28
彼女からあの知らせを受けたとき、私はこの甘美な火遊びにも終わりが近づいていることを悟った。
しかし、どういった偶然だろうか。
底意地の悪い神が、私にこの歪なカタチの
それとも、背徳の香りにつられてきた悪魔が、私を沼底へと引きずり込もうとしているのか。
いずれにせよ、私の悪運とやらもまだ尽きてはいないようだ。
艶のある長い黒髪に、色白できめ細やかな肌。
すーっと通った鼻筋に、睫毛の多い切れ長の目。
出るところは出ていて、引っ込むところは引っ込んでいる、程よい肉付きの身体。
すべてが、伝え聞いていた情報に一致している。
そして、極め付きは車のナンバー。
間違いない。彼女だ。
まさか彼女が、こんなにも身近にいた人間とは。
しかも、罰を与えるに相応しい、蠱惑的な美貌を兼ね備えた逸材だ。
私は仕事を抜け出し、気付かれぬよう後を追った。
数分ほど車を走らせると、彼女は乗っていた車をパーキングエリアに駐車し、近くにあった古い木造のアパートへと入っていった。
部屋番号を確認し、ひとまず職場へと戻る。
なに、一日そこらの猶予があったところで、私の元にたどり着くことなど、そうそうできまい。
それよりも、アレを朝まで「お預け」とは、何とももどかしい。
私は、外へ出て荒くなった呼吸をゆっくりと整える。
想像のなかで、細くすらっと伸びた彼女の首を、両手で思い切り締め付ける。
そのとき、彼女はどんな表情を見せてくれるだろうか。
どんな
ああ、もう昂りが抑えられない。
彼女の
あと少し。あと数時間だけの我慢だ。
朝になれば、この昂りも、怒りも、憎悪も。すべてを解放して、楽になれる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます