第3話:二人の出会い ②

その理由として友香には心菜と健心の異父姉妹として以前交際していた友倉隆人との間に小学3年生になる娘・優菜と幼稚園の年長の娘・桃菜がいる。


 しかし、当時は学生だったこともあり、実家に3人で暮らしていたが、友香が就職する事になり、勤務地の関係で引っ越すことになったが、優菜は小学校に入学するタイミングだったこともあり、優菜が小学校を卒業するまでは2人は実家に留まり、2人とは週末に会うことにしていた。


 その後、母親の再婚を知った2人は母親と会おうとするが、桃菜は幼かったこともあり、母親の顔をあまり覚えていなかった。


 そして、母親に会ったときに異父姉妹の心菜が生まれていたことで母親に対して反抗心が生まれてしまうなど関係がギクシャクし、今でも娘たちとは関係が戻っていない。


 そのため、竜典に会わせようと思っても子供たちが新しい父親に対して拒否反応を示すことや「私たちの本当のお父さんに会ってからなら、新しいお父さんと会ってもいい」など子供たちの中で父親の存在が曖昧になっていることや友香がきちんと子どもに対して父親の事を話していなかったことが要因だった。


 一方の竜典もある事情を抱えていた。


 それは、竜典はまだ20代だが、敬以外に以前付き合っていた紺野愛優という女優さんとの間に小学1年生の双子の娘・優依と芽依、3年前に児童養護施設から迎え入れた中学1年生の琴子と小学5年生の賢史がいた。


 しかし、双子の娘の親権は彼が持っているが、琴子と賢史は前妻の恭子が申請をして家に迎え入れたため、彼女が親権を持っていて、2人と共に生活するには恭子の収入を上回り、扶養可能と判断されるか、恭子が親権を放棄し、竜典に親権を移行させる必要があり、いずれも却下された場合には最短で2人が20歳になった時に“認知”という形を取るしかないのだ。


 現時点で竜典が5人の子どもを扶養するためには最低でも年収1000万円を超えないといけないが、彼の年収は500万程度だったため、家庭裁判所も敬以外の4人の扶養を認めるという判断は難しいと結論づけた。


 ただ、彼にとっては諦めたくなかったのは2週間前に2人に会ったときに賢史は“週末にお母さんが家に帰ってこない”、琴子は“私が良い成績を取らないと賢史と正座させられて罵声を浴びせられる”など恭子からの虐待を告白されたことで父親として2人の親権を取り戻し、5人で生活をすることが出来るように手続きを進めたかった。


 これは友香と会うときにも相談したが、今の法律ではかなり難しい問題であり、相手が虐待をしているという証拠を立証できないと強制保護も親権剥奪も難しいというのだ。


 その後、何とかして2人を自分の元に戻してもらおうと関係各所に働きかけたが、経済的な理由により児童養護施設で強制保護されることになったが、親権は共同親権という判断をされた。


 2人の出会いは運命的だったが、2人のこれまでの家庭事情や親権問題などを聞いていると次第に2人の恋愛に対して黄色信号になってしまう要因にならないか心配だった。


 それから2週間後、友香とのデートの時に竜典が優依と芽依を連れて来た。


 友香は敬とは会ったことがあったが、2人を見たときにびっくりした。


 なぜなら、2人とも小学1年生とは思えないほど落ち着いていて、今は敬たちと同じ部屋で暮らしているというが、いつも会うのが平日の夜や休日のお昼だったこともあり、2人とはすれ違ってばかりだった。


 この日は休日だったが、娘2人はこのあと友人の家に遊びに行き、そのまま塾に行くという事で彼が2人を説得して少しだけ会ってもらうように話して、連れてきたのだ。


 それから竜典と友香はそれぞれの会社が繁忙期に入ったため、なかなか会えない日々が続いていた。


 その中でも2人は休日出勤の合間などに連絡を取り合うなど忙しい中でも愛を育んでいた。

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