第226話 大安の日に…💕〜私達の幸せな結婚〜《新郎&新婦視点》

披露宴会場にてー。


《京太郎視点》


フツメン、身長ふつう、とびきり可愛い幼馴染みの新妻がいる以外は、特に取り立てて取り柄のない社会人一年目の俺。矢口京太郎(22)


青春高校から、同じ系列の大学に推薦入学し、高校時代の読書同好会メンバーと共に文芸サークルに所属。その一年後、幼馴染みの彼女も同大学、同サークルに入学。

なかなか充実した日々を過ごし、

大学四年生時には長い就活の末、ようやく内定を得て、

この4月から中小出版社で新入社員として働き始めた。


希望する編集の部署につけたのはよかったが、深夜まで(時々泊まりも有り)仕事をする社畜の生活を、栄養ドリンクにまみれながら、なんとかこなしていっている。


そして、そんな忙しい生活の支えと癒しになっているのは、同居を始めた可愛い幼馴染みの新妻めーこだった。


高校2年で再会した時からS級美少女だった彼女だが、今は更に大人っぽく綺麗になり、S級美女に成長している。


有難い事に、小4で出会った時から今までずっと彼女は俺を一途に好いてくれている。


嘘コクパートナーから、反嘘コク同盟へと

関係の肩書きを変化させた俺達だが、

プロポーズをする段になっても、その肩書きは無くせておらず、お互いの気持ちは十分に知りながらも、今だに反嘘コク同盟を理由にイチャラブをし続けている。


彼女の夫として恥ずかしくない自分になり、いつかは反嘘コク同盟を解消しなければと決意する俺だった。


そして今日は、就職の内定をもらった時点から準備を進めていた結婚式の当日。

(なお、結婚資金は、めーこのたっての希望で、小さい頃からこの日の為にコツコツ貯めていたというお金で賄わせてもらった。)


俺は緊張に声を上擦らせながら、大勢の参列者を前に、誓いの言葉を読上げたのだった。


「本日、私たちふたりは、皆様の前で結婚式を挙げられることを感謝し、ここに夫婦の誓いをいたします。

これからは、どんなに忙しい時でも、お互いに向き合い、嘘や隠し事なく、素直な気持ちで何でも話し合い、笑顔あふれる家庭を築いていく事を誓います。


未熟なふたりではありますが、どうか今後とも末永く見守っていただければ幸いです。

20○△年6月✕日 新郎 矢口京太郎」


「しし、新婦シープ芽衣子っ!」


隣の芽衣子も緊張でカミカミで、『しんぷ』が『シープ🐑』になり芸名みたいになってしまっていたが、周りには初々しい花嫁として微笑ましく映ったらしい。


参列者は皆温かい微笑みと拍手で、俺達の結婚の誓いを受け入れてくれた。


フラッシュが沢山たかれる中、俺は芽衣子と顔を見合わせ、一仕事終え、ホッと笑顔を浮かべていると…。



「「「「ちょっと待ったぁ!!」」」」



会場に複数の男女の声が響き渡り、俺達から見て左側に男装した笠原さん、柳沢、右側に女装したスギとマサにスポットライトが当てられていた。

そして、スポットライトから外れたところに、黒子のような服を来た人達(高校、大学時代の友達、同僚)が数人ずつ配置されていた。


「芽衣子ちゃんと結婚するのは俺だ!」

「いやいや!芽衣子ちゃんと結婚するのは俺!」


「「!!」」


凛々しいタキシード姿の笠原さんと柳沢が叫んだ。


「京太郎くんと結婚するのは私よぉ!」

「いいえ!京太郎くんと結婚するのは私!」


おぞましいドレス姿のスギとマサが声を張り上げた。


「「!!」」



「京ちゃんっ!!」

「めーこっ!!」


俺とめーこは、黒子のような衣装を来た人達に誘導されるまま引き離され、めーこは

笠原さん&柳沢の元へ、俺はスギ&マサの元へ連れて行かれた。



ほとんどの参列者は驚きながらも、その様子を静かに見守っている。

…というのも、参列者は、事前に式場のスタッフさんからこのハプニング企画について大体の流れを聞かされていているので、大きな混乱はないかに思われた。ただ一人、母方のひい祖母ちゃんを除いては…。


