45

「あはははは、僕ならここにいるぞ! この、うすのろの虫けらどもめ!」

 私が目指す方角とは反対の方向から、遊間の罵声が聞こえてきたかと思うと、数秒後、大きな爆発音が病院内に鳴り響いた。

 私は遊間の身の安全を祈りつつ、シャンの女王の捜索を続けた。

 ――シャンの女王を隷属させるには、それなりの魔力量が必要になるはずだ。とくに、シャンの行動が活発化する夜に女王の傍を離れるのは、術者にとっても危険な行為だ。

 虚数空間から出てきた直後に、遊間が言っていたことを思い出す。

 ――ゆえに、シャンの女王は、必ずあの診察室の近くに隠されているはずだ。

 遊間に託された地図を眺めながら、私は考える。

 遊間によると、シャンの女王は全長二メートルから三メートルにも及ぶらしい。

 それほどの大きさの怪物を隠しておくには、それなりの広さの空間が必要なはずだ。

 そして、患者や看護師からは気付かれることがなく、八木山医師がいても不自然にはならないところ。

 それは……。

 私は、診察室のすぐ裏に当直医用の宿直室があることに、そして、その部屋の真下に不自然なほど広い空間が存在していることに気付いた。

 シャンの女王を隠しているとしたら、ここだ。

 私は、宿直室を目指して全力で走りだした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る