#9

「BLは久々ですねぇ」

「そうですねぇ」

 フリートークで絡むのは苦手だけど、加登かどだからそんなに苦手感が出ない…。ありがたい…。

「何でオファー受けたんですか?」

「それは加登くんに会いたかったから」

 リップトークもしなきゃ。何かコレは身に染みた芸能魂みたいなものだな…。お仕事だから。こういう返しは必要。

「嬉しいです…」

「それはどうも」

 本気で恥ずかしがるんじゃねぇよ。こっちが恥ずかしいわ…。声だけで良かった…。

 しかし、普段と変わらない芝居は出来た筈。加登とだからか今日に限ってはココをこうした方が良かったのかも。は、なかった…。細かい部分の反省点はあるにしろ…。やりやすい相手ではある。色んな意味で。

 そして、何事もなく(何事かはあったけどそれが主な話だから)無事に終わり、

「お疲れ様でした」

「お疲れ様で…」

 した。と言い切る前に、加登が俺の手を掴んでどこかへ行こうとするので、

「加登、今日はこれから…」

 まだ仕事があるって言いたかったのに…。

「俺、まだ諦めてないから」

「ん…?」

 何を?

「ほら。そういうわからないフリする…」

「諦めな。こんな仕事人間…」

 歩きながら俯いて、今から向かおうとする場所へ…。

「わかった…」

「本当に、わかった…?」

 この恋人繋ぎは、本当にわかっているのだろうか…。

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Nothing @tamaki_1130_2020

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