第130話 勝利の笑顔〜敗北の過去を越えて〜
あれから京ちゃんと、風紀委員の仕事について一通り説明を受けた後、さっき京ちゃんを助けてくれた小谷先輩という男子生徒と一緒に、生徒指導室を出た。
小谷先輩は、今、保健室登校をしている幼馴染みと一緒に帰るとの事で、保健室前で別れる事になった。
さっきの裁判で、味方してくれた事といい、小谷先輩は、とてもいい人のようで、
別れ際に、肩をポンと叩いて、疲れている様子の京ちゃんを元気付けるような言葉をかけてくれた。
「矢口くん。今日は大変だっただろうけど、あんまり落ち込まないで。
柑菜さんが本当に矢口くんを有罪と思ってたら、風紀委員で裁判なんかも、借り入れもしないし、すぐ生活指導の先生に引き渡してるよ。
ただ、噂の事もあったから、立場上厳しい措置をとらなきゃいけなかっただけで…。」
「小谷くん、気遣ってくれてありがとう。君も大山さんの事で大変だろうに…。」
「いやぁ。雅の事は俺が勝手に心配して付きまとってるだから、本人には迷惑がられてるかもしれないんだけどね?」
「そんな事はないと思うけど…、俺にも何か力になれる事があったら言ってね?」
「ありがとう。矢口くん。その時はよろしく!じゃ、また、明日委員会でね。あっ。氷川さんもよろしくね!」
私も小谷先輩に、笑顔を向けられ慌ててペコリと頭を下げた。
「あっ、はい。小谷先輩、よろしくお願いします。」
「うん。小谷くんまた明日。」
*
*
そして、色んなドタバタの末、やっと二人きりになれた学校の帰り道。私は、京ちゃんに、気になっていることを聞いてみた。
「あの、小谷先輩の幼馴染みの方って、どういう方なんでしょうか。」
「ああ…。同じ風紀委員の大山雅さんって子で、前貸し出された時俺も一緒に組んで仕事した事あるけど、空手が強くて性格もいい人だよ。」
「そそ、そうなんですね…。↓」
京ちゃんが手放しに褒める女の子がもう一人現れたことに、私は動揺したが…。
「ふふっ、会話の半分以上小谷くんの事ばっかりだったんだけどね…。」
「そ、そうなんですね…。↑」
なんだ!大山先輩は、小谷先輩が好きらしい。私はホッと胸を撫で下ろした。
小谷先輩も、大山先輩の事をすごく気遣っていたし、二人は、両思いなのかな?
「二人は付き合っているんですか?」
私に聞かれて京ちゃんは、苦笑いしながらも答えてくれた。
「う〜ん、どう見ても、二人両思いなんだけど、付き合ってはいないかな…?
実は大山さん、秋川の被害者の一人で、クラスで孤立してしまったのを気に病んで、
3月まで不登校だったんだ。」
「…!!そうだったんですね。」
そう言えば、柳沢先輩から、秋川先輩に陥れられて不登校になってしまった子がいると聞いた事がある。
それが大山先輩だったとは…!
嘘コク5人目の時は協力してもらう事もあった秋川先輩だが、過去やってしまった事は本当に罪が深く、被害者は未だ癒えない傷を抱えているのだ。
私はやはり、彼女を許す事は出来ないと思った。
「今は少し症状が良くなって保健室登校出来るようになっているんだって。小谷くんは、頻繁に様子を見に行ってるみたいだね。」
「そうですか…。」
それでも、信頼できる人が側についてくれる心強いだろうな。
何だか、私は大山先輩と小谷先輩の関係を、私と京ちゃんを重ね合わせてしまい、他人事とは思えなかった。
「大山先輩、少しずつでも良い方向に向かって行けるといいですね。」
「本当にそうだね…。」
私の言葉に京ちゃんも大きく頷き…それから、私にすまなそうな顔を向けてきた。
「あの…。芽衣子ちゃん。今日は大変な事になっちゃって、ごめんね。
俺のせいで芽衣子ちゃんまで巻き込まれて一緒に借り出される事になってしまって本当に申し訳ない…!」
京ちゃんに手を合わせて謝られ、私は慌ててぶんぶんと手を振って否定した。
「いえ。そんな…!私は別に…。風紀委員の方々感じがよくて楽しそうな方ばかりでしたし。京先輩も一緒で心強いですし!」
風紀委員の仕事はよく分からないけど、風紀委員の女子達も、小谷先輩という男子も
本当に人柄のよさそうないい人ばかりで、人間関係としては、特に心配していなかった。
ただ、風紀委員長の白瀬先輩と京ちゃんの関係が気がかりだけど、取り敢えず、さっきのやり取りを見る限りでは色っぽい雰囲気とかそういうのはなかったように思える。
仕事も私と京ちゃんと小谷先輩で組むと言っていたし、そんなに白瀬先輩と接点はないし、大丈夫…だよね。
隣の京ちゃんの横顔をチラッと窺うと、何故か、真っ赤な顔になっている。
「め、芽衣子ちゃん、その、当たってる!」
「はっ!」
京ちゃんの言葉に、気付くと、不安のあまり私はいつの間にか京ちゃんの腕をとって、グイグイ胸に押し付けていたらしい。
息をするようにセクハラをしてしまった!
「ごめんなさい!」
私は京ちゃんから慌てて離れた。
「い、いや、いいよ。こっちこそさっきは触ってしまって、ごめん!自分でも、何故あんな風になったか分からないんだ。」
気まずそうに謝る京ちゃんに、さっきの大きな手の感触を思い出して、私も真っ赤になった。
「い、いえいえ、嫌じゃなかったですし、京先輩のせいじゃないですよ。私、無意識にセクハラする癖があるみたいなので、もしかしたらあの時自分から押し付けていたのかもしれません。」
「い、いや流石にそんな事は、ないだろうよ。とにかくこれからは、気をつけるよ。」
「私も、これからは、セクハラ自重しますね。白瀬先輩にも、二人の事が校内で噂になってるから自重するようにって言われていたんです。」
「ああ。俺も噂の話聞いたよ。なんか、本当ごめんね。これからは、風紀委員で活動することになるし、一層言動に注意するね。」
「はい!わたしも二度とおっぱいを京先輩に押し付けないように注意します。」
「ああ。その方がいいね…。↓」
京ちゃんにそう言われ、ああ、やっぱりセクハラされて迷惑だったんだなぁと、ちょっぴりしゅんとしながら、京ちゃんの方を見ると…。
?!!
京ちゃんは、何故かこの世の終わりのような、暗く悲しそうな顔になっていた。
「きょ、京…先輩…?」
「え?何、芽衣子ちゃん…。」
呼びかけると、京ちゃんは、すぐに普通の表情に戻った。
今の、何だったんだろう?
私は首を捻った。
これは…、もしかしたらだけど…。
私はゴクッと唾を飲むと、自分の推論を元にある事を試してみる事にした。
「京先輩。でもやっぱり、それだとストレス溜まっちゃうかもしれないので、京先輩に、
めいっぱい、おっぱいを押し付けようと思います!!」
「な、何言ってんだよ、芽衣子ちゃん?
風紀委員の人に見られたら、どうすんだよ!そんな事しちゃダメだよ!↑」
慌ててそう言う、京ちゃんの表情を盗み見ると…。
?!!!
京ちゃんは、何故かこの世の春を謳歌しているような、溢れんばかりの笑顔になっていた。
「京先輩、すっごく嬉しそう…!」
「はっ!」
私が指摘すると、京ちゃんは急いで私から顔を背け、口角の上がった口元を手で覆い隠した。
今度は青褪めている京ちゃんに向かって、私は問いかけた。
「変な事を言ってもいいですか?
京先輩、私におっぱいを押し付けられるの
嫌じゃなかったです…?」
「…!!」
汗をダラダラと流す京ちゃんに、私は更に追い打ちをかける事にした。
「もっと変な事を言ってもいいですか?
京先輩、さっき私のおっぱいに触ったのは、やっぱり…。」
「め、芽衣子ちゃん、ごめん!!
それ以上追求されちゃうと、俺、社会的に死んじゃう…!」
「京先輩…。」
「ゴメン…変態でゴメン…!!」
とうとう赤い顔を覆ってその場に蹲ってしまった京ちゃんの姿に、私の推論が間違っていない事を確信した。
京ちゃんは私のおっぱいが好き…!!
