第133話 茶髪美少女は風紀委員長との仲を疑う
「あっ。お母さん?」
8回目のコールで、電話に出たお母さんに、
私は、急き込むように話し出した。
「ちょっと急ぎで聞きたい事あるんだけど、今大丈夫っ?京ちゃんの事なんだけどっ。」
「あら、芽衣子?今、昼休みだからいいわよ?京太郎くんの事というと、今日はプロジェクトAかしら?」
※ちなみに、プロジェクトとは、京ちゃんが家に遊びに来たときの対応策を示した計画の略語であり、その内のプロジェクトAとは、
『京ちゃんに、自分がめーこだと知らせていない状態なので、お母さんには、馬の面を被ってもらう。』という意味。
「ち、違うっ。プロジェクトAじゃないっ。
あの、京ちゃんに聞いたんだけど、
お母さん、京ちゃんのおばさんに、私の事について何か聞かれた?」
スマホを握り締め、ドキドキしながら問いかける私とは対照的に、お母さんは、おっとりと嬉しそうに話し出した。
「ああ。そうそう。そうなのよ。この間奈美ちゃんから電話があってね〜。」
「やっぱり…!そ、それで、お母さん、お仕事が忙しいからって言って、お話するのを引き伸ばしてくれたんだよね?」
そのまま、暫く話すのは待ってくれるようにお願いしようと思っていたところ…。
「ううん?これまでの事、ぜんっぶ、
一切合切奈美ちゃんに話したけど…??」
「へっぶうっっ?!」
あっさりと思いも寄らない事を言われて吹いてしまった。
「え?今までの事って、私が京ちゃんの高校に入学した事?嘘コクを通して京ちゃんに近付いている事?」
「うん。あと、京太郎くんの前で馬の面被ってることも全部♡」
「あ。それはごめんなさい…。でも、何で言っちゃうの、お母さん!京ちゃんにバレちゃうじゃないっっ!」
責め立てて叫ぶ私をお母さんは諫めるように言った。
「芽衣子。奈美ちゃんだって、京ちゃんに毎日お弁当作って来る子が、どんな子か気になるだろうし、隠すことはできないわよ。」
「ううっ。それはそうかもしれないけど…。」
「奈美ちゃん、芽衣子が変わらず京ちゃんを好きでいるって知って、とても喜んでくれていたわよ?」
「え。ほ、本当…?」
「ええ。ぜひ家に遊びに来て欲しいって言ってたわよ?」
「い、家に…?♡」
そ、そうか…。既に身バレ済みなら、無理に
一ヶ月以内にダブル告白しなくても、
口裏を合わせてもらって、お家訪問実現という手も…と、私が小狡い事を考え出した時…。
「奈美ちゃん、今は京太郎くんには、誤魔化してくれてるみたいだけど、いつまでもそのままではいられないから、早めに本当の事を話すのよ?」
「…!!あ、は、はい…!!すみません…。」
や、やっぱり、そうですよね…。
お母さんに釘を刺され、私は身を縮めて謝った。
*
*
ふぅ…。
私は電話を切って、大きなため息をついた。
もう、おばさんに私の事がバレていたとは…!
しばらくは、お母さんと連絡がつかない事にしてもらって、誤魔化してもらえるそうだけど、早く京ちゃんに私が『めーこ』だと伝えなければいけない。
余計にプレッシャーがかかる中、
風紀委員の借り出しがあって、しばらくは、なかなか二人きりの時間を作れそうになくて焦っちゃうな…。
よし!まずは、一週間品行方正に風紀委員の仕事をやり遂げよう。そして、借り出し期間が終わり次第、速攻で京ちゃんにダブル告白をするぞっ!!
私は心にそう誓い、拳を握りしめるのだった。
*
*
「遅れてすみませんっっ。」
生徒指導室のドアを開けると、会議用のテーブルに他の風紀委員の人達が何人か席について、お弁当を食べていた。
そして、テーブルの奥の方の席には…、京ちゃんと、彼を覗き込むようにニンマリ笑顔を向ける白瀬先輩の姿が…?!
えっ?何で?!!ちょっと距離近くない?
それになんか二人いい雰囲気じゃない?
「おーう。芽衣子嬢…!よく来てくれたな!」
青くなって立ち尽くしている私に、白瀬先輩が振り向き、手を振ってくれた。
「ふふっ。じゃ、15分後にミーティング始めるから、お弁当食べててな。お二人さん♡」
「え?あ、は…い…。」
白瀬先輩は、会釈をする京ちゃんと固まりながら返事をする私の肩を順番にポンと叩くと、会議テーブルの自分の席に戻って行った。
内心の動揺を隠して努めて冷静に京ちゃんに、聞いてみた。
「え、えーと、白瀬先輩と何の話をしてたんですか?」
「えっ?」
京ちゃんは、カアアッと目に見えて赤くなって、私から目を逸らした。
「(芽衣子ちゃんが俺の事を好きだって話をしていたなんて言えるワケないっっ!!)
なな、何でもないよ?ただの世間話。」
えっ?何その反応??
ちょっと目を目を離したスキに、二人の間に一体何が…!?
いや、でも他の風紀委員もいるし…まさか、私の心配するような事はないと思うけど…。
?!
白瀬先輩の方を見ると、含み笑いをして、こちらを見ていた。他の風紀委員の人達も、
心なしかニヨニヨしているような…?
動揺しつつも、私は少しでも京ちゃんの気を引こうと、お弁当を指差した。
「きょ、京先輩っ。お弁当食べましょう?今日、ちらし寿司なんですよ?エビで桃の形作ったんですよ?」
「…!!!う、うん…。知ってる。あ、あり、ありがとう…。」
そう言いながら、京ちゃんは、更に真っ赤になり、ほとんど喋らなくなってしまった。
ううっ…。本当に何があったの…?
私は京ちゃんの様子をチラチラ窺いながら、
隣で、涙目でお弁当をかきこんだ。
*
*
そして15分後ー。
小谷先輩も生徒指導室に集まり、風紀委員のミーティングが始まったが…。
「では、明日から始まる服装チェックについてだが…、ん?コラッ、芽衣子嬢っ!」
「は、はい…?」
「仲がいいのは分かるが、今、ミーティング中だから、おっぱいを押し付けるのは、控えなさい!」
「はっ!」
「め、芽衣子ちゃん…//」
不安のあまり、いつの間にか京ちゃんの腕を取り胸をギュウギュウ押し付けていた私は
ミーティング開始一分で、白瀬先輩に怒られる事となった…。
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