#8

『好きだった…』

 切ないお話だこと…。いつも通り、新作のアニメをザックリ見ている。昔は、単に好きだったアニメも今や違う目線でしか見てない。

『今でも…、でも…俺じゃ…ダメかな…』

 切な過ぎる…。しかも、加登かどの声じゃん…。

 アイツも成長したな…。そう思いながら、ココアを飲む。いつもはブラックコーヒーを飲むけど、今日は何となく誰かさんが残していったココアを消費している。

「俺じゃ、ダメですか?」

「何が?」

 そして、今、その誰かさんは隣にいる。

「真剣に見てるから、言って欲しいのかなって…」

「そりゃあ、仕事だもん」

「知ってますよ」

「それはそうと見つかったのか…?」

「はい。見つかりましたよ」

 しっかりと、手にはお忘れになった私物を持っていた。

「これでもう、ココには来ませんから」

「そうか…」

「何か期待しました…?」

「いや、全く」

 押し倒されてるけど、真顔で言った俺に向かって軽く笑って、

「これで期待しないって…」

「期待してまた同じことになっても苦しいだけだろ…?」

 俺が。

「俺は離れないけど、みおさんが離れるんでしょ?」

「そう、かな…?」

「そうだよ。俺は絶対離れない…。そう言うと拘束してるようで嫌だけど」

 さよなら。と耳元で囁かれて、イケボだなって感じてしまったことは気付かれている…。ニヤッと笑って、

「体は正直なのに…」

「そう、だな…」

 呆れて言った俺に、あっさりと離れていった…。

「じゃあ、また仕事で」

「はいよ」

 それはそれで…。まぁ、いいか。

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