その後②

「んん...」



朝、俺は眠い体を起こしながらも体を起こそうとする。

しかし、何かに掴まれ体が起こしにくい。

何かと思いそこを見ると、愛梨沙が俺の服の裾を掴んでいた。

俺の服の裾を掴みながらベッドに眠る愛梨沙は本当に天使そのものだった。

俺は思わずその綺麗な青い髪を撫でる。


「んっ...ふぁぁ..」


「おはよう愛梨沙」


「んむぅ..おはよ...ゆうくん...」


髪を撫でていると、愛梨沙が起きた。


「あ、そうだ、今日はせっかくの休みだしデートに行かない?」


「いいよ、どこ行こうか?」


「んーっとねー...どこしよう?」


咄嗟には思いつかなかったらしい。

愛梨沙は顎に手を添えながら考えている。


「じゃあ俺に着いてきてくれるか?」


「うん!わかった!」


悩んでいてもしょうがないので、俺が思い浮かぶ場所に行ってみることにした。




「どこまで行くの?もしかしてホテルじゃないよね〜?」


「ちがうわ!」


それが言いたかっただけだろ。

愛梨沙はまだ家を出て1分も経ってないうちに、そんなことを言い出す。


「ここだよ」


俺たちが来たのは近くのショッピングモールだ。


「ここで良さそうな所を回ろうか」


「うん!行こ行こ!」


愛梨沙は俺の腕に抱きつき、俺の隣に並ぶ。

しかし気のせいか?なぜか胸がやたら俺の腕に当たる。

そう思い愛梨沙の方を見るが、愛梨沙はキョトンとした顔で俺を見るだけだった。


「ま、まあとりあえずどこから行く?」


「あ!私、服みたい!」


「わかった、じゃあ行こうか」


「うん!」


俺たちは最初に服屋に行くことにした。

歩いている最中、やたら周りから視線を感じる。主に男からのものだ。

おそらく愛梨沙の可愛い容姿に目を惹かれているのだろう。

まあ愛梨沙は俺以外とは話さないので安心ではある。


「ゆうくん、似合うかな?」


少し歩いて、俺たちは服屋の中で愛梨沙に似合う服を選んでいた。


「うん、可愛いよ」


愛梨沙は今、白のワンピースに身を包んでいる。

肩を出し、少し胸元も見えるその服に身を包んだ愛梨沙は本当に天使である。


「えへへ、じゃあこれ買っちゃおうかな」


「じゃあ俺が出すよ」


「いいよ別に!買ってもらうのは悪いし」


「いやここは彼氏が出すのが筋だろ?」


「大丈夫だよ、ゆうくんは私の中に出すだけでいいんだから!」


「...」


...どうしてそんなことを言ったんだ。

幸い店内にはあまり人がいなかったが、俺が気まずい。


「じゃあ買ってくるね」


「...どうぞ」




「次はどこ行く?」


「うーん、次はゆうくんが行きたいところ行こ?」


「俺かぁ...そうだな」


俺はふと辺りを見渡すとカフェを見つけた。


「あそこでちょっと休まない?」


「カフェ?じゃあ入ってみよっか」


俺たちはカフェに入っていく。


「じゃあこれで、愛梨沙は?」


俺は自分の注文を済ませて、愛梨沙に聞く。

しかし、愛梨沙は何も言わず1つの飲み物を指で指すだけだった。


「えっと...このやつで」


(愛梨沙って人見知りするっけ?)


俺たちは飲み物をもらい、席に着く。


「さっきはどうしたんだ?」


俺は気になったので聞いてみると、愛梨沙は少しむっとした表情で俺を見る。

そんなにまずいことだったか?


「ゆうくん、約束覚えてる?」


「約束?俺が女の人と話さないやつ?」


「そうそれ!その約束で私も男の人と話さないって決めたよね?」


「ああ、そうだったけどそれが...」


俺ははっとしてさっきの店員を見ると、案の定その店員は男だった。


(愛梨沙はホント徹底してるな)


まあそっちの方が色々と安心するが、1人で買い物に行く時などは、少し心配である。


「ね、そっちのやつ美味しい?」


愛梨沙は俺の飲んでるものが気になったのか、聞いてくる。


「私のとちょっと交換しよ?」


「ああ、いいけど」


これは...いわゆる間接キスというやつでは?