「きょ、京太郎っ?!めーちゃんっ?!一体何が起こったんだいっ??」

「婆ちゃん、だから何度も説明しただろ?そういう出し物なんだって…!」

「出し物ぉ?!」

「そうそう。大丈夫だから、安心して?」


婆ちゃん…。この間、めーこと結婚の挨拶に行ったとき、俺からも説明したんだけどなぁ…。

最近物忘れのひどいひい婆ちゃんに、凪叔父さんと母さんが説明しているのを苦笑しながら、チラッと見遣ってから、左右からそれぞれ腕を組んでくる俺はスギとマサに視線を移した。


「タプンッ。京太郎くん、もうあなたは私の物っ!」


おてもやんのような頬紅をしたマサにお腹をぽよんと揺らしてそう言われ、俺は吹き出しそうになった。

マサよ、女っていうより、大道芸人みたいだぜ?


「スチャッ。京太郎くん、芽衣子さんには渡さないわぁっ!」


赤い口紅をつけた凶悪な口元で、ニヤッと笑いメガネをかけ直すスギに、俺は吐きそうになった。

こいつの女装本当に似合わねーな。

そう言えば、スギ、高1の文化祭でセーラー服来てクラスの男子全員をげんなりさせていたっけ?


「あなた方、そんな事は許しませぇんっ!!京ちゃんは私の大事な旦那様ですっ!!」


台本通りではあるのだが、割とマジな顔でめーこが怒っていた。


「たああーっっ!!」


「「えっ!?(氷川さん?)||||」」

ドヨドヨッ!!


そして、会場がどよめく中、めーこは高く跳躍すると、ドレスをはためかせてスギとマサに蹴り掛かって行っ…ん?打ち合わせでは黒子に持ち上げてもらう予定じゃなかった?あと、普通にぶつかりそうじゃね??


