第11話 告られて大喜びする様子を動画で撮れ!
「今日のミッションは、告られて大喜びする様子を動画で撮ることです!
つまり、私に告白されて京先輩が、大喜びする様子を、マキちゃんに動画に収めてもらいます。」
「はーい!私撮影係でーす!」
笠原さんが、自分の水色のスマホを片手に持って振って見せた。
「なるほど、今日は動画撮るから、撮影するのに友達の協力が必要だったということか…。」
俺は納得して頷いた。
「そういう事です。じゃ、マキちゃん、スタンバイお願いします。」
「はいよー!二人とももうちょっと寄って下さいー!」
「は、はーい。」
「りょ、了解。」
俺と芽衣子ちゃんはお互いを横目で見ながら、ぎこちなく距離を詰めていった。
「はい。そこでストップ!その位置で向き合って下さい。」
俺と芽衣子ちゃんは、ちょっと照れくさいような表情で二人向かい合った。
「おー、初々しくってよいね。はい、じゃあ、撮影いきますよー。3.2 1.ハイ、スタート!」
「京先輩…。実はわたしずっと前から自分あなたの事が好きだったんです…。私と付き合って下さい!!」
「エッ…、ホントウ?メイコチャン。スッゴクウレシイヨ!ヤッタァ!ゼヒ、オレトツキアッテクレ!」
俺がカクカクした動きでガッツポーズをとると、速攻で笠原さんからダメ出しの声がかかった。
「カァット、カットー!全然ダメェ!」
握り拳を作った笠原さんに叱られてしまった。
「矢口先輩、ふざけてるんですか?何そのロボット読みのようなセリフは?全然嬉しさが伝わってこないですよ。」
「いや、ごめん。なんか撮られてると思うと緊張しちゃって…。」
そんなダメな俺に、芽衣子ちゃんは笑顔で優しく声をかけてくれた。
「一度や二度の失敗なんて大丈夫ですよ。京先輩、リラックス、リラックス〜!もう一度やってみましょう?」
「あぁ…ありがとう、芽衣子ちゃん。もう一度頼むよ。」
俺は再び芽衣子ちゃんに向き合ってトライすることにした。
が…。
それから、笠原さんに何度も撮り直してもらったが、なかなかいい動画は撮れなかった。
ロボット読みは改善されたものの、俺の演技力のなさはいかんともし難く、棒読みのセリフや、引き攣った笑顔ではS級美少女に
告白された喜びを全く表現できているとは言えなかった。
俺たちは、度重なるリテイクにその場に崩れ落ちた。
「はぁ、はぁ…。もう15回も告白しました…。」
「はぁ、はぁ…。ご、ごめん。俺、自分でもこんなに演技がダメだと思ってなかった…。」
「うーん、っていうか、普通なら演技とはいえ、芽衣子みたいな美少女から告白されたら、嬉しくなって、自然に笑顔になっちゃうもんだと思うんだけどな。
なんか、構えすぎちゃってるんですかね?」
笠原さんは、顎に指をかけてしばらく考えていたが…。
「よし、ちょっと気分転換に選手交代してみますか。芽衣子の代わりに私が告白役やってみます。」
「「え。」」
*
*
*
「矢口先輩。私、演技の下手っぴなところ、割と好きですよ?私と付き合ってみませんか?」
笠原さんはわずかに顔を赤らめて上目遣いでこちらを見上げてきた。
お?笠原さん、さっきと雰囲気違って可愛くね?ギャップ萌え来たわ。
「え、本当?すっごい嬉しい!うん。付き合おうか?」
自然にその言葉が出ちゃってた。
「タンマタンマ!ちょっと、待って下さいよ〜!!」
芽衣子ちゃんが半泣きで俺と笠原さんの間に割って入ってきた。
「どうして、私の時より嬉しそうなんですかぁっ?私そんな魅力ないですか?」
「あ、いや、そういうワケじゃないんだけど…。」
俺は芽衣子ちゃんに詰め寄られ頭をポリポリ掻いた。
「私も女として捨てたもんじゃないって事ね。」
笠原さんは髪を撫で付けてドヤ顔をしている。
「何でぇ…?」
芽衣子ちゃんは、その場にへたり込むと、絶望的な表情で何かをぶつぶつ呟き出した。
「私の何がいけないんだろう…?容姿?性格?
そう言えば、柳沢先輩も、マキちゃんも、ショートヘアーで、性格もしっかりした姉御タイプ…。先輩の好みって、そんな感じなのかな…?」
「め、芽衣子ちゃん、大丈夫…?」
なんか、ア○キンが闇落ちするときのような暗黒のオーラを発している芽衣子ちゃんに、
恐る恐る声をかけると、芽衣子ちゃんは突然立ち上がり、俺に向かって宣言した。
「決めました。私、京先輩に嘘コク喜んで頂けるように、好みの女になります!今日、美容院行って、ショートヘアーにしてきます。」
「「ええっ?」」
俺はその発言に度肝を抜かれた。
芽衣子ちゃん、嘘コクの為に、髪型まで変えようというのか?
っていうか、俺の好みって、ショートヘアー
だったのか?
初耳なんだけど?
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