#4

「お。フラれたのか…?」

 桶浦おけうらさんが、単刀直入に切り込んで来て、思わず顔が歪んだ。

「そうか…」

「まだ、何も言ってませんけど…」

 加登かどがココに来てたらバレるか…。

「そもそもそんなヒトいませんから」

「知ってる」

「知ってるなら…」

「相手とちゃんと向き合え」

 子供じゃないんだから。お互いに。と俺の前に美味しそうな刺身盛り合わせが置かれた。

「これは今から始まる痴話ゲンカに付き合ってもらう用ね」

「は?」

「あ。来た。来た…」

 全く知らない客ではなかった。

「遅れましたっ!!すみませんっ!!」

「お疲れ様。少し休憩してからで大丈夫だからね」

「ありがとうございますっ」

 店員の萩乃はぎのちゃんだった。

 今日はテンション高いな…。稽古の帰り、か…?

「ん?二人ともどうしたの?」

 何かを察したらしい萩乃ちゃんは、そう言いながら俺の隣に座る。

「萩乃ちゃん、可愛いねって話してたの」

「嘘。それはない。ない」

「オトコマエなのに可愛いよねって話してはいたか…」

 萩乃ちゃんは確かにオトコマエな女性である。

「そんなに筋肉付いてないけど?」

「筋肉量の問題じゃない…」

 そして、天然な彼女ヒトである。

「いらっしゃいませ」

 そして、ここから痴話ゲンカのお話になる。本当に痴話ゲンカで微笑ましかった…。と同時に、ふと加登の面影を…。

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