「め、めーこ!!フリだから、フリ!!」


「あっ。そうだった!や、やーっ!」


俺の声にめーこは慌てて減速すると、棒読みでスギとマサの近くに降り立ち、蹴りを当てるフリをした。


「「(ホッ)ギャ、ギャーッ!!」」


スギとマサは黒子の人達に抱えられ放物線を描くようにぶっ飛ばされて行った。


「(そうそう、その軌道じゃ。皆うまいぞ?)」


何故か鷹月師匠が黒子衣装を来て軌道について指導してくれた為、高いクオリティのパフォーマンスになっており、会場からは拍手が起こった。


「芽衣子ちゃん。そちらに構うな。君はもう俺のものなんだから!」

「芽衣子ちゃん。京太郎くんにはもう渡さないぞっ!」


女子にしては長身ですらっとした柳沢がめーこの左側から、男性用のカツラを被った笠原さんが右側から腕を組み、二人共なかなかのイケメンぶりを見せていた。


「お、お前達、そんな事は許さないぞっ?」

めーこは、俺の大事な、は、花嫁だっ!!」


「大事な花嫁だって。エヘヘ…💕///ドロドロ…。」


俺は緊張でちょっとセリフを噛んでしまったが、めーこは嬉しそうにその場に溶けていた。


「ハァッ!ヤァッ!」


「少しはやるじゃないかっ!」

「でも、そこまでだっ!」


「「トリャーッ!!」」


「グワッ!」


柳沢と、笠原さんに向かって(もちろんフリで)蹴りを繰り出していた俺は、逆に二人に同時に繰り出された蹴りに膝をついてしまった。


「京ちゃん…!!」


めーこが目を見開く中、柳沢と笠原さんが俺を囲んで高笑いした。


「ハハッ!調子が出ないようだなっ。」

「知ってるぞ?昨日まで残業で何日も碌に寝れていなかったんだろう?」


「うぐうっ…。||||」


割とガチでこのセリフの通りの状況だった為、俺は演技ではなく、普通にダメージを受けていた。


「矢口くん。負けるな!これを飲んで頑張って!」


同じく普通にダメージを受けていたらしい同僚で黒子役の鈴木太一すずきたいちくんが、涙を流して、巨大な眠○打破のビンを手渡してくれた。


「鈴木くん。ありがとう!ゴクゴクッ!」


俺は彼に礼を言い、眠○打破(中身は少量のウ◯ンの力)を飲み干すと、

周りの皆に向けて腕を曲げ力こぶを見せた。


「よしっ!力が湧いてきたぞ!締め切り前の地獄を知った俺に怖いものなどないっ!!」


「「ひいっ。」」


怯んだ柳沢と笠原さんに向かって、俺は黒子の南さんに抱えられ跳躍した。


「デッドエンド&ハッピーエンドキーックッ!!」


「「ギャアーッ!!」」


同じく黒子に抱えられぶっ飛ばされる柳沢と笠原さん。


参列者から歓声が上がる中、ふと家族席を見遣ると、凪叔父さんがハンカチで目頭を押さえていた。


「ううっ…。京太郎。立派な社畜になって…!」


いや、凪叔父さん。その称賛、有難いような有り難くないような…。


「京ちゃん!」

「めーこ!」


めーこが駆け寄って来て、再び彼女の手を取った。俺達が笑い合っているところへスポットライトが向けられた。


「「「「君達の愛には負けたよ。」」」」


スギ&マサ、柳原&笠原さんはそう言い、四人と鷹月師匠、南さん、佐藤くんを含む黒子役の人達はそんな俺達を取り囲み、清々しい笑顔を浮かべて拍手をしてくれた。


会場も再び拍手の渦に包まれた。


「京太郎。めーちゃん。悪者が現れてどうなるかとハラハラしとったけど、本当によかったねぇっ…。」


家族席のひい婆ちゃんは、涙を流して喜んでくれていた。


「京ちゃんとこのひいお婆ちゃん。喜んでくれてるのはいいけど、余興の出し物じゃなくて、本当に起こった出来事だと思っちゃってるかな?」


「そうだな。このハプニング余興、婆ちゃんにはちょっと分かりにくくて、刺激が強かったかな…。」


俺はめーこと顔を見合わせて、苦笑いしながら、頭を掻いたのだった。


❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇

《矢口芽衣子視点》

とびきりカッコイイ幼馴染みの旦那様に釣り合う自分になる為、家事や就活、バイトに励む現在大学4年生の私。矢口芽衣子(21)


青春高校から、幼馴染みの旦那様=京ちゃんより1年遅れて同じ系列の大学に推薦入学し、京ちゃんと共に文芸サークルに所属。

なかなか充実した日々を過ごし、

大学三年生時には京ちゃんが出版社に内定が出たタイミングで、プロポーズをしてくれた。正確には、京ちゃんが婚約指輪を用意してくれた場面で、フライングで私がプロポーズしてしまったんだけど(泣)。


京ちゃんが働き始めるタイミングに併せて、4月から、既に入籍を済ませ、同居を始めている。

京ちゃんは、新入社員ながら毎日残業が多くて忙しそうで、毎日お弁当を作り、私なりに精一杯彼を支えてあげたいと思っている。


あまり、重荷にならないよう、来年からはどこか働きたいと思えども、就職活動の状況はあまり芳しくなく、現在コンビニや有名なキックボクサーとして活躍中の静くんの下で練習相手のバイトで小金を稼ぐ日々…。


あと、この前、高校時代の知り合いに頼まれて協力したキックボクシングのユーチューブ動画、バズったから、あとで報酬を渡すと言われたけど、これもそんなに大した事ないだろうな。京ちゃんと一回お食事行けるぐらいの額ぐらいになったらいいけど…。


