第4話 霧と雨

 退勤、電車、雑踏…今日は少なめ?!

 「わっ。」

 和子は、電車の座席から身を起こした。

(今日は変な日だ。)

 和子はシュークリーム屋の店長になった。7日は経っていた。

マネージャーは月1くらい来てくれる予定。

(何か出さなきゃって、キカクしたのよ。)

和子は頭をごねる。シュークリーム屋なのに20個でしびれてしまうなんて。

 「売り上げがない店。」

 ふと近くのボーイズに目が合う。

(日本人的ではないわね。ってお客さん?!)

だが、何かを口にしていたはずの少年たちは、こちらをもう向いていなかった。


 ガタ、ガタガタン、

(電車の音?)

っと振り向けざまに身体を抑えられた。

黒い物体が和子の目を覆う。黒い帽子くろづくめの男が和子の身体をつかみ…

そして銃口を口の中に押し込む。

 「ふぁが…ぅ。」

 和子は少しジタバタしたが恐怖は身体を固く凍り付かせる。

(銃!銃!!!!!!!!!!!)

 「お前は第2次…世界大戦の戦争被害者か?」

 「はぅ?」

 「第2次世界大戦、を表現したあんな映画がいいのか?」

 周りを見回した。みんな、俯くか、よそを向きガタガタと震える人も居たが和子を助けられない。

 「ぅぅ…。」

 和子は銃口が顎上に押し付けられていてしゃべれない。

 「俺、俺はイスラム国だ。大戦の戦犯が無法者だったと?

  戦争被害者のつらしやがって。」

 「ぁなたはな…〇なん…ですカ?」

 口に銃を咥えさせられながら和子は叫んだ。


 夢は…終わり


 銃声は鳴った。たった一言の自己主張は、テロリストの感情を逆撫でした。

スローモーションのように散る涙のような血は海になった。

テロリストは血に足がとられ前のめりになって体制を崩した。

どこからかそばからか男性がテロリストを押さえつけ銃を奪った。

パトカーのサイレンが電車の向こう側、遠くから響いてきた。

テロリストはまだ抵抗しようとし、重たい身体をゆすり頭を男に打ち付けようとした。

バンッ

蟲の音のような短い音が頭…テロリストの頭を貫いた。吹雪いた血は電車の座席にテロリストの輪郭を残した。

和子はびくびくと震えていて、自分の心臓が少しずつゆっくりになっていくのを感じた。そうして深い深い闇の奥へ奥へと堕ちていくのを感じた。

 

 齢逆らえず。

されども現実無常。

彼と同じ痛みを知ってそれを抱きしめながら和子は流れに逆らえずそのまま目を閉ざした。

 

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