私は小さい頃の出来事を思い出しながら、
ぶわっと涙が噴き出しそうになった。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇
その日は京ちゃんのお母さんが仕事で夜遅くになるという事で、寝る時間まで家で京ちゃんを預かる事になっていた。
「さー、京太郎くん。早く脱いじゃって?芽衣子もよー。」
お母さんが、私達をお風呂に入れてくれる事になった。
「はーい!」
「は…い…。」
京ちゃんと一緒に風呂に入れるのが嬉しくてて、パパッと脱いじゃった私とは違って、京ちゃんは、パンツ一枚をなかなか脱げずにモジモジしていた。
「どしたの?京ちゃん?めーこが脱がしてあげようか?」
その時は、男女の体の違いなんて、男の子は、下になんか棒みたいなのがついてて、オシッコの仕方が違うんだな〜ぐらいの認識しかなく、意識もしてなかった私は軽い気持ちでそう言ったのだが、京ちゃんに頑なな程拒否られた。
「なっ。や、やめろ、めーこ!自分で脱ぐからいいって!!」
「??そ、そう…?」
そして、京ちゃんは、脱ぐなり、タオルで、前を隠し、タタッと、浴室へ駆け込んでしまい、私も慌てて後を追った。
「あ、待ってよ。京ちゃ〜ん!」
「京太郎くん。洗ってあげるよ。おいで〜?」
先に脱いで中に入っていたお母さんは、泡の付いたスポンジを片手に、子供用の椅子に座った京ちゃんに言ったけど、
京ちゃんは、真っ赤になりつつ、お母さんの方から目を逸らしてぷるぷると首を振った。
「い、いえ。自分で洗えるので、いいです!」
「あら、そうなの?京太郎くん、自分で洗えるなんて偉いわねぇ…!芽衣子なんて、全部私が洗ってるのよ〜?」
クスクスと笑いながら言うお母さんに私は
恥ずかしくなって言い返した。
「め、めーこだって洗おうと思えば自分で洗えるもん!お母さん、スポンジ貸して?今日は、自分でやる!」
「あら、芽衣子も偉いわね〜?お母さん助かっちゃう。二人共背中だけ流してあげるからね。」
と言って、お母さんが京ちゃんの背中を洗おうとすると…。
「えっ。い、いいですっ!」
ポヨッ!
京ちゃんは、振り向き断ろうと手を突き出して、お母さんの大きなおっぱいに触れてしまった。
「あら♡」
「…っ!!!!ごっ、ごめんなさい…!!」
「いーのよ?しつこくしてごめんね。」
真っ赤になって必死に謝る京ちゃんに、クスクス笑うお母さん。
私は何だか二人のやり取りが面白くなくて、京ちゃんに自分のぺたんこ胸を突き出して一生懸命アピールをした。
「きょ、京ちゃん。めーこ自分で洗えたよ。ね。頑張ったよ?ホラ見て見て?ピッカピカ!」
「あ、ああ…うん…。めーこエライエライ。」
しかし、返ってきたのは、ろくにこちらを見もしない、京ちゃんの上の空の返事だった。
湯船に三人で漬かっているときも、
京ちゃんは、湯船の中に、ぷかりと浮いているお母さんのおっぱいを赤くなりながら、チラチラ見ていた。
ひょっとして…、京ちゃんは、女の人のおっぱいが好きなんだろうか?
私はその時、お母さんの方ばかり見て、ちっともこっちを見てくれない京ちゃんの気を引を引きたかった。
「む〜。京ちゃん!えいっ。」
「え。めーこ、何?わあぁっ。」
ちゃぷっ。ペトッ。
京ちゃんの手を取って、私のぺたんこのおっぱいの方に押し当ててみたが…。
「め、めーこ、どした?胸でも痛いのか?
「え。痛くないけど…?」
なんか心配されてしまった。
お母さんのときと全然反応が違う。
京ちゃんは、お母さんのおっぱいが好き。
でも、私のおっぱいは特に好きじゃない。
何故だか分からないが、私はその時頭にうかんだのは「はいぼく」の4文字。
「しゅん…。」
私はガクッと首を項垂れた…。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇
あれから、7年ー。
ペッタンコだった胸は、思春期に入り膨らみ始め、更にバストアップの為、胸筋を鍛え、専用の化粧品を使う、形をキープする下着様々な努力をしてGカップのお母さんよりまだサイズでは負けるものの、弾力のあるEカップのバストを手に入れた。
そして、今や京ちゃんは…。
押し付けられないと、悲しいと思うまでに
私のおっぱいを好きでいてくれている。
何だかとても心が満たされ、全てに寛大な気持ちになれた私は、赤くなって蹲っている京ちゃんの背中をぽんと叩いた。
「京先輩。追い詰めちゃって、ごめんなさい。さっきのは嫌じゃなかったので、これ以上は追求しません。
京先輩も、健康な男の子ですものね。
女子の胸に興味があるのは、当たり前ですよね。」
「ほ、本当にごめん。察してくれてありがとう芽衣子ちゃん。
そ、それから、申し訳ないんだけど、できたらこの話は、皆(特に風紀委員の人)には…。」
「はい。分かってます。もちろん誰にも話しませんよ?」
私はコクコクと頷いた。
京ちゃんは、私のおっぱいが好き♡
そして、それは二人だけの秘密♡
私は自然と口角が上がるのを感じた。
「その代わり…。↑」
*あとがき*
いつも読んで頂きまして、フォローや応援、評価下さってありがとうございます。
カクヨムコン読者選考期間につき、格別に配慮下さった読者様がいらっしゃいましたら、本当にありがとうございました✨🙏✨
今後もよろしくお願いしますm(_ _)m
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