#7

 あれ…?

 見慣れない部屋に、この加齢臭…。どこかで嗅いだことのある…。

「おはよう、虚弱体質」

 その嫌味のある癖が強い声は、桶浦おけうらさんだと頭突きが出来るくらい近付いてから気付いた。

「おぃ」

「何で避けるんですか…」

 もう少しで、頭突きできたのに。

「命の恩人によくそんなこと出来るな」

「命の恩人…?」

 首を傾げたら、めちゃめちゃ睨まれた。

「風邪で記憶失くすくらい体調不良になるな…」

「す、すみません…」

 突き出されたものは飲み物ではなく、写真だった…。

「ん…?」

「最近の加登かど、仕事に取り憑かれてるんだとさ」

 舞台もやるようになったのか。メイクをバッチリ決めて自信に満ちた顔しやがってる。

「別れて大きくなったな…」

「そうですね…」

 先越されるかも知れない焦燥感はあって、でもそれよりも好きだったんだ…。と改めて気付いた。自分から別れを切り出しておきながら…。バカなこと言ったと思った。

 逃した獲物はデカかった…。色んな意味で。

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