まあキス以上のことをしたことがあるのだからそんな気にすることでもないが、それでも意識はしてしまう。

先ほどまで愛梨沙が口をつけていたストロー…俺は少し飲んでみる。

うん、美味しい


「もお、ゆうくんってばそんなに恥ずかしそうにしなくてもいいじゃん!」


愛梨沙は少しおかしそうに笑っている。

そんな恥ずかしそうにしてたのだろうか。


「今更間接キスくらいでどうしたの?だって私たちはもうとっくに...」


「そ、それ以上は言わなくていいよ!!」


「ふふ、冗談だって!でも赤い顔してるゆうくん可愛いね!」


「っ〜⁉︎」


本当に愛梨沙と話しているとドキドキが止まらない。

俺たちはカフェを出た。


「ご、ごめん、少しトイレに」


「うん、いってらっしゃい!」


少し尿意が催してきたので、俺はさっさと済ませようと小走りでトイレに向かった。

しかし、これが間違いだった。




俺がトイレから戻ると


「なぁ、なんか反応してくれよ〜」


「可愛い顔してクールだね〜」


「...」


なんと愛梨沙がチャラそうな男数人に絡まれていた。

まあ愛梨沙は本当に可愛いので仕方ないが、少しでも目を離した俺が馬鹿だった。

まあ愛梨沙の方は一切その人たちと喋る気は無さそうだが、そいつらも全く引こうとしない。

これは仕方ないか...


「あの、俺の連れに何か用でも?」


「あ!ゆうくん!」


俺が愛梨沙たちの前に行くと、真っ先に愛梨沙が俺に抱きついてくる。

愛梨沙は怖かったのか、少し震えているのが感じられた。


「ん?お前、その子の連れ?釣り合ってねーじゃん、ウケるんだけど」


そいつらは面白くなさそうにそんなことを吐く。


「行こうか」


「うん!」


あまり面倒ごとは起こしたくない。

俺は愛梨沙を抱き寄せてさっさとそこを去ろうとする。


「おい、何無視してんだ!」


流石に気に食わなかったらしくその男が俺の肩を掴んでくる。


「おい君!何してるんだ!」


だが、そんな光景を警備員が見逃すはずもなく、そいつらを連れて行ってくれた。


「愛梨沙、大丈夫?」


「うん!ゆうくんが来てくれたから!」


愛梨沙は安心した笑顔で俺に微笑んでくる。


「...釣り合わないか」


「ゆ、ゆうくん?」


「帰ろう愛梨沙」


「う、うん...?」




俺は帰るとすぐに愛梨沙を抱きしめる。


「愛梨沙、絶対に手放さない..」


「もぉ...どうしたのゆうくん?さっきから様子が変だよ?」


「愛梨沙、愛してる」


「わ、私もだよ?ゆ、ゆうくん、ちょっと力強いよ?」


さっきあの男が言った釣り合ってない、という言葉が、まだ俺の中に残っていた。


「愛梨沙、俺たちってやっぱり釣り合ってないかな?」


愛梨沙は俺と違って信じられないくらいモテる。

俺とは全然違う世界の人間だ。


「ふふ、なんだそんなこと?」


愛梨沙は軽く微笑んだかと思うと、今度は俺の頭を胸に抱えて、安心させるように頭をポンポンと叩いてくる。


「大丈夫だよ、だって私がゆうくんを好きだもん、釣り合わなかったら好きになってないよ?」


「そっか...」


「たとえみんながゆうくんの敵になっても私だけは味方でいるからね?」


「そっか、ありがとな、愛梨沙」


俺は気持ちに整理がついて、深呼吸をする。


「ふふ、ゆうくん、私のこと好き?」


「うん、大好き」


「そっか、じゃあ今日もする?」


「...したい」


「素直なゆうくんも大好きだよ〜!じゃあ、おいで」


愛梨沙はベッドに寝転んで俺を呼ぶ。

俺はそんな愛梨沙に抱きつき、今の俺たちの世界には他の人間が存在しないほどに、お互いを夢中で愛し合った。

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