「俺も働き始めてるし、就職の事なら、焦らなくていいよ?」


焦る私に、私の素敵な旦那様は、優しく肩ポンしてくれるのだった。


高校2年で再会した時から容姿も行動もイケメンな京ちゃんだったが、今は社会人になって、顔付きが精悍になり、更にカッコ良さが増している。


嘘コクパートナーから、反嘘コク同盟へと関係の肩書きを変化させた私達だけど、その肩書きはいまだ無くせておらず、お互いの気持ちは十分に知りながらも、今だに反嘘コク同盟を理由にイチャラブをし続けている。


彼の妻として恥ずかしくない自分になり、いつかは反嘘コク同盟を解消しなければと決意する私だった。


そして今日は、プロポーズの直後から準備を進めていた結婚式の当日。


(結婚資金は、京ちゃんに頼んで、小さい頃からこの日の為にコツコツ貯めていたお金で賄わせてもらった。京ちゃんはそれならと、新婚旅行や、新生活にいるお金を出す事を申し出てくれた。)


「私がうっかり蹴ってしまい、度々家の壁や床に穴を開けてしまった時も、お父さんは優しく笑って許してくれました。


本当にごめんなさいっ…。今までありがとうございます。」


私がお父さん=氷川怜(46)に向けて涙ながらにスピーチを読み上げると、お父さんは

涙を滲ませて穏やかな笑顔を浮かべていた。


「いいんだよ?芽衣子ちゃん。初めはビックリしたけど、すぐ慣れたよ。新居には穴開けないようにね?」


「「イヤ、ホント、反省しろよ?」」

「芽衣子ちゃんはお家でも元気じゃのぅ。」


家族席で静くんとあーちゃんが呆れたように突っ込み、鷹月師匠は何故か目を細めて喜んでくれていた。


(ちなみに師匠とあーちゃんは、家族も同然という事で、家族席の方に座ってもらっていた。)


感動半分、どん引き半分のスピーチを終え、

最後にブーケトスのため、マキちゃん、柳沢先輩、亜美さん(スギさんの彼女さん)真子さん(マサさんの彼女さん)他若い女性の参列者達に集まってもらった。


私はスタッフさんから、色とりどりの花があしらわれたブーケを手渡された。そのブーケからはいくつものリボンが伸びていて、周りを取り囲んだ女性達に、それぞれの端を1つつずつ持ってもらった。


本当にブーケに繋がっているリボンは1つだけという、くじ式のブーケトスだが、ブーケを引き当てた女性が次に結婚出来るというジンクスの為、周りの女性達は、ざわざわと華やいだ雰囲気になっていた。


