第2話
とある廃ビルの屋上
「…私、もうダメなのかな…?」
屋上に付いている柵を握りながらつぶやく
その様子を見ている青年にも気づかず
「もう、飛んじゃった方が…」
と柵を乗り越えようとした
「ちょっ」
青年は駆け寄る
“パシッ”
「なにやってんの!」
青年は問う
「え、あ、、私…は」
しどろもどろしながらも見知らぬ青年の問いに応えようとする
「とりあえず、止められてよかった…」
安堵の息をつく
「あの、手…」
少し顔を赤らめながら小さな声で未だに手を繋いだままということを伝える
「わわっ、ごめん!」
今更気づいたのか、青年は顔を赤くしながら手を離す
「あ、いえ…大丈夫です」
顔は依然赤いままだが今度はしっかり話せている
「それで、なにかあった?」
青年はある程度落ち着いた様で、再度問いかける
「あ…いや、えっと、、、」
またもや問いに応えようとすると青年が
「ああ、自己紹介がまだだったね。僕は
「私は…
今度は最後まで言えた様だ
「それで、庵伊さんはどうしてこのビルに?」
出水は再度問う
「えっと…私、今日倒れて、病院に運ばれたんです」
しっかりと答える
「え!?大丈夫なの?」
出水は思っても見ない返答だった様でとても驚いている
「今は平気です。ただ、、」
とても言いにくそうにしている
出水は何故そんなに言いづらいことなのか分かってもいない様だった
「実は、私今日、お医者様に“宝石病”と診断されて…」
最後の方はほとんど聞き取れるかもわからないほどに小さな声になっていた。しかし
「あ…それは、嫌な事思い出させちゃってごめん」
出水は初めの方を聞いていなかったのだろうか
「流石に今日診断されたので覚えているので大丈夫です」
もっともだ
「あ、そっか、そうだよねwww」
出水は自分が言った言葉に笑っていた
「なんか、出水君に話したらスッキリしました!」
宝華は今までにないほどハッキリと喋っていた
「本当?それならよかった」
出水は安心したのかとりあえずこっちにおいでといい折りたたみ式の椅子などがある屋上の一角に宝華を連れて行った
「ここは…?」
宝華は廃ビルにこの様な物が置いてある事に疑問を抱いていた
「僕のお気に入りの場所、ここから見える景色が綺麗なんだ」
周りを見てみると確かにこの廃ビルがまあまあ高い事もありいろいろな物が見える
「本当だ、この街にも、こんな綺麗なところがあったんだね」
宝華は目をキラキラと輝かせながら言う
「ここ、夜景も綺麗なんだ、今度は夜景を見にここに来なよ。僕大体はここにいるから」
と言う出水の言葉に、宝華は驚いた
「え?な、なんで!?」
驚きのあまり大きな声が出る
「そんなに驚く事なくない?wwwだって、また死のうとされても困るし」
出水は続けて
「なにより、また庵伊さんに会いたいからね」
となんとも小っ恥ずかしい台詞を言ったところで出水は己の吐いた台詞のくささに赤面する
「ッ…うん、また来る」
宝華は少し言葉につまりながらもしっかりと伝えて屋上から去った
この宝石の思い出を 降雨時雨 @ShigureHukami
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