第2話:二人の出会い ①

竜典と友香が出会ったのはお互いが20代の頃だった。


 当時、竜典は離婚したばかりのバツイチ、友香もシングルマザーとして生活をしていた。


 そんな2人を引き合わせたのは当時、竜典の会社で総務課の課長をしていた木本さんだった。


 木本さんは当時、総務課と人材育成課(現在の社員研修課)を兼務していた課長補佐で、社内では“恋愛請負人”と言われていたほど彼の引き合わせたカップルの結婚率型かかったことは言うまでもない。


 ただ、竜典は当時2歳の息子・敬と暮らしていたことや離婚理由が前妻の浮気と敬に対する虐待だったことから再婚に対して後ろ向きの考えをもっていた。


 一方の友香も2歳の娘・心菜と0歳の息子・健心(けんしん)と3人で暮らしており、彼女もまた元夫からのDVと父親の心菜に対するネグレクトが原因で2年前に離婚していた。


 その後、別の男性と交際して健心が生まれたが、すれ違いが原因で破局し、子供2人のシングルマザーになった。


 彼女も当時は再婚を考えていなかったが、親戚などから「結婚できないのはあんたのせい」や「子供たちの事を考えない母親なら子供たちを養子に出して、あなたが独り身になった方が良い」など心ない言葉をかけられる事が多く、彼女も何とか首の皮一枚で会社に勤務していた。


 そんなときに出会った2人は今までとは違った印象をお互いに持っていて、年齢も3歳しか離れていなかったことを考えると“結婚することも選択肢として視野に入れて交際してみる”という決断もしやすい状況になっていた。


 ただ、当時二人が住んでいたアパートは家賃4万円の新築のアパートで、竜典の部屋は3階、友香の部屋は2階と階が違っていることや部屋が1Kの7畳だったため、5人がお互いの部屋を行き来して、一緒に寝起きするにはかなり狭かった。


 数日後、実際に竜典と友香は終業後に会社の近くにあるレストランでサイドメニューとドリンクで話をして、子供たちの迎えに行く時間になるとそれぞれが子供たちの待つ保育園へと迎えに行った。


 この日は少し前から雨がみぞれに変わって降っていて、かなり寒い夜だったこともあり、すれ違う人みんなが震えていた記憶がある。


 そして、友香は子供たちを迎えに行って、家に帰ると部屋の鍵が開いていた。


 不審に思った彼女はゆっくりドアを開けると「あら!おかえり!」と言って、母親が出てきた。彼女は安心したのか、「もーやめてよ!」と言って腰を抜かしてしまった。一方の子供たちは「ばあばだ!」と言って母親に駆け寄っていったが、以前にも同じアパートの別の部屋でその部屋に住んでいる大学生の女の子が特殊工具でドアをピッキングされて、彼女のストーカーをしていた男子学生に入られてケガをした事件があったばかりだったこともあり、子供たちはそういう事を知らないからだろうか、何の躊躇もなく行ってしまった事から心配もあった。


 それから2ヶ月後、お互いの家族でテーマパークに遊びに行った時も人の多さで敬と心菜が最初は楽しそうに過ごしていたが、次第に父親と母親から離れなくなるなどびっくりしている様子もあった。


 その後、敬が心菜の家に遊びに行くことや竜典と友香で出かけるときには一緒に出かけるなど二人が良好な関係を築いていくことに対して子供たちは次第に恐怖心が軽減されていき、少し前まで自分の親だけしか心を開かなかった子供たちが竜典や友香などにも心を開き始めたことで、子供たちの理解も進んだと判断していた。


 ただ、竜典も友香も前妻・前夫から養育費をもらっていることもあり、結婚するためにはこの部分がネックになっていた。


 そして、交流が始まってから1年後、二人は正式に次のステップに進むことになったが、まだ不安なことは多かった。

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