「ドキドキするね〜?」

「当たったらどうしよ〜?」


「う〜ん。私、参加していいのかな〜。」


マキちゃんは今のバイト先の水族館の男性スタッフさんと付き合っていて、既に婚約済なので、申し訳なさそうな顔をしていた。


「ふふっ。当たったらジンクスが現実になったって思われていいんじゃない?」


A県の企業に就職した柏木先輩と卒業後別れたという柳沢先輩は、マキちゃんにいたずらっぽい笑みを向けていた。


「では、皆さん、リボンを引いて行って下さいね?」


スタッフさんの声がけで女子達に一斉に紐を引いてもらい、私も、ブーケを持っている力を少しずつ弱めていくと…。




「え…!どうしよう?!」




ブーケに繋がるリボンを引き分けて戸惑った顔をしていたのは柳沢先輩だった。


「柳沢先輩。おめでとうございます!」


私が柳沢先輩にブーケを手渡すと、会場内を温かい拍手が包み、各所でシャッターが切られた。


「リサリサ先輩、やったね!」


「エ、エヘヘ…。」


マキちゃんにサムズアップされ、困ったような笑みを浮かべる柳沢先輩に私はひそっと囁いた。


「柳沢先輩。幸せになる事をもう躊躇わなくっていいんですよ?」

「えっ…!」


「今までたくさん協力してもらっていたのに、私は、嘘コク一人目で、京ちゃんを傷付けた事がある柳沢先輩を心から受け入れる事ができなかった。


だから、柳沢先輩に復讐することもなければ、許すとも言いませんでした。


その方が柳沢先輩は、やってしまった事を後悔し続けて、ずっと覚えていてくれると思ったから。


でも、柳沢先輩が柏木先輩と別れたって話を聞いて、京ちゃんと話し合って決めたんです。

もう終わりにしてもいいんじゃないかって。

だから、私は嘘コク一人目のあなたを許します。

今まで、私を、京ちゃんを守って、助けてくれてありがとうございました。」


「め、めいこちゃぁんっ!!」


私がそう言って、ペコリと頭を下げると、柳沢先輩は顔をクシャクシャにして涙をボロボロ溢した。


「柏木先輩を追い掛けて復縁しようが、新しい幸せを見つけようが、それは柳沢先輩の自由です。私達に罪悪感を感じずに幸せになって下さいね?」


「ゔゔっ。ゔんっ。ありがどうっ。めいごぢゃんっ!!やぐぢっ!!」


「よかったね、リサリサ先輩?あらら、この人、さっきのめーこのお父さんより、泣いちゃってるよ。」


柳沢先輩はブーケの花に涙のシミを作り、マキちゃんにハンカチで涙を拭かれていた。


「まぎぢゃん、ありがどうっ…!」


遠くからそんな私達を温かい目で見守っていた京ちゃんと、私は目を見交わすとお互いにすっきりとした笑顔を浮かべていた。


         *

         *


招待した参列者の方々をお見送りした後私達達は家族と、師匠、あーちゃんだけになった。


「芽衣子ちゃん、今日は本当にお姫様みたいに綺麗だった。ヘタレな息子だけれど、これからも末永くよろしくね。」

「芽衣子ちゃん、京太郎をよろしくね。」

「めーちゃん、京太郎をよろしくね。」


「は、はい!こちらこそ、末永くよろしくおねがいします。」


おばさん、凪おじさん、ひいおばあちゃんにに言われ、私は緊張しながらペコリとお辞儀をした。


「いい結婚式だったね。京太郎くん、これから、芽衣子ちゃんを末永くよろしくね?」

「京太郎くんよろしくお願いします。」


京ちゃんは京ちゃんで、うちの家族に挨拶をされていた。


「矢口さん。本当に芽衣子でいいんですね?くれぐれも、浮気だけは気を付けて下さいね?やったとしても芽衣子には絶対に見つからないようにして下さい。俺、矢口さんが姉に殺されるところなんて見たくないですから!」


「や、やめろよぅ。静くん。浮気なんてしないよぅ…。||||」

「静くんは一体何を言ってるの…?」


真剣に京ちゃんに言い含めている静くんに静かな怒りを向け、右足を構えると…。


「コラコラ!芽衣子!今日は止めといてあげて?静くん来月大事な試合だから!」


「あーちゃん…。」


慌てて、姉弟子のあーちゃんが止めに入り、和服姿のお母さんも駆けつけてきて、怒られた。


「そうよ。芽衣子!余興の時だって、参列者の人を怪我させるんじゃないかとハラハラしたのよ?

