第234話 文化祭編① 京太郎の複雑な胸中
「今日は、すき焼き&栗ご飯弁当だよ。ジャ〜ン!!」
「おおっ。すげー!✨✨高級駅弁みて〜!ありがとう、めーこ!!」
昼休み、学校の屋上にてー。
すき焼きの汁にたっぷり浸かった具の部分と、栗ご飯の部分と二重構造になったお弁当箱をめーこから渡され、テンションが上がってしまう京太郎。
「ああ、温かくてうまい…。」
「ふふ、美味しいねぇ…。」
身を寄せ合い、仲良くお弁当を食べる二人。
「最近、寒くなって来たから、温かいものが美味しいよね?おでんとかもいいかもね…」
「おでんかぁ…✨✨🍢」
お弁当に無限の可能性を感じ、ほっこりしていたが、現在の状況を考え、遠い目になる京太郎。
「でも、これから、文化祭に向けて忙しくなって、昼食とれる時間も少なくなってくるだろうし、しばらくは簡単なものでいいよ?」
「うん。分かったよ。文化祭2週間前になって、急に忙しくなって来たよね?京ちゃんのクラスは確かクイズラリーだったよね?」
「ああ。うちのクラス、当日校内を長く回りたいって奴が多くて、スタッフの人数が少なくてすむ出し物にしたのはいいんだけど、準備が大変でね。衣装の動物の被り物やら、衣装やら、小道具作りやら、今、色々作ってるよ。」
「へえ〜。大変だね。でも、動物の恰好した京ちゃん見てみたいなぁけろっぴ…♡?」
「まぁ、男子はクマとかトラか羊とか哺乳類系の動物と決まっているから、蛙化はしないけどな。
めーこはカフェのメイドさんやるんだっけ?」
「うん。もう皆、衣装は大体出来てるんだけど、室内の飾り付けがまだまだ。テーブルクロスやら、諸々の小物やら、裁縫得意なマキちゃんのお母さんがクラスの女の子達に教えてくれてるよ?」
「笠原さんのお母さん、すごいんだなぁ…。芽衣子がメイドやってる時間に、マサとスギ連れてぜひ遊びに行かせてもらうよ。」
「うんうん。ぜひ来てね?家で予行練習した時に比べたら随分うまくなって、オムライスにケチャップで♡書けるようになったんだよ?」
「めーこ、すごいじゃないか!」
「えへへ。//」
以前、京太郎を招いて、オムライスや、パンケーキの上にケチャップや、チョコペンで、模様を描く練習をした時には、ハート形がなかなかうまく描けなかった芽衣子。
よほど努力したんだろうと京太郎は感心したのだった。
「スケジュールが決まったら、二人の時間の合うときに、一緒に文化祭回れたら嬉しいな…♡」
「お、おう。そ、そうだな…。//クラスの出し物の担当時間、決まったらすぐに知らせるよ。」
「うん。お願い。お母さんも、京ちゃんの担当時間に見に行きたいって言ってたから、教えていい?」
「お、おう。おばさんも見に来るのか、なんか緊張しちゃうな…。」
汗をかいている京太郎に、にっこりと微笑む芽衣子。
「ふふ。京ちゃんはいつも通りで充分カッコいいから緊張しなくて、大丈夫だよ?
お母さん、時間が合えば、おばさんと一緒に回るかもだって。」
「うへ〜。母さんもか…。去年たくさん写真撮られて恥ずかしかったんだよな。凪叔父さんは来てくれて嬉しかったんだけど…。きょうす…。」
「京ちゃん…?」
「なんでもない…。」
『京介おじさん』と口にしようとして、気まずそうに口を閉ざす京太郎。
以前、京太郎の母が芽衣子の母との電話を聞いてしまい、遠い親戚のおじさんだと思っていた京介おじが、実の父であった事を知ってしまった京太郎。
京太郎にとって京介は、ダメな大人ながら、どこか憎めないおじだったが、
今まで京太郎と京太郎母を放っていた父となると、とても受け入れる事は出来なかった。
察した芽衣子は、おずおずと聞いてみた。
「えと…、京ちゃん…。あれから、あの人とは、お話し合いとかはした…のかな?」
「まぁ…。電話でちょっと話したぐらい…かな?
俺が、「悪いけど、父親としては受け入れられない」って告げたら、ちょっとショックを受けていたみたいだけど、
『そりゃ、無理もないよな。迷惑な遠い親戚のおじとして思っててくれて構わないから、時々会いに来るのは許してくれや。』って言われてさ…。それは断れなかった。文化祭も見に来るらしいよ。」
事実を知って京介と顔を合わせるのは、文化祭が初めてになり、正直気が重かった京太郎。
芽衣子は、浮かない表情の京太郎に、神妙な顔で頷いた。
「そっか…。そうだね。
京介おじさんを、実の親だと無理に認めなくてもいいと思う。
私だって、浮気してお母さんを泣かせた実のお父さんより、優しくて誠実な今のお父さんの方が好きだし、T国で再会した実のお父さんをぶっ倒して、積年の恨みを晴らしてスッキリしてしまった事もあったぐらいだから…。」
「め、めーこさん…??||||」
満足そうな表情でそう言う芽衣子に、青褪める京太郎。
「とにかく、京ちゃんがスッキリ納得できるなら、私はどちらでも、あなたの味方だよ?
私も、京介おじさんの事は、ダメながら憎めないおじさんと思ってるけど、京ちゃんを苦しめるのなら、右足でぶっ飛ばしても構わない。」
「い、いや、あの、取り敢えず、右足(暴力)はやめとこうか…?」
右足を構える芽衣子にカタカタ震えながら諫める京太郎。
「うん。分かった。
京ちゃんは、京介おじさんの事、どうしようかまだ迷ってるみたいだもんね。
急いで結論を出さないで、これからゆっくり考えていったらいいんじゃないかな?」
そう言って微笑む芽衣子に癒やされて、京太郎は、心から感謝の気持ちを告げるのだった。
「芽衣子、側にいてくれてありがとうな…。///」
「えへへ。それはこちらこそなんだよ…?///」
芽衣子が京太郎の肩に頭をもたせかけた時…。
ドオン!!
「矢口!氷川さん!いつまでお昼食べてるの。」
「「…!!//」」
屋上の扉が開き、ボブカットの女子生徒の登場に、慌てて離れる二人。
「文化祭までに日がなくて、忙しいんだから、すぐ集まって?」
「わ、分かったよ…💦」
「ああ〜ん。貴重な二人の時間がぁ…💦」
読書同好会部長、上月彩梅に怒られながら、バタバタと昼食の片付けをする京太郎と芽衣子であった…。
*あとがき*
読んで頂きましてありがとうございます✨✨
「8回目嘘コク」文化祭編前半部分をお届けしていきたいと思います。
芽衣子ちゃんのメイドカフェつながりで、読書同好会メンバーのメイド姿のAIイラストをを今日(上月さん、神条さん、)明日(紅ちゃん碧ちゃん)で投稿できたらと思います。
よければご覧下さいね。
追記:京太郎くんのセリフに誤りがありまして、「男子はクマか、トラと決まっているから…」とありましたが、「男子はクマとかトラか羊とか哺乳類系の動物と決まっているから…」に変更させて頂きます。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いしますm(_ _;)m💦
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