KAC2022 振り返り(後編)
前回の続きです。
⑦出会いと別れ
空虚に時は流れて
https://kakuyomu.jp/works/16816927861724225833
このタイプも初挑戦です。泥臭い過去を振り返る、みたいなのがとても好きなので書けてよかったなと思います。
出会いと別れって表裏一体だよなぁということで二重構造です。つまり、主人公ユノの、武器ヌルとの出会いと別れの話であり、ソウジュとの別れと出会いの話でもありました。
武具商であり自身も強い武人であったソウジュにとって、ユノを生かすために武器を持たせることは最適解でした。
だけど自分と同じ道を歩ませたくないという気持ちもあって、だからこそこのまま一緒にはいられないと思ったのかなと。結局別れを経験したあとのユノはあまり成長しませんでしたし、単純に出会ったり別れたりすればいいわけではないのですよね。
……ソウジュ、中途半端なことを。それは悪手だよ! ユノをもっとよく見てあげて! って作者は叫んでおります。
出会いと別れを選択するということ。書いてて難しいなと感じました。
武器ヌルはそのままNULLより(作中では遠い国の言葉という設定)。
彼女の時はなにもないまま流れている、そして、なにもなくとも時は流れる、という二つの意味を込めたタイトルでした。
⑧私だけのヒーロー
点と点を繋ぐには
https://kakuyomu.jp/works/16816927861803808301
ヒーローを決めなくてはいけないという世界設定やオチはぱっと出てきたものの、四千字という文字数制限でどうやって伝えるか非常に苦労しました。結果ほわっとした感じになってしまって悔しいですね。
守る人はなにも男性に限る必要はないし、親が子を守るとも限らない。だけどちゃんと守ってくれる人はいるし、強い人も時には守られる存在になる――というようなことを書きたかったのですが、全部ふわっふわっとしてしまいました。難しかった。
一方で世界のルールとか、人間関係とか、そういうのを考えるのが楽しい作品でもありました。
互いのヒーローになったカノとリイナは多分これからどうしようもない関係になるのではないかなと思います。
女の子二人のそういう不健全さ(恋愛的な意味ではなく)を感じるような関係、好きなんですよね。男女二人とか男二人とかと違って、どちらかが崩れたときにもう片方も引きずられそうなところが危うくていい。
⑨猫の手を借りた結果
ニャミキ通りのコーニーショップで
https://kakuyomu.jp/works/16816927861865209983
これは完全に自分の好みに走りました。現実からちょっと外れたところにある不思議な空間。
ちょうどツイッターで谷山浩子の話をしていたこともあり、思考がそっち寄りだったというのもあったかもしれません。
借りた結果というならば、なにかしら猫からのアクションが欲しいなと思いました。そうして考えていたら「役に立たない猫の手でもいいから借りたいほど忙しい」という意味に対して、猫はいい気持ちになれないよなぁという同情心みたいなものが出てきて。
実際に猫がなにか仕返しをするわけではありませんが、人間サマをぶるりとさせるような、妙な余韻の残るお話に仕上がりました。
もうひとつ好きな要素として、扉を使っています。現実世界と幻想世界を区切るものであり、あちら側とこちら側を行き来するためのものでもあります。
開閉という動作をともないますしなにかと便利ですよね、扉。
⑩真夜中
トロッコの前にて踊れ
https://kakuyomu.jp/works/16816927861948660171
いろいろネタが出てきて逆に難しいお題でしたね。
なのでいったん頭の中を空っぽにして、それから「真夜中」について考えてみよう、と。
そうしたら猛スピードで山から下りてくるトロッコと、線路の上で踊る踊り子、踊り子はトロッコに積まれた石を綺麗だなと思っていて……みたいなシーンが浮かんできたのです。それがとてもつややかで素敵だったので書いてみることにしました。
短い間隔で視点が切り替わるところが映画のワンシーンみたいで気に入っています。
ちなみにこの世界ですが。……あれ、綺麗だけどけっこう理不尽な世界観だよなあ。それなら『雨音は鳴りやまない』の世界がぴったりなんじゃないか?
ということで、そのまま持ってきました。単純に地続きな世界というだけで、本編にはまったく関係ない――どころか雰囲気も違う話なのでシリーズとしてはつなげませんが。作中に出てくる「遠く離れた聖地」が『雨音は鳴りやまない』の舞台であるマクニオスです。
それから完全に異世界でありながらバレエを知る踊り子。地球で生きた記憶を、石からの言葉として受け取っている、という裏設定です。この世界と現実世界のつながりを匂わせていました。
これは書きながら物悲しい音楽が脳内再生されたので、今度作ってみようかなと思っています。オルゴール、オルガンあたりで。
⑪日記
マイコ記抄
https://kakuyomu.jp/works/16816927861985395317
なんだかんだいちばん難しかったのはこれでした。
というのも、わたしは日記で自分が気に入ってるものをすでに書いていたからです。
『日記を過ごす』
https://kakuyomu.jp/works/16816700427248639077/episodes/16816700427248654751
なので人と被らなさそうな設定がすぐに思いつきそうになくて、本当に困ってしまいました。
ただ、最後なので最後らしいものを書きたいなという気持ちはあって、それと「なんだか上手く書ける気がしないな……」という不安感みたいのがぐるぐるしてできたのがこちらです。
作ることの難しさといいますか、わたし自身なにかを作ることは大好きでなにかしらを作っていないと落ち着かない性分なのですが、それと世に認められるものをコンスタントに生み出すこととは別物であると思っていますし、同じ考えの人もいらっしゃるかと思います。
このマイコはそういうのに疲れてしまって、離れたい、終わらせたい、と思ってしまったんですね。
ふと自分が生み出したものを振り返ったときに理想や本心とは違ったものたちが並んでいたら、それはとても悲しいことかもしれない。そんなことを考えながら書きました。
ついでにわたしはちょっと捻くれた素直人間なので、誰かの書いた日記ではありますが、それが独白劇の台本になっているという設定にしてみました。声に出して読んでみると、スポットライトを当てられた気分になる、はず……!
もう少し大人の声になったときは、自分でも挑戦してみたいですね。次に声が変わるのはおばあちゃんになったときかもしれませんけれど。
ということで全十一作品の振り返りでした。
ジャンルとしてはファンタジーと現代ドラマが多いという通常営業具合でしたが、いろいろな雰囲気のお話を書けたのでとても満足しています。こういうイベントは気兼ねなく挑戦ができていいですね。新しく書いてみたいなと思えるものもたくさんありました。
それからカクヨムはキャッチコピーがとても目立つので、考えるのも楽しかったです。むしろキャッチコピーから書き始めたのも多いくらい。
来年もあるのかな、あるといいな、と思います。それまでにもっともっと成長するぞ~!
長々とお付き合いくださりありがとうございました。
それでは。
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