴーツウッド村は、他の村々と変わらない平和な農村だったのだが、中世のある時期を境に、黒山羊病に悩まされ始めた。

 魔女狩りが流行していた当時、黒山羊病を恐れた周囲の村の人々は、それを魔女の仕業だと思い込み、ゴーツウッド村を魔女に支配された村として迫害するようになった。

 当然、無実の罪を被らされたゴーツウッド村の人々も彼らに反発する。

 両者の関係は、最早、一触即発のところまで迫っていた。

 その対立をシャンの力を使って、平和に収めようとしたのがキャンベル一家であった。

 キャンベル家は、代々シャンを使役する術を受け継いできた魔術師の一族であった。

 当時のキャンベル家当主であったジョン・R・キャンベルは、彼の持つ平和を愛する心をシャンを通して人々へと共有することにより、ゴーツウッド村と近隣の村々との争いを、血を流さず収めることに成功する。

 それ以来、キャンベル家はゴーツウッド村を影から守護する者として、この村に定住することとなった。

 そして、今でもたまに、その平和を愛する心をゴーツウッド村の人々に共有し、村内で起こる争いを未然に防いでいたのだ。

 私はその記憶を見せられて驚いた……のだが、それよりも彼女の、そして彼女の一族が代々継承してきた隣人愛の精神に深く感動していた。

 私はそのとき、自らの生涯を彼女へ、そして彼女が愛するこの村の住人たちへ捧げることを心のなかで誓った。

 翌年、私は彼女へプロポーズし、彼女もまた私の想いに笑顔で応えてくれた。

 それから間もなくして、私たちは二人の子宝を授かり、仲睦まじく平和に過ごしていた。

 あの男がゴーツウッドへやってくる、あの時までは。

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