ウェディングドレス着てるときぐらい、大人しくして被害者ゼロを目指しなさい。」


「お母さん…。被害者ゼロって…。」


交通事故ゼロの標語みたく言わないで欲しい…。


「いや、芽衣子の事だから、もう既に一人ぐらい犠牲者出してんじゃねーの?」

→※本当に約1名犠牲になっています。


「出してないよ!本当にもう静くんはっ!!」


「「め、芽衣子ちゃん、そんなに強いんだぁ…。」」


ちょっと引き気味のおばさんに凪おじさん。


「綺麗で強い花嫁さんなんて素敵じゃね〜。」

「うんうん。芽衣子ちゃんは最高のお嫁さんですじゃ。」


そう言ってくれたのは、京ちゃんのひいおばあちゃんと鷹月師匠でお互い笑顔になって、頷き合っていた。


         *


「京ちゃ〜ん!」

「めーこ!」


着替えを終えた私は、先にロビーで待ってくれていた京ちゃんに、走り寄って行った。


「皆は?」


式の後は、京ちゃんのご家族とうちの家族プラス鷹月師匠、あーちゃんで食事会をする予定になっていたのだ。その場に京ちゃんしかいなかった為、私が聞いてみると…。


「先に食事会の場所に向かってるよ。少しでも二人になりたいだろうからっていうので、鷹月師匠が気遣ってくれてさ。タクシー代頂いてしまったよ。」


「師匠が…。ご祝儀も大分頂いてしまったのに、申し訳ないな…。」


恐縮している私に京ちゃんは微笑んで言った。


「鷹月師匠は、優秀な弟子だっためーこの事、本当に孫のように思っているんじゃないかな。」


「そう思ってもらえるのは嬉しいけど、静くんみたいに有名なキックボクシングの選手になる事もなく、辞めてしまった私なんて優秀弟子どころかただの落ちこぼれだよぅ…。」

「いや、めーこが落ちこぼれって事はあり得ねーけどさ…。」


私がきまずい思いで手を振って否定していると、京ちゃんは苦笑いしつつ、赤いお顔で先を続けた。


「あのさ…。鷹月師匠に、俺達の間に子供が生まれて、もしキックボクシングの道に進みたいという希望があるなら、直々に指導するから、いつでも言ってくれって言われた。」


「えっ!///子供?!やだっ。師匠ったらそんな事を?!」


私は一気に真っ赤になった。


もう、師匠ったら!!京ちゃんに何言ってくれちゃってるんよぅ〜?!

子供の事だなんて…!まだ1日に30回ぐらいしか考えてないのに…。


「う、うん。まだ早過ぎるって、言っといたんだけどさ…。ま、まぁ、頭の片隅に置いとてもいいんじゃないかな…。///」

「そそ、そうだね…。///」


京ちゃんとお互いに赤い顔を見合わせながら私は思った。


嘘コク関係を解消されてしまい、京ちゃんに振られたと思った時、自分が有名なキックボクシングの選手になり、京ちゃんと上月先輩との子供と対面する未来を悲しい気持ちで思い浮かべてしまった事があったけど、


京ちゃんと結ばれた今、私達の間に子供が生まれ、好きな事に向かって行く姿を皆で見守る…そんな幸せな未来を思い浮かべてしまってもいいのかな…?


「じゃ、じゃあ、めーこ。そろそろ行こっか?」

「う、うんっ。京ちゃん。」


私は京ちゃんに手を取られ、新しい未来に向かって歩き出したのだった。




*あとがき*


なお、京太郎くん&芽衣子ちゃん結婚式に参加しなかった人々についてー。


京太郎実父…現在仕事で海外にいる為。

      海外出立前に、二人にお祝いを

      言いに来たらしい。

京太郎祖父母…祖母、二日前にギックリ腰に 

      なってしまった為、祖父看護の 

      為共に欠席。後日二人で挨拶に   

      行く事になっている。

芽衣子実父…現在仕事でT国にいる為。祝電 

      を二人に送っている。      


読書同好会メンバーについて、

上月さんは、大学在学中に、小説のコンクールで新人賞を取り、駆け出しの作家さんに…。

紅ちゃん、碧ちゃんは音大に進み、演奏家への道を歩み、

神条さんは、大手書店の社員になり、それぞれ忙しく、予定が合わなかった為、大学で知り合ったサークルの友達と共に、別日にお祝いの会を設ける事にしたらしいです。


風紀委員メンバーについて、

教師になった白瀬先輩、警察官になった大山さん、小谷くんも共に忙しく、やはり別日にお祝いの会を設ける事にしたらしいですよ。


秋川さん…は…結婚式に呼ばれてはいないでしょうが、お祝いメールは送っているかもしれませんね。

『組長様、姉御様

ご結婚おめでとうございます。

お二人の幸せを心よりお祈り申し上げます。

あなた様方の忠実なしもべ♡秋川栗珠より』

とか…(;^ω^)







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