第5話 ベーゴマに潤いあり

 「はじめまして。田河たがわ みのるです。」

 恋愛セラピストの資格をちゃっかり取得したみのるは研ぎ澄ましていた。


 今日は他社の役員からの相談で来ていた。

 「社員を多く抱えると様々な悩み事が浮上するのですよね。

  ひとりひとり大事にするためにも話を聴いてアドバイスできる方の存在が

  必要なのです。」

 他社—そうね、A企業の役員さんは、みのるにそうお願いした。

 「僕もその件に関しては、他社の問題事としてだけでは片づけられない気持ち

  います。しかし…問題のセラピストの資格を所持していなかったのできちんと

  準備してきましたよ。

  カウンセラー(も持っているが)もいいのですけども、

  もう一歩先への方を導きたいと存じ上げています。」

 同席していた課長は、ふと笑った。

 「みどりさん、彼は大事な社員ですよ。」


 『いちから始めましょうか?』

 女が囁く。

 (端から?)

 事務所でパソコン入力をしながら、少しみどりはうたた寝をしてしまっていた。

 『引き返せなくなったらどうするのですか?』

 (そんな変なことを課長に言ってしまったなんて。)

 先日の課長との2者面談を思い出した。

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