第3話 選択するか、選択されるか?
「の、のぇ?な、なんですかその選択肢は??」
私は京ちゃん=矢口京太郎先輩が言ってることの意味が全くわからず、動揺を隠せず、問い返した。
「だから、嘘コクに対しての俺の反応だよ。」
「嘘コク?!」
本当に、京ちゃんは何を言ってるんだろう?
私の告白が嘘コクだと思ってるの?
「ああ。もうネタはあがってんだよ。君みたいな可愛い子が本気で俺なんかに告白するワケないだろ?」
やっぱり。どうして京ちゃん私の告白本気だと信じてくれないの…。
悲しい気持ちになりかけたとき、言われた
言葉の一つが気になった。
ん?
「か、わ、い…?」
今、京ちゃん、私の事可愛いと言ってくれた??
どうしよう?恥ずかしい!けど、嬉しいよう!!
私はかかーっと頬が熱くなるのを感じていた。
今まで、可愛くなれるように頑張ってきたかいがあった!
更に彼は優しく語りかけてきたが、その内容は舞い上がっていた私を地に落とした。
「分かるよ。友達に無茶振りされて、断れなかったとか何か事情があるんだろ?
俺は今まで7回も嘘コクされた先輩として有名だし、ターゲットにはもってこいだろうし…。」
「え?7回も嘘コクって…!!まさか、そんな事…!!」
私は青ざめて両手で口元を覆った。
「あ、そうそう。正確な回数は知らなかった?中学の同級生に、クラスメイト、サッカー部のマネージャー、図書委員、友達の妹、風紀委員の先輩、同じ部活の部長で計7名。
もはや、嘘コク対応のプロと言っても過言ではないね。
その俺から言わせてみれば、氷川さんの嘘コクはまだ詰めが甘いね。
一年生で入ってきたばかりで、ずっと前から好きだったはないんじゃない?嘘だってすぐバレるよ。」
「え?い、いやそれは、あの…。」
ど、どうしよう?今私が幼馴染みのめーこだと、言っていいもんだろうか?
あのとき、私は長い前髪で顔を隠した陰キャでお世辞にも魅力的な女の子とは言えなかったはず。
あの時からずっと好きだったと言って、気持ち悪がられないかな?
せっかく、可愛いと言ってもらえたのに、
幻滅されちゃうかも…。
私が、困って言葉に詰まっているのを、京ちゃんには図星だと思われてしまったらしい。
「でも、そんな氷川さんだからこそ、今までの嘘コクの中で、一番腹が立たなかったよ。むしろ、こんな可愛い子と二人きりで話す機会ができて、ラッキーだったぐらいな。」
「また、か、かわ…。あうぅ…!!」
また、可愛いって言ってくれたぁ!!
し、しかも、二人きりで話せてラッキーだって!も…、幸せすぎて無理ぃ…!!
私は身悶えて、その場に崩れ落ちそうになった。
「そんな氷川さんに敬意を評して、今回は君が困らないように、お望み通りの対応をしてあげるよ。さあ、どの選択肢がいいかな?」
!! また選択肢って…。
私は怒りがこみ上げてきた。
もちろん、今までに嘘コクをして京ちゃんを傷付け、裏切った女の子への怒りもある。
人の心を弄んで、なんて酷いことをするんだろうか?
京ちゃんがもう、女の子を信じられなくなっちゃうのも、分かるよ。
だけどね、私にとっては死ぬほど勇気を出した一世一代の告白だったのに!
ちゃんと返事も貰えず、嘘コクと決めつけて、しかもあんなひどい選択肢を選べって?
京ちゃんは、嘘コクをしてきた人達と私を同じような奴と思っているんだろうか。
大好きな人だって、いや、大好きな人だからこそ許せないよ!
「あの、矢口先輩!!」
一言言ってやろうと声を上げると、京ちゃんは戸惑ったような顔をした。
「お、おう…?」
言ってやるんだ!
嘘コクをしてきた女の子達と一緒にしないでよ!
私が京ちゃんの事をどんなに好きで、告白するのにどんだけ勇気がいったか分かる?
玉砕覚悟でそれでも側にいられる可能性にかけて、死ぬほどの覚悟で想いをさらけ出しているというのに…!
そう怒って、もう一度告り直そう。
そして、今度こそ返事を貰うんだ。
選択をするのはそっちなんだからね!
そして…。ううっ、またあの胃の痛い時間が来るのか。
付き合えるか、振られるか。
天国か、地獄か。
ん?
さっきの
選択肢の中に「振られる」ってあったっけ?
「あの…ねぇ。」
私は振り上げた拳をとても中途半端に下ろした。
「……、えっと、選択肢なんでしたっけ?」
私は日和った。
えへらと卑屈な笑みまで浮かべて、京ちゃんに問うと、さっきの選択肢を復唱してくれた。
「うん…、分かりました。うーん、えーと…。」
ええっと、冷静になって考えてみれば、京ちゃんの言う選択肢はどれもひどいけど、女の子の立場になってみれば、都合のよいものばかりだった。ああ、でも、あれは設定上不可能だし…、まぁなんとか誤魔化すしかないか、ああ、あれなんか、あんな事を…!?
私にできるかしら?
最後なんて、一度付き合う事になっちゃってるし!!きゃああぁっ!!
う、うん。悪くはない!!それに、選択肢の行動をしている間は、京ちゃんに、私に構ってもらえる。一緒の時間を持ってもらえる!
その間に、京ちゃんにアプローチするチャンスだし!いい事づくし!!
私の憂いはすっかり晴れ、笑顔で京ちゃんに私の選択を告げる事ができた。
「決めました!全部の選択肢でお願いします!!」
京ちゃんは一瞬目を丸くして私を見ると、次の瞬間叫んだ。
「ん?全部って…嘘だろ〜っ!!?」
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