第5話:親の反対 ②

その後、愛優が写真週刊誌に竜典との恋愛と妊娠に関する記事が載ったことで3ヶ月間の謹慎と掲載されていたポスターの店頭掲載が一時見合わせ、彼女がやっていたアパレルメーカーのコマーシャルの放映休止と次々に仕事が無くなっていった。


 この状況で親権問題が泥沼化し、所得などの年収においては愛優の方が高く、養育権を持てる条件が整っていたが、当時はシングルマザーになってモデル業を断念したくなかった彼女は最終的に子供たちの親権を放棄し、優依と芽依の養育費を請求しない代わりに月2回の面会と連絡を取り合うことを認めて欲しいという話になった。


 最終的にはこれらの条件を双方が合意し、親権を獲得したが、彼は実家で“2人を責任持って育てられないなら勘当する”と両親から伝えられたことで、子供2人を1人で養うことに自信がなくなってしまった。


 しかも、彼にはこの頃同じ大学に通う高校からの同級生である麻友美と中学校から同級生の優美に“子育て自信ないから教えて”などと相談をしていたが、2人とも彼氏はいたが、子供はおろか結婚もしてない2人だったことから「相談には乗れると思うけど、私たちからそういう話を聞いてどうするつもり?」と彼女たちは内心思っていた。


 そんなときだった。


 ある日、大学の合同コンパに由希子というすらっとした女子学生に出会った。


 由希子は地方出身で大学入学と同時に都市部に出てきた21歳で彼より2歳年上というが第1印象は年齢以上の落ち着きのある女性だと感じていた。


 そして、コンパが始まり、いろいろな学生と話しているときに横に由希子が座ってきて「ちょっと話があって・・・良いかな?」と言われて彼女と共にコンパをやっている個室から廊下に出て2人きりになると、彼女が「実は妹との関係に悩んでいて、相談に乗ってほしい」というのだ。


 話を聞いてみると妹さんは高校1年生で地元の高校に通っているが、中学校に上がった頃から姉妹喧嘩が増えていき、姉である由希子が上京した今はメッセージを送っても返ってこない、電話をしても着信拒否とかなり関係性が悪化していることが分かった。


 そこで、彼女に妹さんの事を詳しく聞いていくとある答えで竜典が引っかかった。


 それは、「私と妹は10年ほど前に弟が出来てから私が弟を可愛がるようになって、今も弟は妹よりも私に欲しいものをねだってくることや『○○に行きたいから連れて行って』と連絡が来ることもしばしばで、妹は『自分が相手にされないのはお姉ちゃんのせいだ』と言って口を利いてくれなくなったの」というのだ。


 この時、竜典は「一緒に家に遊びに行っても良いですか?」と言ったのだった。


 この質問に由希子は泣きながら首を縦に振って、遊びに行く日を約束していた。


 そして、遊びに行く当日のことだった。


 彼の住んでいるアパートから一歩出ると、休日という事もあり、たくさんの人がアパートの前を通って駅の方面に向かっていた。


 すると、彼のPHSが鳴って、電話に出ると電話の向こうで「もしもし、竜典君?由希子です」と由希子からの連絡だった。


 そして、「今日10:00に駅前ですよね?」と集合時間を聞くと、由希子は「ごめん、竜典君。今日は遊びに実家に行けなくなった」というのだ。


 彼は何かワケありの事情があると思い、「分かりました。また、遊びましょう」と言って電話を終え、人混みを人が少ない方に歩き始めた。


 実は、今日は遠出することになっていたため、優依と芽依を同級生の麻友美と由美に頼んでいたが、わずか3時間でお迎えに行くことになるのは心苦しいと思っていた。


 そして、由希子から改めて連絡をもらい、由希子のアパートの最寄り駅まで行き、そこから由希子の車で地元に向かっていた。


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