空と笑ってごらん
NOTTI
第1話:温かい家庭
2022年春、ある家庭では慌ただしい朝を迎えていた。
この日は長男・敬と長女・心菜が新社会人として1歩を踏み出す日なのだが、敬が寝坊したため、朝から慌ただしくなってしまったのだ。
少しすると他のきょうだいも起きてきて、みんなで2人を送り出そうとしていた。
そうこうしているうちに2人が家を出る時間になり、2人は慌ただしくそれぞれの会社に向けて家を出て行った。
その後ろ姿を見ていた両親は二人の成長を肌で感じられて、今までの出来事を思い出していた。
そして、他のきょうだいも朝食を済ませ、それぞれの部屋に戻っていった。
数時間後、来年から中学生になる3人と小学生になる2人と共に制服の受け取りと必要な学用品の購入のために外出した。
父親の竜典は今年度からテレワーク中心の部署に異動になったため、今日は午前中にオンラインで実施された年度初めの社内式典に参加し、そこで社長が「今年度から新たな部署も増えたことで多くの社員に活躍してもらえる環境を整備してほしい」と新しく新設された3の部署、10の課の社員に対して今後の会社改革の1つの柱として先頭に立っていろいろな事をやっていって欲しいと話した。
彼は今年度から業務推進部デジタル業務推進課長に着任した。今回、彼の元で働くことになった30名の社員に向けてもスピーチをした。
母親の友香は父親と同業他社に勤務しているが、現在はテレワークと出勤が半分ずつとなっていて、彼女は今年度の異動などはなく、今日から1週間程度はテレワークシフトになっていたため、上司に連絡をして、半休を取っていた。
制服を受け取りに行く道中の車内は以前とは比べものにならないほど明るく、目的地に着いてもお互いにコミュニケーションを取れるまでになっていた。
そして、家に帰る道中、みんなでファストフードを買って、おやつとして家に帰って食べることにした。
その日の夜は新社会人になった2人の入社祝いをするためにお寿司やオードブルなど豪勢な料理が並ぶことになっていた。
ただ、帰宅予定時刻になって、娘は帰ってきたが、息子が帰ってこなかった。
不審に思った父親は彼のスマホに連絡をした。
すると、「今同期で軽食を食べているから、もう少しで帰る」と言って、電話を終えた。
1時間後、息子も帰ってきてみんなでそろってお祝いが始まった。
2週間前、2人が大学を卒業してそのまま一人暮らしをしていた部屋は残してあるが、今後、転勤や社内異動などによりこれらの家がいらなくなることもある。
ただ、両親としては不安なこともあった。
息子の会社は海外出張なども多く、家を空ける日が多いため、空き巣や強盗などに入られないか心配になっていた。
また、娘の会社は国内出張があり、出張の内容によっては1週間家を空けることもあったため、たまに高校生の娘に使わせることも考えていた。
今は昔の辛い記憶などをみじんも感じさせないほど温かい家庭になっているが、ここまでにするのも一筋縄ではいかなかった。
ただ、これまでの事があったからこそ、お互いの絆が強くなり、ここまで素敵な家庭を築けたことは言うまでもない。
“これからも温かい家庭が続いていきますように。”
両親は心の中でそう願っていた。
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